第4戦のフェニックスは、佐藤琢磨にとって決して相性の良いレーストラックではない。琢磨も「ここには良い思い出はないです(苦笑)。去年もプラクティスでクラッシュしたし、今年の合同テストでもクラッシュしましたよね。2度も大きなクラッシュをするとさすがにね……」
「去年もギリギリ完走したようなレースだったし、安定したクルマで、よしいける!って自信を取り戻せるようなレースをちゃんとしたいです」
1周がわずか18秒か19秒あまりでの1マイルショートオーバルだが、短いながらもオーバルのレースの奥の深さを感じさせる。
琢磨が得意としているショートオーバルのミルウォーキーとは対称的である。F1時代からあまりコースの好き嫌いを言わない琢磨から「ここは苦手、好きじゃない」と言う言葉を初めて聞いたような気がする。
レースウイークに入っても悪条件がそこに拍車をかけた。2デイのスケジュールで金曜日から始まったプラクティスだが、開始早々から強風でトラックにも砂が舞う。ほとんどのクルマがピットで待機して始まった。
様子を見ながら各マシンがコースインして行くが、琢磨のペースが一向に上がらない。
試したいテストメニューも、半分くらいしかこなせなかったと言う。肝心のダウンフォースを減らした予選トリムも完璧には終わらず、不安を抱えたまま予選を迎えた。
タイムアタック順は6番手。アンドレッティのチーム内では最初のアタッカーとなり、4台体制の恩恵は受けられない。もし2番手、3番手であれば前のアタッカーのインフォメーションが得られ、自らのアタックに反映出来たであろう。
ダウンフォースを付けすぎてしまったと言う予選では、自己ベストを出しながらも18番手にとどまった。
決勝に向けては、昨年のハンターレイのデータを参考にダウンフォースを減らして臨んだという。スタートではミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン)のスピンをきっかけに5台の多重衝突となったが、琢磨は「チルトンのマシンの動きが嫌だったけど、なんとか左に避けた」とコメント。
これでポジションを自動的に5つあげて、そこからの追い上げとなったが、やはりリスタートとなってもカーナンバー26のペースは上がらなかった。
「フロントタイヤが働いてないような状態で、フロントを働かせようとするとリヤが滑り出すような状態でした。だからフロントがうまく働かない状態で、騙し騙し走るような厳しい状態でしたね」
それでもしぶとく走り続け、レース中盤を過ぎた頃、ピットアウトして2周後に琢磨はターン4のウォールにヒットしてしまう。
「タイヤの内圧なのか、冷えていたのかわからないですが、サスペンションに異常があったわけではなさそうです。あの周はなんの前触れもなく、クルマがまっすぐいってしまいました……」。
136周目に琢磨のレースは終わった。まったく同じような動きでチームメイトのアレクサンダー・ロッシもピットアウト後にクラッシュしている。
「今回は4台ともチェッカーを受けられなくて、厳しい週末でしたね。帰ってデータをしっかり見てみないとわかりませんが、ロッシも同じようにクラッシュしているし、何か同じ原因があったかもしれません」
平均180マイルで走るショートオーバルで琢磨が無事に戻り、マシンも軽傷だったのが救いだ。
「この後はゲートウエイでテストをしてから、インディGPを迎えます。インディGPはロードコースですがバーバーのデータをよく見直して良い結果を出して、インディ500を迎えたいですね」
このレースの結果、琢磨のランキングは11番手まで落ちたが、しっかりと体制を立て直してMonth of Mayを迎えてほしい。