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亀梨和也、得意の野球で運命切り開く? 『ボク、運命の人です。』第3話レビュー

2017年04月30日 17:33  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 ライバルの登場により、難ありの恋模様に早くも急展開が訪れた『ボク、運命の人です。』(日本テレビ系)の第3話。人生最大のモテ期を迎えたライバル・定岡(満島真之介)と誠(亀梨和也)の戦いが激化するかと思いきや、初っ端の飲み会の席で見事に完封を喫し、プロポーズの計画まで聞かされる。もはや一方的に誠は打ち崩されるわけだ。


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 もちろん、期待どおりのことが危なげなく起こるのがこのドラマの魅力なだけあって、定岡のホームラン級の当たりは大きなフライで終わってしまう。そうなれば誠のチャンスは消えず、湖月晴子(木村文乃)に連絡先を教えるという単打を、脇の登場人物たちが綺麗にお膳立てしていく。まだ第3話ではあるが、現時点でのベストエピソードではないだろうか。


 まず前回のエレベーターの会話の中でさらりと登場した、クラシックのCDが、ようやく登場し、“神様”は誠に作曲家と曲名を覚えることを命じるのだ。着々と覚えていく誠は、それがこの後の展開を表すということに気が付く。それがあったからこそ、意気揚々とウォーターサーバーを設置するために湖月家を訪れた誠が、タイミングよく流れるメンデルスゾーンの「結婚行進曲」に落胆する場面が成立し、河川敷の野球少年たちとの出会いに繋がる。


 この野球少年ふたりのキャラクターのパンチが、なかなか強すぎるのも面白いが、このふたりの名前が取ってつけたように「あかい」と「いとう」(=赤い糸)というのだから期待を裏切らない。そのスコアボードに記される点数が、誠が晴子に渡せずにいた自分の電話番号になることに気が付くという展開も、野球は9回なのに8回で終わらせるかのようなご都合主義的展開も、ここまで振り切られれば気にもならない。


 しかし肝心なのは、スコアが電話番号になることに途中で気が付くという点である。最後まで行った段階で気が付くようなら、このドラマの主題である“運命”そのものになるわけだが、あえて3回の時点で気が付き、そこから先を自力で作り出すわけだ。もちろん、“神のいたずら”的な後押しがあったことは否定できないが、少なくとも誠は努力によって“運命”を作り出す。これまでと少しドラマの向きが変わってきたのかもしれない。


 ここで思い出すのは第1話の終盤のクラシックコンサートの場面だ。大勢の観客の中で誠と晴子ふたりだけが立ち上がって拍手をするこの場面で、ヴェートーヴェンの「交響曲第五番」(通称『運命』)が流れるというのは、今回への巧妙な伏線でもあったということだろう。それと同時に、そこで回想された高校時代の定岡との対決シーンも今回とシンクロする。立ち止まって誠の姿を見る晴子の位置は、高校時代に彼女がブラスバンド部として誠と定岡の対決を見た角度と同じではなかっただろうか。


 亀梨和也といえば、ジャニーズ随一の野球好きとして知られている。かつてはリトルリーグで活躍し、ジャニーズに入るために野球を諦めたというのはよく知られた話だ。それでも持ち前の野球センスは、運動能力の高さが必要なジャニーズにいる限り落ちることはない。今回彼が披露した投球・打撃・走塁の基本的なフォームは、いかにも野球経験者であるというのが感じられる安定した姿であった。


 さて、無事に晴子の連絡先を獲得し、食事に誘った誠ではあるが、その席で「あなたとは恋愛する気がありません」とはっきり言われるのだと、“神様”から予言される。こうなったら第4話は波乱の予感が漂う。この次回への繋ぎ方もさることながら、それ以外にも次回に繋がる伏線が何か隠されていたような気がしてならないので、あと1週間の間でもう一度見返してみるのもよさそうだ。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。