フェニックス・レースウェイで開催されたインディカー・シリーズ第4戦。29日に行われた決勝レースは、ディフェンディングチャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)が今季初勝利。佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は、レース中盤にクラッシュを喫する厳しいレースとなった。
ディフェンディングチャンピオンのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)が今シーズン初勝利を第4戦フェニックスで挙げた。
インディカーデビューから11年目(そのうちの4シーズンはスポーツカーに寄り道していたが……)を迎えるフランス人ドライバーにとってのキャリア10勝目は、念願のオーバルコース初勝利となった。
予選は5番手。決勝の最初のスタートではポジションキープし、22周目のリスタートの後にJR.ヒルデブランド(エド・カーペンター・レーシング)をパス。ペンスキー勢の1-2-3-4となったセカンドスティントはその最後方の4番手を走った。
パジェノーにスピードが不足していたための4番手定着ではなく、レース展開を見て、燃費セーブでチャンスを作り出せるかもしれないとの思惑を持ってのことだった。3台が前を走る状況で燃費セーブに励んだパジェノーは、上位陣の誰よりも遅い77周目に1回目のピットストップを行った。
カストロネベスより3周、パワーより2周、ニューガーデンより1周長く走ってのことだった。そして、大きなチャンスが訪れた。ライバルたちが2回目のピットストップを行っているタイミングの138周目、ターン4で佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)がクラッシュ。
すでにピットストップを終えていたチームは、ニューガーデンを除いて全員がラップダウンとなり、リードラップに残れたのはイエローが出たタイミングでちょうどピット作業中だったカストロネベス、パワー、ヒルデブランドの3人だけだった。
この結果、レースの終盤戦はパジェノー、パワー、カストロネベス、ヒルデブランド、ニューガーデンとシボレー勢5人だけによる優勝争いとなった。
ホンダユーザーのスコット・ディクソンとトニー・カナーン(いずれもチップ・ガナッシ)は、エアロでの不利からか燃費が悪く、ピットに早め早めに入るしかなかったためにリードラップで戦い通すことができなくなった。琢磨のアクシデントのタイミングがそうした状況を作り出した。
イエロー中の141周目にピットインしてもトップを守れたパジェノーは、ゴールまで誰よりも燃料に余裕のある状況を享受。149周目のリスタートからは後続を寄せ付けず、あと1回残されていたピット・ストップも問題なくこなし、パワーに9秒もの大差をつけてチェッカーを受けた。
「この喜びは言葉にできない。オーバルは得意分野じゃなかった。ヨーロッパ育ち。ゴーカート上がりの僕にとってはね。オーバルレースに初めてトライしたのは26歳の時。それ以来、いろいろなテクニックを学んできた。今日の勝利は本当に嬉しい」
「とにかくマシンが素晴らしかった。ピットストップも完璧だった。クルーにも感謝したい。スタートからゴールまであらゆる面がノーミス。まさに完璧なレースだった。序盤の燃費セーブが大きな効果を発揮した」とパジェノーは喜んでいた。
レース終盤に激しく争われた3位の座はヒルデブランドが獲得し、4位はカストロネベスとなった。ニューガーデンはゴールまで30周を切ってからライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)と接触してフロントウイングを痛め、ピットストップが一度多くなったために2周遅れの9位でのゴールとなった。
5位はディクソン。6位はカナーン。どちらも1ラップダウン。7位はマシントラブルでプラクティスをほとんど走れなかったために予選をまともに走れず、最後尾スタートだったエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)のものとなった。
琢磨はまったくハンドリングの安定しないマシンで苦戦。2回目のピットストップを終えた3周後に前述の通りにターン4でクラッシュした。フロントのグリップが突然失われてコーナーを曲がれずにまっすぐ壁に突っ込んだ。109周目にチームメイトのアレクサンダー・ロッシがほぼ同じパターンのアクシデントを起こしていた。
「何が原因なのかわからないアクシデントでした。今日のレースはダウンフォースを少なめに設定してスタートしました。気温や路面温度が下がればグリップが上がって競争力が高まるとの読みでした。しかし、ハンドリングは良くなっていきませんでした」と話した。
第3戦アラバマに続いてアンドレッティ・オートスポートはチーム4台すべてがリタイアとなった。
第5戦は1週間のインターバルの後、インディアナポリス・モータースピードウェイのロードコースで行われるグランプリ・オブ・インディアナポリスだ。