近年、新入社員を理不尽に追い込む「ブラック研修」が問題視されているが、この春も、スーツで本を売り歩く一人の女性の画像が投稿され、ネットを騒然とさせている。
女性は背中に「新卒研修なう。」「17新卒 タグ付けOK #新社会人本を売る」と書かれた紙を背中に貼り、神保町駅構内を歩いていたという。道行く人に本を売っていたと思われる。
神保町の人材会社に飛び火「当社とは一切関係がございません」
画像は、目撃者によるツイッターの呟きと共に広がり、4月28日17時の時点で1万リツイート以上されている。ネットでは
「いじめでしょうこんなの」
「ただのパワハラ」
「こんなことに何の意味が……」
など、呆れる人が多い。一部では、神保町にある人材紹介会社の研修ではないかと噂されたが、同社は4月27日にホームページ上で
「最近、ツイッターにて『新社会人本を売る』と書かれた紙を背負う女性の写真が投稿されておりますが、こちらの写真は当社とは一切関係がございませんので、お知らせ申し上げます」
とコメントを掲載する事態となった。
今でこそこうした研修は「ブラック」と呼ばれ非難の的になるが、昔は同様の研修があっても表沙汰にはならなかった。ツイッターでも、1000人の異性の連絡先を聞き出す研修の経験者や、1日200枚の名刺を集める研修で自尊心が折れた人などの体験談が後を絶たない。
根底にあるのは「無力感を与えて矯正する」という考え方?
業務と無関係の重労働をさせるようなブラック研修が無くならない理由について、ブラック企業アナリストの新田龍さんは「言い方は悪いですが、『基礎力が低い者相手には、相応の厳しい研修で鍛えなくては使い物にならない』という考えが根底にあるものと認識しています」と話す。
敢えて困難なミッションを与えて自信を喪失させることで、素直に聞く姿勢を醸成するという意図の研修は、上位校の学生が入社するコンサル会社などでも存在するという。「『無力感を与えて矯正する』という目的は同じで、方法論が違うだけともいえるのではないでしょうか」との見解を示している。
騒動は、会社名を拡散させることを目的とした炎上商法ではないか?と指摘する人もいる。ただ、女性が背中に貼っていた紙に会社名は記載されていない。「研修中」と明らかにすることで相手の警戒感を解く、という目的かもしれない。
ツイッターでは「新社会人本を売る」のハッシュタグと共に拡散されたものの、会社の研修に疑問を持つ人のほうが多く、逆に評判を下げる結果になってしまったようだ。