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『美女と野獣』は『アナ雪』ヒットに続くか? 昆夏美、山崎育三郎ら彩る楽曲の魅力を探る

2017年04月28日 15:33  リアルサウンド

リアルサウンド

『美女と野獣』(c)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 ディズニーの名作アニメーション映画『美女と野獣』の実写版が、4月21日から公開されている。公開直後からエマ・ワトソン演じるベルの美しさや野獣のリアルさ、華やかな衣装などが評判になっていたが、映画を彩る数々の音楽にも注目が集まっている。今作ではディズニー映画『リトル・マーメイド』『アラジン』などの音楽も手掛けたアラン・メンケンが、アニメーション版で使われていた楽曲に加えて新曲を3曲書き下ろすという気合の入りよう。キャストに加えアリアナ・グランデやジョン・レジェンドも歌唱する字幕スーパー版はもちろんだが、ミュージカルで人気を博する昆夏美、山崎育三郎や、歌手としても活躍する藤井隆、岩崎宏美らが美声を披露するプレミアム吹き替え版も見逃せない。


(関連:映画『美女と野獣』の音楽が時を超えて伝えるもの エマ・ワトソンらが彩る作品の世界観


 足音や水音も音楽の一部になっているのが印象深い、オープニングを飾る「朝の風景」では、ベル役の昆夏美の声の存在感が際立つ。読書好きで子供に文字を教えたり、村一番の男・ガストンに求婚されるも全く相手にしないなど、先進的で強気だが、どこかまだ大人になりきれていないベルのキャラクターに、透き通るような昆の歌声はぴったりだ。興味深いのは、映画中盤の「愛の芽生え」では昆の歌声が女性らしく柔らかいものに変化していること。数々のミュージカルに出演してきた昆の演技力が存分に発揮されているといえよう。


 そんなベルに恋心を抱く村の男・ガストン(声:吉原光夫)と腰巾着のル・フウ(声:藤井隆)が中心の楽曲が、「強いぞ、ガストン」。劇団四季のミュージカルでもガストンを演じている吉原は、筋肉質で男らしいキャラクターということもあり、太く低い声で、後述する山崎育三郎演じる野獣とは対照的だ。一方、俳優や歌手として活躍中の藤井演じるル・フウは、吉原のバリトンボイスを引き立てるような高めの声で、“太鼓持ち”的なキャラクターとマッチしている。


 そしてこの映画の見どころの一つ、とも言えるのが「ひとりぼっちの晩餐会」。ひとりでディナーを食べようとするベルの前に城の住人たちが次々に登場し、タイトルとは真逆の華やかさを演出している。心優しい母親・ポット夫人(声:岩崎宏美/歌手)と無邪気な少年・チップ(声:池田優斗/ミュージカル出演経験もある子役)親子、お調子者の燭台・ルミエール(声:成河/舞台、映画、ドラマなどでマルチに活動)、セクシーな羽箒のプリュメット(声:島田歌穂/舞台版『レ・ミゼラブル』1,000回以上出演の女優)、真面目で口うるさい時計のコグスワース(声:小倉久寛/三宅裕司主宰「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」創立メンバー)、元オペラ歌手でベルの部屋の衣装箪笥、マダム・ド・ガルドローブ(声:濱田めぐみ/劇団四季看板女優)……個性豊かなキャラクターたちの歌声を確かな実力を持つ名優たちが演じている。


 もう一つ注目したいのは新曲のひとつである「ひそかな夢」。山崎演じる野獣のソロ曲で、ベルへの思いを哀愁漂わせて歌う様子が胸を打つ。序盤は吠えたり、怒りを見せたり、と獣に近かった野獣だが、ベルと心を通わせ次第に人間味が増していき、優しい声に変化していく。猛々しい声ではなく、中性的とも言える声はライバル的立ち位置のガストンの歌声とのコントラストを生んでいる。


 そして外せないのが、主題歌「美女と野獣」だろう。今作はオリジナルバージョンとは大きく歌詞が異なり、訳詞を担当しているのは映画『アナと雪の女王』でも訳詞を手がけた高橋知伽江。<時をこえ/語り継がれ/時をこえ/愛された>という歌詞は、「美女と野獣」という作品と楽曲が長く受け継がれていくことを祈っているようだ。


 英語版ではあるが、すでにAAAの西島隆弘と宇野実彩子による「Beauty and the Beast」の「歌ってみた」動画も話題となっており、2013年に公開のディズニー映画『アナと雪の女王』に続くヒット作となることも予想できる『美女と野獣』。すでに字幕版を観たという人も、2度目はぜひ吹き替え版に足を運んでほしい。また違った目線から楽しめるはずだ。(村上夏菜)