ホンダがF1ロシアGPに改良を施した新しいMGU-Hを投入する。
ホンダのMGU-HはバーレーンGPでトラブルが多発。3日間で4基(ストフェル・バンドーン3基、フェルナンド・アロンソ1基)のMGU-Hにトラブルが発生し、バンドーンはスタートできずにレースを終えていた。
グランプリ直後に行われたバーレーンでのインシーズンテストでも初日にトラブルが発生。そこでホンダは2日目に、ある対策をMGU-Hに施して臨み、バンドーンが81周を走破した。
この結果を受けて、ホンダは栃木県さくら市にある研究所『HRD Sakura』でさらなる解析を行い、「ロシアGPに向けて、さらなるタフネスアップを図ってきた」(中村聡ホンダF1チーフエンジニア)という。
いったい、何が原因だったのだろうか。バーレーンでは、その原因のひとつとして、バーレーン特有の問題があるのではないかという声もあった。それまで起きなかったトラブルがバーレーンで何度も発生したからである。
しかし、中村エンジニアは「解析の結果、いわゆる砂塵がオイルに入り込んだという疑いはないことがわかりました」という。
ただし、「バーレーンの高温が影響を与えていた可能性は考えられます」という。だが、中東のバーレーンは確かに高温だが、レースは夜。セッション中の気温を見ても、金曜日のフリー走行1回目開始時(午後2時)の36℃が最高で、レーススタート時は24℃だった。
つまり、熱の問題以外にもなんらかの要因があったと考えられる。そこで考えられるのが、ターボとMGU-H、そしてコンプレッサーを同軸で結んでいるシャフトの振動である。というのも、ホンダは今年ターボとコンプレッサーをVバンク角の外に出すというレイアウト変更を行った。
つまり、ターボ、MGU-H、コンプレッサーを同軸で結んでいるシャフトが長くなり、このシャフトが走行時の振動や横Gによるストレスを受けて、MGU-H周辺のベアリングを固着させるという問題を引き起こしていたのではないか。ダイナモ上では問題が起きなかったのに、実走で起きたという現象も辻褄が合う。
したがって、ホンダが現在、抱えている問題は実走させてみないと解決しているかどうか判断できないともいえる。
ロシアGP前日の木曜日に長谷川ホンダF1総責任者も「メカニカルベアリングのフェール(トラブル)に関しては対策してきました。主には温度であるとか、オイルの流入など、原因として考えられる部分を見直してきました」
「ただ、それで本当に十分かということに関してはまだわかりません」と緊張感を漂わせている。
なお、ホンダはバーレーンGPでスタートできなかったバンドーンだけでなく、アロンソのMGU-Hもバンドーンと同じく対策を施した新しいものに交換するという。
これでバンドーンのMGU-Hは4基目、アロンソは3基目となるが、バンドーンの3基目(バーレーンGPのレースをスタートできなかったもの)は解析の結果、完全に壊れていないので、金曜日のフリー走行用として再使用される可能性がある。
またバーレーンGPでレース終盤に「エンジン、プログレム」と言ってリタイアしたアロンソだが、そのマシンに搭載されていたパワーユニットには問題はなく、2基目のMGU-Hは今後も使用可能だが、耐久・信頼性を考慮して新仕様に交換している。