ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、リアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第4回目をお届けします。
最初の鬼門、中国GPをクリアしたマシンとチームの成長
今シーズンの僕たちの目標は、どのサーキットに行っても安定して高いパフォーマンスを発揮することです。今回は中国、バーレーンGPについてお伝えしますが、昨年この2グランプリでのウチのパフォーマンスは対照的でした。昨年のバーレーンでは上手くタイヤを使えアグレッシブな3ストップで入賞、しかし中国ではまったくダメでした。ですから今年のチームの成長を測るうえでこの2つのレースを含めた開幕4レースはとても重要だと認識していました。
中国GPの予選ではロマン(グロージャン)がQ1最後のアタックで(アントニオ)ジョビナッツィのクラッシュのよるダブルイエローの影響でタイムを記録できず、Q1敗退となってしまいました。最終コーナーまでのタイムを見る限り、ケビン(マグヌッセン)よりもコンマ3秒近く速かったですから、Q3も可能だったと思うので残念な結果でした。とはいえ、19番グリッドからスタートしたレースでは、ポイント獲得まであと一歩に迫る11位まで挽回してくれました。
一方、12番グリッドからスタートしたケビンは、難しいレース展開のなかでも落ち着いた走りを見せてくれました。インターミディエイトタイヤでのスタートはあまり良くなかったのですが、その後は安定したラップタイムを刻み、バトルを繰り広げながらポジションを上げていきました。
新加入、マグヌッセンの長所と課題
バーチャル・セーフティカーが出動した時にピットインしてインターミディエイトからスーパーソフトに履き替えましたが、金曜日に走れずデータ不足だったため(霧の影響でセッション中止)、どれくらいタイヤが保つのかはっきりとは判っていませんでした。
でも、ケビンが安定したラップタイムを刻んでくれたからこそ、ここが限界だということがピットウォールで正確に判断できたので、良いタイミングでピットインしてもう一度スーパーソフトに交換し、最後まで走り切ることが出来ました。あとでタイヤの摩耗を調べてみたら9割以上使い切っていたので、最適なピットストップのタイミングだったと思います。そのまま8位に入賞し、チームとして今季初ポイントを記録できたので良かったです。
上海でのパフォーマンスが示すように、ケビンのレースパフォーマンスに問題はないのですが、彼が改善すべき点は予選一発の速さです。現状だとやはりコンマ2~3秒、ロマンより遅いんです。それじゃあ、悪くないじゃないかと思われるかもしれませんが、今シーズンの中団争いはかなり接近戦なので、このコンマ2秒の差でヘタをするとQ1敗退になってしまいます。
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■厳しい中団争いと予選Q2争い
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