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ペット霊園が突然閉鎖、遺骨が散乱して「我が子」が行方不明に…業者の法的問題は?

2017年04月28日 10:53  弁護士ドットコム

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「我が家の子はどうなったのでしょうか…」「うちの子を返して下さい」ーー。閉鎖したペット霊園で、利用者に十分な連絡が行き渡らないまま、墓の撤去作業などが進められていると、ネットで話題になっている。事業者のHPは4月21日現在も公開されているが、電話番号はすでに使われていない。


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このペット霊園は、大阪府枚方市の「宝塔」(ほうとう)。今年1月に閉園し、4月から取り壊し工事を行なっていたと見られる。4月19日に、ツイッターユーザーの蜂蜜禰悶さん(@hgd2525)が投稿した園内の写真からは、散乱した墓石や遺骨の山を確認することができる。


特に問題なのは、利用者に十分な連絡がいかないまま、取り壊しが進められていることだ。ペット葬儀の口コミサイト「ペット葬儀マップ」に、友人から閉園を聞き、慌てて駆けつけたという利用者の書き込みがある。投稿によると、4月17日には園内は掘り返されており、「我が子」の亡骸を見つけることはできなかったという。「亡くなった悲しみを乗り越えた後にこのような悲しみがくるなんて想像もしてませんでした…」(投稿より)


ペットの墓を掘り返したり、勝手に処分したりすることは問題ないのだろうか。ペット問題に詳しい鈴木智洋弁護士に聞いた。


●刑法には抵触しないが、契約不履行や不法行為になる可能性も…

ーーペットの墓を掘り返しても良いの?


人間のお墓を勝手に暴いたり、中の骨を処分したりした場合、刑法上、「墳墓発掘罪」や「墳墓発掘死体損壊等罪」に該当します。しかし、これらの罪はペットなどの動物のお墓や骨の場合を想定していませんので、本件でもこれらの罪には該当しません。


また、ペットの骨を山積みにして放置していると言うことですが、ペットの骨は産業廃棄物にも該当しませんので「産業廃棄物処理法」に違反することもありません。


ーー霊園HPの説明では、自然葬(埋葬)の場合「7回忌まではお墓にいます」とある。墓の撤去は契約違反にならない?


一般にペット霊園と飼い主との間の契約は、お墓部分の土地の賃貸借契約や、ペットの遺骨を保管するという寄託契約の形態をとるものが多いようです。その他、様々な形態がありますが、いずれにしても、一定の期間を区切りながら、契約を更新していく形態をとっていることが多いようです。


今回の事案においては、霊園と飼い主との間の契約の形態や内容がハッキリしていませんが、仮に、契約の期間内に飼い主の承諾を得ることなく一方的に霊園側がペットのお墓を撤去したり、骨を取り出して遺棄したりしたということであれば、契約不履行や不法行為ということにはなると思われます。


その場合であれば、飼い主は霊園側に対して、債務不履行に基づく損害賠償請求や、不法行為に基づく慰謝料請求をすることができると考えられます。もちろん、それによって悲しみや怒りが完全に拭い去れるというものでは無いかもしれませんが、少なくとも法的に対応出来ることは何か、という観点から考えた時には、そのような方法ということになります。


ーー霊園はどのような対応を取るべきだった?


報道によれば、霊園側は悪臭などに悩まされた周辺住民から立ち退きを求められていたようです。裁判にまで発展し、土地から立ち退くことで和解が成立していたといいますから、お墓などを撤去して、土地から立ち退くこと自体はやむを得なかったのかもしれません。


ただ、それでも、きちんと飼い主に対して連絡・説明し、理解を得た上でお墓を撤去、遺骨は飼い主に返還するという対応が求められたものと言わざるをえないところです。


今回は希なケースかもしれませんが、今後ペット霊園を選ぶ際には、契約内容はもちろんですが、霊園側の管理体制などについてもしっかりと吟味することが必要かもしれません。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
鈴木 智洋(すずき・ともひろ)弁護士
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。動物法・ペット法に関しては、ペット法学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授も務めている
事務所名:後藤・鈴木法律事務所
事務所URL:http://www.gs-legal.jp/index.html