F1ジャーナリストの今宮純氏が様々な要素を【対決】させていく新企画。第2回はミッドフィールダーのチーム戦力を分析する。チャンピオンシップ争いではメルセデスとフェラーリが熾烈な争いを繰り広げているなか、レース毎に順位が入れ替わっていく中団チームの戦いも非常に熱いものになっている。
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いま「ハーフバック・バトル」がおもしろい。GPごとに順位が入れ替わる5チーム、第3戦バーレーンGP時点ではフォースインディア17点~ウイリアムズ16点~トロロッソ12点~ハース8点~ルノー2点。直近と得点差は“一桁”、すぐに抜けるがすぐに抜かれるギャップだ。
現在のポイント制では彼らがトップ5圏内にくいこみ、2桁得点をゲットするのは正直難しい。フェラーリ対メルセデス対レッドブルの6台のうち2台に先行しなければならない。7位6点、8位4点、9位2点、10位1点を毎戦すくいとっていくような戦い、ミッドフィールダーたちの戦法はそれだ。
彼ら5チームは二つのタイプに分かれる。攻撃的ミッドフィールダー=トロロッソ&ハース&ルノー、守備的ミッドフィールダー=フォース・インディア&ウイリアムズ。現有マシン戦力とドライバー力を見わたすと布陣はこうなるだろう。
■トロロッソ
3年目のカルロス・サインツJr.は今年になってアグレッシブさがいちだんと目立つ。来季には“脱トロロッソ”を実現したい彼(第一志望はルノーか)、自己PRに邁進中だ。いつ“宣告”されかわからない立場のダニール・クビアト、候補生ピエール・ガスリーの存在を意識しているのは明らか。自由に競わせるフランツ・トスト代表と、野心的な若き設計者であるジェームス・キーTDが二人の攻撃性を引き出す。
■ハース
ギュンター・シュタイナー代表は結成2年目に、スピードを高めてリライアビリティー向上を目指すと強気だ。ロマン・グロージャンもケビン・マグヌッセンもそろって負け嫌いなタイプ。フリー走行でも相手に譲る気を見せない。不安要素はそんな彼らが互いに接近戦のまま入賞を争うとどうなるか、チームオーダーなど聞きいれないかも。
■ルノー
この5チームではリソースが最も充実、ヨーロッパ・ラウンドに向かい、次々にアップデートを計画中。フォース・インディア時代から予選に強いニコ・ヒュルケンベルグが3戦で7位2回進出、一撃スピードがしだいに上がってきている。課題はレース時のアンダーステア症状、ボトムスピードが落ち、コーナー出口でのトラクションが鈍る。これを修正してきたら得点力が一気にアップか。他チームは彼らの伸びしろを警戒すべき。
■ウイリアムズ
新指揮官パディ・ロウばかりでなく、フェラーリ空力チーフだったディルク・デ・ビアの加入がFW40の戦闘力を押し上げている。低温で濡れ乾きの路面だった上海の苦戦をのぞけば、予選アタックもレースペースも5チームのトップレベル。いまはフェリペ・マッサが着実に中位入賞を重ね、新人ランス・ストロールの成長を待つ状況。18歳ルーキーがランクアップの「キーマンならぬキーボーイ」。序盤戦は攻めるのもマッサ、守るのもマッサ、ベテラン一人二役だ。
■フォース・インディア
開幕から3戦連続ダブル入賞、しっかり結果を残してきたものの、セルジオ・ペレスはVJM10に満足はしていない。低中速コーナーでダウンフォースが不足、風洞と実走での差異がありそれを修正中だ。バーレーンに彼らとしては早期にかなりのエアロ・パーツ類を投入。タイトルスポンサーBWT獲得によってアップデート計画が実行しやすくなったのはたしか。レース巧者ペレスがマッサに挑み、エステバン・オコンがストロールを抑える“ピンキー・フォーメーション”、がっちり守りを固めるフォース・インディアだ。