昨年までフォルクスワーゲンからWRC世界ラリー選手権に参戦していたアンドレアス・ミケルセンと交渉しているとされるヒュンダイ。この契約が実現すれば、ヒュンダイがWRCを支配する“一強”時代が再来するとの懸念が出ている。
ヒュンダイは、2016年シーズンに2勝を挙げたミケルセン獲得へ向けて動いており、先日行ったプライベートテストにもミケルセンを招集している。
チームは、現在所属しているティエリー・ヌービル、ヘイデン・パッドン、ダニ・ソルドと向こう2年間の契約を有しており、ここに昨年ランキング3位を獲得したミケルセンが加われば、マニュファクチャラーランキング上位をヒュンダイが独占する可能性が高くなる。
あるWRC関係者は「ようやく(フォルクスワーゲンによる)支配の時代が終わったんだ。また同じ時代に踏み込みたいと思う人間がいるだろうか」と懸念を示した。
「ミケルセンがヒュンダイと契約すれば、ほかのチームが彼らを打ち負かすのは難しくなる。今のドライバー市場には即戦力になる者が少ない。将来有望なドライバーは多いが、すぐにトップレベルの速さを発揮できる人材が少ないんだ」
「ミケルセンがシトロエンかトヨタに加入するほうが、WRC全体にとってはプラスになる。全体のレベルが上がるからね」
トヨタは一度はミケルセン獲得に失敗したとみられていたものの、現在も2017年シーズン後半、そして2018年シーズン起用に向けて、交渉を進めているようだ。
■ヒュンダイ、ミケルセン獲得時は17年型WRカーを1台追加
ヒュンダイでチームマネージャーを務めるアラン・ペナスは、どのチームもミケルセンの獲得を狙っているドライバーだと認めた。
「全チームが同じサービスパークにいるんだ。交渉するチャンスは誰にでもある」とペナス。
「例えばシトロエンは、クリス・ミークとの契約が今季末で切れる。あらゆる可能性を模索しているはずだ。トヨタのドライバーラインアップは強力とは言い難い。好成績を残してはいるが、より速いドライバーを引き込みたがっているはずだよ」
「(Mスポーツ代表の)マルコム(・ウィルソン)のもとにはセバスチャン・オジエとオット・タナクがいる。タナクはいいドライバーだが、まだ足りない部分もある」
「だから、ミケルセンを欲しがっているのは我々だけではないんだ」
また、ペナスはミケルセン獲得に成功した場合、ヒュンダイは昨シーズンと同様、4台体制を構築すると語ったほか、使用するマシンも旧型ではなく2017年型WRカーになると語った。
「以前にも4台体制で戦っているし、(今回も)そうなるだろう。最終決定が下されたわけではないし、4台体制には莫大な作業と予算が必要になるがね」
「旧型マシンが余っているから、それを使うのもひとつの手段かもしれない。しかし、かなり複雑な事態になる。(旧型と2017年型は)まったく異なるマシンだから、スペアパーツを満載したトラックが別途必要なんだ。コスト面であまりに厳しすぎる」
加えて、ペナスはミケルセンが資金を持ちこむペイドライバーではないと強調した。
「(資金を持ち込む)コマーシャル契約ではない。そういったカスタマーオペレーションはR5車両で行っている」
「資金を受け取る代わりにWRカーを提供するチームもあるだろうが、我々ヒュンダイは行わないよ」