2017年04月27日 09:14 弁護士ドットコム
介護保険サービスの自己負担割合を2割から3割に引き上げる介護保険関連法改正案が4月18日、衆院本会議で、自民、公明などの賛成多数で可決、参院に送付された。介護保険の費用は年間10兆円を超えており、国の財政負担を抑えるために、利用者の負担を増やす目的がある。
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制度が始まった当初は、所得に関係なく利用者全員が1割負担だった。改正案では、年収340万円以上ある高齢者のサービス利用時、自己負担率が2割から3割に引き上げられる。
税理士はこの改正案をどのように分析するのだろうか。蝦名和広税理士に聞いた。
「改正の背景には、政府が強い危機感をもつ『2025年問題』があります。『団塊の世代』が75歳に達する2025年には総人口の4人に1人が後期高齢者となり、社会保障費の急増が懸念されています。介護保険制度が始まった2000年の介護給付費は3.6兆円。2016年度では10.4兆円と約3倍に膨れ上がっています。
今回の改正も、『良い』か『悪い』かで、単純な評価はできません。しかし、現状を打破する抜本的な解決策が出てこない以上、今後も自己負担増となる介護保険法の改正が予見されます。
政府は、生涯現役社会を実現するために、様々な取組を行っています。介護が必要不可欠な方々は一定数存在し、所得によっては大きな負担となる方々もいます。介護の現状を踏まえ、世代間・世代内の公平性を確保しつつ、介護保険制度が持続できる介護保険の構築を、政府には期待したいところです」
今回の改正について、介護保険が「応益負担」から「応能負担」に転換したのではないかとみる声もあがっている。
「まず初めに『応益負担』と『応能負担』の違いについて述べたいと思います。『応益負担』とは、医療・福祉サービスを受けたときに、所得に関係なく医療・福祉サービスの内容に応じて利用料金を支払うものです。これに対して『応能負担』とは、所得に応じて受けた医療・福祉サービスの利用料金を支払うものとなります。
今回の改正により、年金収入等340万円以上の人については、自己負担割合が2割から3割に引き上げられていますが、年金収入等280万円以下の人は1割のままです。所得がある一定の人については『応能負担』になっているため、一部は『応益負担』に転換しているといえます。
しかし、今回の改正は、全てが『応能負担』に移っているわけではありませんから、原則は所得に関係ない『応益負担』とも言えるのではないでしょうか。ただし、今後はより『応能負担』へと移行していく可能性はあります」
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな・かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。
事務所名 : 税理士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士 蝦名事務所
事務所URL:http://office-ebina.com
(弁護士ドットコムニュース)