トップへ

公道でもレースでも圧倒的な“威圧感”/GT300マシンフォーカス:ベントレー・コンチネンタルGT3

2017年04月26日 15:42  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

EIcars BENTLEY GT3
2017年シーズンは15車種30チームが熾烈なバトルを繰り広げるスーパーGT300クラス。数多くある車両から1台をピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。

 今回は2017年シーズンからGT300へ初登場した1台、ベントレー・コンチネンタルGT3にフォーカスする。

* * * * * * * * *

 2017年のスーパーGT300クラスには、3台のマシンが新たに登場した。そのなかでもコンチネンタルGT3は、スーパーGTに参戦するFIA-GT3カーとしては10車種目となる1台だ。

 イギリスの高級ブランド、ベントレーのコンチネンタルGTをベースにしたGT3車両が発表されたのは2013年のこと。翌年、ブランパンGTシリーズ・エンデュランスカップでシリーズ2位を獲得している。

 コンチネンタルGT3が搭載する4リッターV8エンジンという大排気量と、その大柄なボディは、同じGT300クラスだけでなくGT500クラスからも「威圧感を感じる」と言われるほど。

 外観からも重そうなマシンに見えるが、ベース車両の2トンを超える重量から1.3トン前後まで大幅に軽量化されている。EIcars BENTLEY TTOで、ドライバーを務める井出有治もマシンパフォーマンスの高さをすぐに実感できたという。

「以前、取材で袖ケ浦サーキットをロードカーで走りましたが、あれは四駆だったし2トンを超えているクルマだから、スポーツモデルとはいえ思ったほど曲がらなくて。でも、もてぎでシェイクダウンしたマシン(コンチネンタルGT3)はそこから1トン程度は軽量化されているわけですから、その素性の良さはすぐに感じました」

 コンチネンタルGT3を目にした時、まず圧倒されるのはその大きさ。GT300マシンはもちろん、GT500マシンよりも大きく感じるほどで、走行中、GT500マシンへラインを譲る際にも「入りづらい」、「コース幅が狭く感じる」と言われるという。それでも、大柄な体躯からイメージ想起される鈍重さはない。

「ボディ剛性も高いですし、(ストレートでの)ドラッグもエンジンパワーで補えていますから動きはいいです。ベントレーらしいですよね」

「それに威圧感からくることなのか、(2015年に)マザーシャシーで走っていた時と比べて、(他車が)ラインを譲ってくれる時の流れが少し走りやすいんですよ。たぶん公道でベントレーに乗った時にも車線の合流で入れてもらいやすい、みたいなことがあると思うんですけど、それに似た感覚です」と、大きさからくる意外なメリットも。

■ベントレーに立ちはだかるスーパーGT特有の難しさ

 コンチネンタルGT3自体はデビューからさまざまなカテゴリーで活躍をみせているほか、熟成も進んでおり、実力は十分。しかしスーパーGTという新しい舞台で戦うためには、まだ合わせこみが必要な段階でもある。

 なかでも、マシンが持つポテンシャルを引き出すには、スーパーGT特有の難しさと対峙しなければならなかったという。それはタイヤメーカーでもコンペティションがあるがゆえのグリップの高さだ。

「シェイクダウンの時、ベースのセットはワークスのMスポーツのほうで推奨されたもので走っていましたが、それはスーパーGT以外のカテゴリーで走っているタイヤに対してバランスをとっているセッティングだったんです」と井出。

「そうすると、(スーパーGTで使用する)ヨコハマタイヤだとグリップが高すぎて、まったく(マシン)バランスが取れない。(Mスポーツの)ワークスエンジニアにも伝えたんですけど、『世界中のカテゴリーで、このセットアップで走っているので、(トラクションコントロールやABSは)ミニマムで走ってください。オフでも問題ないくらい』って。向こうのエンジニアも驚いていましたね」

 岡山で開催された1回目の公式テストでは、ブレーキの効き具合にも課題が見つかったという。

「ABSが入りにくいので、ブレーキが効かないように感じるんです。コーナーでのバランスはまったく走れないと感じるレベルだったし、まずはどのブレーキパッドがいいのか、いくつも試していました」

「そこからタイヤのグリップを高いレベルで使うためにはクルマをしっかりとさせなきゃいけないということになって、Mスポーツに、さまざまなパーツもオーダーしました」

 ヨーロッパからパーツを取り寄せるとなれば、日本へ到着するまで時間がかかる。そのため岡山での公式テストから、わずか1週間というインターバルで行われた富士公式テストに届いたのはスタビライザーのみ。それでも「(新しいパーツを)入れた分だけの伸びしろは実感した」という。

 井出とコンビを組む阪口良平のアタックタイムも上々で、開幕前に、さまざまな制約のあるなかではデビューマシンのポテンシャルは確実につかめたというわけだ。

 第1戦岡山では予選23番手、決勝20位だったコンチネンタルGT3だが、井出は「耐久向けのマシンに仕上がっているので、ジェントルマンドライバーが長い距離をコンスタントに走れるように考えられたクルマだなと一番最初に感じました」と手応えを明かす。

「それにストレートが速いクルマなので富士スピードウェイは得意かもしれない。ドライバーとしてもストレートが速いクルマは、レースをやっていて楽ですからね。あとはターボなので、高地のオートポリスなども期待できると思います」

 開幕戦ではデータ収集のためと目標にしていた完走を果たしており、ベントレーは間違いなく今シーズン注目の1台と言えるだろう。