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『貴族探偵』“深読み”が流行 フジ月9、ヤケクソの自虐ネタに期待!

2017年04月25日 16:33  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 『貴族探偵』(フジテレビ/月曜21時)の第2話が24日に放送され、ファンの間で早くも“深読み”が流行しつつある。第2話の平均視聴率は8.3%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)で、初回の11.8%から大幅ダウンとなったが、同時に熱心な視聴者も獲得しつつある印象だ。


参考:相葉雅紀『貴族探偵』奇抜すぎる作風に総ツッコミ! 今後の鍵を握るのは木南晴夏?


 同作は、貴族であること以外、一切が謎に包まれた貴族探偵(相葉雅紀)が、自ら推理することなく事件を解決に導く異色の推理ドラマだ。初回では、武井咲演じる女探偵・高徳愛香との推理合戦が繰り広げられ、ドラマの基本パターンを提示していた。


 そのパターンはこうだ。


・殺人事件が発生する
・愛香らがそれを発見して推理を始める
・生瀬勝久演じる鼻形雷雨刑事がトンチンカンな推理で笑いを取る
・貴族探偵が登場し、現場の美女たちと戯れる
・愛香が事件現場の状況から、常識的な推理で犯人を特定
・貴族探偵の召使いたちが、独自の調査で愛香の推理をひっくり返し、真犯人を当てる
・後から考えると、貴族探偵の“遊び”こそが、事件解決の鍵となっていた


 物語は基本的に、愛香の視点から進んでいき、最後に貴族探偵たちにひっくり返されるという形式で、視聴者は愛香とともに考えていれば、自ずと予想を覆される楽しさを味わえる。また、このパターンを知ると、貴族探偵の遊びこそが重要な伏線となることがわかるため、彼の一挙一動に注目せざるを得ないわけだ。相葉雅紀のアイドル的存在感や、少々淡白な演技も、貴族探偵のミステリアスさを演出するのに一役買っていて、彼を主演にした理由も見えてくる。


 さて、このわかりやすい形式があることで、自然と細部にも目が行き届くのだが、そこにこそ本作の醍醐味があるようだ。たとえば小説家の殺人事件を扱った第2話では、中山美穂演じるメイドの田中が、ドラマ化や映画化された作品が原作を越えることがないとの考え方について、「僭越ながら、最近では『逃げ恥』(TBS)の評価が高かったような……」と、他局の漫画原作ドラマに言及。また、田中が制作した事件の概要をまとめたボードに対しては、鼻形刑事が「まるで『ミヤネ屋』(読売テレビ系)だね」と突っ込む。さらに、執事の山本(松重豊)と運転手の佐藤(滝藤賢一)が、事件の再現VTR内でベッドシーンを演じることに、鼻形刑事は「絶対、(視聴者から)苦情来るよ」と、いわゆる“第四の壁”を超えたアプローチもあった。


 こうした小ネタが、最低でも5分に1回くらいのペースで挿入されているため、つい細部に見逃したものがないかと探ってしまう。視聴者の間で“深読み”が流行するのは、制作者側の思惑通りといったところだろう。また、本作は原作者・麻耶雄嵩のファンからも好評を得ているとのこと。メタ視点を含んだ小ネタを数多く挿入し、ミステリー小説というジャンルそのものに対する批評性を獲得しているのが、麻耶雄嵩作品の大きな特徴だ。麻耶雄嵩の作家性をなぞるように、テレビドラマへ言及する小ネタを挿入したことが、原作ファンから支持されたポイントだろう。今後はきっと、フジテレビの現状や、月9枠自体についても言及されるはずである。実際、ところどころで制作者の本音が見えるような、自虐ネタも散見されている。


 『貴族探偵』はフジ月9の30周年記念作品で、視聴率の低迷が指摘される中でスタートした正真正銘の勝負作だ。本作が失敗すれば、月9枠そのものが廃止される可能性もあると言われている。つまり、最後の月9となることだってあり得るのである。制作陣も、そのつもりで挑んでいることだろう。となれば、窮鼠猫を噛むような、ヤケクソの体当たりもあるかもしれない。いま、『貴族探偵』を観るのを止めてしまうのは、その意味でもったいない。小ネタどころか、テレビドラマ史における“事件”を目の当たりにすることができるのかもしれないのだから。(松下博夫)