2017年04月24日 10:04 弁護士ドットコム
司法修習生に対して、一律月額13万5000円を給付する「給費制」が事実上復活する。新制度を創設するための改正裁判所法が4月19日、参院本会議で可決、成立した。今年の司法試験合格者から導入される。住居費がかかる場合には、3万5000円を上限に住居手当も加算される。
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司法試験合格後、未来の裁判官、検察官、弁護士は、裁判所や司法研修所などで約1年間「司法修習生」として学ぶことになるが、今回の法改正で、この期間に支給されることになる。
財政負担軽減などを理由とし、2011年に給費制は廃止されていた。その後、現在は無利息で月額18~28万円の貸し付けを受けられる貸与制が利用できるようになっていたが、給費制の復活を望む声が強かった。
今回の給費制の復活について、弁護士はどう評価するだろうか。改正内容で評価できる点、できない点などについて、給費制の復活を求めてきた「ビギナーズ・ネット」代表でもある、萱野唯弁護士に話を聞いた。
「これまでの無給制に比べれば、一定の給付がなされることは前進であり、評価すべきものと考えています。
司法修習生は修習専念義務を負っており、公務員に準じた身分として兼業・兼職も原則として禁止されています。それにもかかわらず、2011年以来、何らの生活保障もなく無給状態に置かれていたことが、国内の他の制度や諸外国の制度との比較でも極めて異例でした。
この間、法曹志望者が激減し、経済的事情で法曹への道をあきらめた方も多くいたことからも、国の対応が早かったとは言えないでしょう」
給費制が廃止されて以後、貸与制が利用できるようになっていた。しかし元々、奨学金を借りて高校や大学、法科大学院に通う学生も多く、司法修習で更なるローンを負うことへの不安から、法曹への道あきらめる学生もいたそうだ。
今回の給費制の復活によって、懸念は払拭されたのだろうか。
「今後の課題として、2つの問題が残されていると考えています。
1つは給付額の問題です。新たな制度の給付額(月額13万5000円)は、従前の給与額(月額約20万円)や、2011年以降の貸与額(月額18万~28万円)に比べて低いものにとどまっています。
修習生は配属地も最高裁に指定され自由に選択することはできず、引越費用や住居の初期費用等も必要になります。13万5000円という額が、司法修習に専念するために必要な額になっているかについては、司法修習の実態も踏まえて引き続き検討がなされるべきであると考えています。
2つ目の課題は、いわゆる谷間世代(2011年~2016年の間に司法修習をした世代)の問題です。給費制が廃止された後、今回の制度が導入されるまでの6年間の無給制の司法修習生に関しては、何ら救済策が示されていません。
今回の国会審議の中でも与野党問わず多くの国会議員から、世代間の不公平是正措置の必要性について指摘がなされましたが、この点については改正法案に盛り込まれませんでした。
これらの意見を重く受け止め、国や弁護士会は知恵を絞ってほしいと考えています」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
萱野 唯(かやの・ゆい)弁護士
当事者の立場から給費制の復活を求めてきた「ビギナーズ・ネット」代表。給費制の問題をテーマとしたマンガ『ベンゴマン』(現代人文社)を監修。
事務所名:ヴァスコ・ダ・ガマ法律会計事務所
事務所URL:http://www.vascodagama.jp/