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黒木啓司主宰『九楽舞博多座』の“新しさ” 九州発エンタテインメント・プロジェクトが秘めた可能性

2017年04月23日 22:33  リアルサウンド

リアルサウンド

THE NINE WORLDS presents 九楽舞博多座

 EXILE/EXILE THE SECONDのパフォーマーである黒木啓司がプロデュースする、エンタテインメントを通じて地元・九州を盛り上げる一大プロジェクト「THE NINE WORLDS」。この旗揚げ公演となる『THE NINE WORLDS presents 九楽舞博多座』が、福岡・博多座にて3月31日から4月2日までの3日間、計5公演にて行なわれた。


 「THE NINE WORLDS」は、宮崎出身の黒木が「これまでの活動で培ってきたものをかたちにしたい」「九州の人たちにEXILEエンタテインメントをもっと身近に感じていただきたい」との思いを抱き、約2年前から構想してきたプロジェクトだ(関連:黒木啓司が語る、九州への思いと描いた夢「EXILEエンタテインメントで化学反応を起こしたい」)。これまで培ってきた経験や様々な人との出会いを活かし、「THE NINE WORLDS」初プロデュースのイベントとして、今回『九楽舞博多座』の開催に至った。


 同公演には、「THE NINE WORLDS」立ち上げメンバーであるDJ SOULJAHや九州・長崎出身のEXILE TAKAHIROをはじめ、黒木の熱い思いに賛同したEXILE THE SECOND、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEらが出演。『九楽舞博多座』ならではの趣向をこらしたEXILEエンタテインメントで観客を魅了した。本稿では、筆者が4月1日夜公演に参加して実感した『九楽舞博多座』の“新しさ”についてふれていきたい。


■博多座を“異空間”に


 まず、福岡のマークシティの一つである博多座で初公演を開催することができたのは、「THE NINE WORLDS」プロジェクトにとって意義のあることだったように思う。九州の歴史や伝統を重んじながら、新たなことに挑戦していく。プロジェクトが今後目指す方向性が、会場の存在感によっても示されていた。


 博多座の脇道にはまるで歌舞伎の会場かのように、出演者の名前が書かれた色とりどりののぼりが掲げられ、正面には『九楽舞博多座』特大ビジュアルが飾られていた。それらのクリエイティブは街ゆく人々にインパクトを残しながらも、福岡の街並みによく溶け込んでいた。


 ロビーではオリジナルグッズの販売や、黒木自らが声掛けし、『九楽舞博多座』のために集結した九州の飲食店8店舗がブースを展開。場内はお祭りのような盛り上がりを見せ、開演までの時間を過ごす人々で溢れていた。また、隣接する博多座常設の飲食ブースやお土産コーナーも賑やか。店員と来場者が楽しそうに会話する姿も多く見かけた。こういった人々の出会い・交流が生まれることも、「THE NINE WORLDS」流エンタテインメントの一つなのだろう。


 ホールは、赤を基調とした重厚な客席にちょうちん飾りといった和の雰囲気が漂う。そこに開演前のBGMとして流れているのが、クラブミュージックだ。まさに『九楽舞博多座』と呼ぶべき異空間が広がっていた。


■和とブロードウェイの融合


 いよいよ開演を迎えると、ステージの紗幕にプロジェクションマッピングの映像による障子が現れ、桜吹雪や鯉などが映し出されると、幕開けへのカウントダウンがスタート。カウントゼロと同時に、紗幕の奥に袴姿の黒木が登場。黒木が歌舞伎の演出の一つである口上を朗々と読み上げると幕が上がり、その瞬間タキシードに早着替え。和の雰囲気から一変、ここからブロードウェイさながらの煌びやかな世界観が繰り広げられていく。


 ところどころに挟まれる黒木と女性ダンサーたちによるパフォーマンスや、BARのマスターに扮したEXILE NESMITHと俳優の平沼紀久が登場したトークコーナーなど、一つの物語をつなぐようにシーンが入れ替わる舞台的な演出も取り入れられていた。女性ダンサーたちを従え、華麗なダンスを披露する黒木の姿からは、本公演のホストとしての風格を感じることができた。


■アーティストの個性が際立つ演出


 各出演者のパフォーマンスでは、それぞれの持ち味を活かしながら、『九楽舞博多座』オリジナルなエンタテインメントが表現されていた。


 3人のボーカルと13人のパフォーマーで構成された、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE。彼らのパフォーマンスはボーカルスキルの高さはもちろん、舞台をフルに使うフォーメーションや大きな身振り、大所帯ならではの迫力が特徴。彼らの白の衣装がキャンバスのようになり、次々と映像が映される。激しく踊る姿がいろいろな色や景色で染まっていく様子は芸術的でもあった。


 その後登場したボーカリスト3名も、それぞれの個性が際立っていた。EXILE THE SECOND・NESMITHはアコースティックギターの弾き語りで、落ち着いた雰囲気のなか歌声を披露。ボーカリストとしてのポテンシャルをあますことなく感じることができた。同じくSECONDのSHOKICHIは、DJ SOULJAHやTHE RAMPAGEとともにパフォーマンス。SHOKICHIの歌声はダンサブルなビートにとてもよく映える。そして、EXILE TAKAHIROは圧倒的なカリスマ性で会場を沸かせると、エレキギターとDJ SOULJAHをバックにZIGGY「GLORIA」や19「以心伝心」といったカバー曲をラインナップ。さらには、EXILE「運命のヒト」やEXILE THE SECONDとのコラボレーションによる「Together」など、幅広い楽曲を巧みに歌い上げた。


 そして、本公演のラストを飾ったのは、黒木が所属するEXILE THE SECOND。SECONDの楽曲とパフォーマンスには、会場を巻き込む圧倒的なパワーがある。初めてライブに参加する人も、初めて曲を聴く人も一緒に楽しむことができるエンタテインメント性の高さが魅力だ。この日の博多座も彼らの登場とともに一気にダンスフロアと化した。ちなみに、サポートダンサーとして参加した九州のダンスチーム・九州男児新鮮組の高度なアクロバットもみどころだった。小柄な体型を活かし、次々と繰り広げられる大技の数々に圧倒された。


 ほかにも、あまりふだんのライブでは聞くことができないメンバーたちのアットホームなトークや、休憩前に流された黒木出演のコミカルな映像など、本公演ならではの楽しみも充実。「エンタテインメントを身近に感じてもらいたい」という黒木の思いを随所に感じることができた。


 計7,500人の観客を魅了し、大円団を迎えた『九楽舞博多座』。開催目前にして「まだやりたいことがたくさんある」とすでに語っていた黒木は、今後どのような試みでEXILEエンタテインメントを九州、そして全国へ届けていくのだろうか。次なる動向が今から楽しみでならない。(久蔵千恵)