2017年スーパーフォーミュラ第1戦鈴鹿で優勝してガッツポーズを見せる中嶋一貴。 連日の好天に恵まれた週末の鈴鹿2&4。JSB1000クラス決勝はポールの中須賀克行がセーフティカー中にまさかの転倒という波乱の展開となったが、続くスーパーフォーミュラ第1戦は予想どおりピット戦略が入り乱れる中、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)が後続をまったく寄せ付けずにポール・トゥ・フィニッシュを果たした。
昨年の43周249.70kmから、35周203.25kmとレース距離が短縮されて行われた2017年スーパーフォーミュラ第1戦鈴鹿。スプリント色が強まり、前日の予選トップ3会見でも3人が声をそろえて決勝のポイントは「スタート」と話すように、スタートに向けて緊張感が高まっていく。
事前のウォームアップランは滞りなく進行し、雲ひとつない晴天のもと、国歌斉唱、鈴鹿の末松則子市長の「Gentlman Start your Engine!」の掛け声を経て、定刻どおり13時40分にフォーメーションラップが始まった。
気温22度、路面温度37度の温かい気候ながら各車マシンを左右に振って、タイヤウォーミングしながら走行。ストレートではそれぞれリヤタイヤをバーンアウトさせ、先頭の一貴から順にグリッドに収まっていく。
グリーンフラッグが振られ、5つのレッドシグナルが消灯。ついに2017年のスーパーフォーミュラの決勝が始まった。スタートでは一貴、3番手の山本尚貴が好スタート。山本が国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)をかわして2番手にアップ。アウト側グリッドの方がラバーが乗っているのか、上位は奇数グリッドのドライバーの蹴り出しがいい。その後方では大きなアクシデントは見られなく、クリーンなスタートが切られた。
オープニングラップを終えてまずは6台のマシンがピットイン。予選7番手のアンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM'S)を先頭に、今回のレースに適用されているタイヤ1本以上交換義務を果たす。
その翌周には3台がピットイン。4番手走行の石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)、ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)、ナレイン・カーティケヤン(TCS NAKAJIMA RACING)がタイヤを交換。石浦は右フロントのみの1本交換でモニターでは4.8秒の制止時間で、ロッテラーの前でコース復帰を果たす。
3周目になると国本とヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がピットインし、トップの一貴を先頭とする上位7台と、8位の国本を先頭とするタイヤ交換義務を終えた2グループによるレースが展開されていく。インパルはこの開幕戦からエアジャッキを導入している。
ドライバーの燃費により、1周目より2周目の方が効率がいいという判断もあり、1~3周の中でピットタイミングは分かれたようだが、ここで中嶋大祐(TCS NAKAJIMA RACING)が無給油でタイヤのみの交換でコースに復帰したとの情報も。
4周目以降はいったん順位が落ち着き、一貴、山本、塚越広大(REAL RACING)のトップ3でレースは進んで行くなか、13周目には小林可夢偉(KCMG)がピットイン。可夢偉は12番手のガスリーの前でコースに復帰するも、可夢偉のタイヤはコールド。温まり切ったガスリーを抑えることができずに、サイド・バイ・サイドとなり順位を奪われてしまう。
翌周には可夢偉と順位を争っていた伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が可夢偉に合わせる形でピットイン。モニター上で5.4秒の制止時間という素早いピットワークでタイヤ交換を終え、ガスリーの前、10番手でコースに復帰。
15周目には野尻智紀がピットインし、野尻はタイヤを4本交換。制止時間はモニター上で14秒2。給油時間も長く、4本交換前提でスタート時のガソリンを少な目でスタートしたか。同じ周にはスプーンで11番手の可夢偉がオーバーランし、コースに戻るところで後ろからカーティケヤンと接触し、カーティケヤンがスピン。審議対象となるがペナルティはなかった。
トップ争いは一貴が2番手の山本を4秒のギャップを保って周回。一貴は1分41秒中盤のタイムで走行し、タイヤ交換組トップの国本は1分42秒前半。ラップタイムからは国本の逆転は厳しい状況となり、レースの約半分の18周を終了。
レースも後半に入ったところで、11番手の可夢偉が10番手のガスリーの背後について牽制。20周目の130R出口では可夢偉はオーバーテイクシステム(OTS)を使い、シケインでガスリーのインを付いてオーバーテイク。先輩F1ドライバーの意地を見せる。
21周目には3番手を走行していた塚越がピットインしてタイヤを4本交換。コースに復帰するも、ストレートで後方から来たロッテラーに1コーナーでかわされてしまい6番手に後退。表彰台のチャンスが遠のいてしまう。
その時、スプーンで大嶋和也(SUNOCO TEAM LEMANS)がスピンし、コース上に逆向きにストップ。大嶋の左右を後続のマシンがギリギリのスペースで追い抜いていく中、セーフティカーが導入される。
すかさず、ピットを終えていなかった上位の2台、一貴と山本が同時ピットイン。一貴と山本の順位は変わらずそのままコースに復帰し、トップ一貴、2番手山本、3番手から国本、石浦、ロッテラーと、スタート直後の順位に戻る形となる。セーフティカーでの損得はこの時点では見られない。
26周を終えてセーフティカーのランプが消灯。トップの一貴は大きくマシンを左右に振ってタイヤを温め、そこからスピード落として隊列をコントロール。130Rを過ぎると加速を始め、ローリングスタートで残り8周、終盤の戦いへと入っていく。レース再開直後のストレートではニック・キャシディ(KONDO RACING)がスロー走行。その他は大きな順位変動はなくリスタートの違反もなし。
一貴をトップに上位は2秒間隔で続いていく。タイヤ4本交換で高いグリップが残っている6番手塚越は前のロッテラーの背後に付けるが、百戦錬磨のロッテラーは塚越をブロックし続け、塚越にチャンスを与えない。
その後方では10番手ガスリーと11番手のフェリックス・ローゼンクビスト(SUNOCO TEAM LEMANS)がバトル。ストレートでローゼンクビストがOTSを使って1コーナーでアウトから並びかかるも、ガスリーもOTSを使用してインを守り、2コーナーを先に制して順位をキープ。ルーキーの外国人ドライバー同士が、激しい順位争いを見せる。
32周目には1~2コーナーのアウトのサンドトラップにマーデンボローがマシンを止める。マーデンボローは苦いスーパーフォーミュラのデビュー戦となってしまった。
トップの一貴は終盤でも1分41秒前半のラップタイムを並べ、終始は安定した挙動で2番手山本に4秒以上のギャップを築く。一貴は残り2周となって独走のままOTSを点滅させ、サインガードの館信秀トムス代表も笑顔を見せる圧倒的な速さを見せ、後続にまったく付け入る隙を見せない。
ファイナルラップの最終コーナーを立ち上がり、一貴はOTSを点滅させたままトップチェッカー。金曜日の占有走行、予選、決勝のリザルトでトップを奪い、このオフからの圧倒的な速さと強さを見せつけ、2017年初戦のスーパーフォーミュラを制した。