2017年04月23日 08:44 弁護士ドットコム
職場で、社長が同僚に対して「お前は赤ちゃん以下」「お前のことはひとつも信用していない」など、聞くにたえない暴言を繰り返しているーー。自分に直接向けられた罵声ではないものの、そんな雰囲気の職場に苦痛を感じる女性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーで悩みを打ち明けました。
【関連記事:47歳男性。妻と「10年間セックスレス」で気が狂いそう――望めば「離婚」できる?】
相談者によると、会社は社長と従業員の合わせて3人で、社長が男性社員に、「俺が納得いくまで仕事をするな」といった罵声をほぼ毎日浴びせているそうです。
相談者自身が社長から何か言われているわけではないものの、「毎日の罵声にうんざりしていて、仕事にも手がつきません」。相談者が同僚に対策をうながそうと呼びかけても、「何も言わず飲み込むほうがいいこともある」と、行動を起こす気配はありません。
このような職場環境を改善するために、どのような対策をとるべきなのでしょうか。また、自分以外への罵声を聞かされることも、パワハラにあたるのでしょうか。小野山静弁護士に聞きました。
「社長が同僚に罵声を浴びせていることについて、第三者の立場からできることとしては、まずは、罵声を録音したり日時や内容を記録したりして証拠を残しておくこと。そして、その証拠を持って労働基準監督署といった行政機関や労働組合などに相談することです。
証拠を残しておくことは非常に重要で、もし同僚が行動を起こすことになった場合や、社長の罵声が自分にも及んできた場合にも役立ちます」
ーー相談者は、「毎日の罵声にうんざりしていて、仕事にも手がつきません」と言っています。このような場合、相談者自身もパワハラ被害者と言えるのでしょうか
「自分以外への罵声を聞かされることもパワハラにあたるかどうか。厚生労働省によれば、職場のパワー・ハラスメントとは、『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』と定義づけられています。
社長による自分以外への罵声を聞かされることも、職場環境を悪化させる行為にあたるとしてパワハラといえます。
最近では、自分だけでなく同僚も上司からパワハラを受けていたという事案で、同僚に対するパワハラがあったことも心理的負荷を大きくした要因と評価されて労災が認定された例もあります。
このように、パワハラが当事者本人だけではなく周囲の人々に与える精神的苦痛についても認められる方向にあるといえますので、先ほど述べた相談窓口に相談するなど、自らもパワハラ被害者であるとしてまずは是正を求めていってもらいたいです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小野山 静(おのやま・しずか)弁護士
1982年生まれ。弁護士。旬報法律事務所所属(http://junpo.org/)。ブラック企業被害対策弁護団、夫婦別姓訴訟弁護団などに所属。労働事件、民事事件一般、家事事件、刑事事件などを手がける。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor