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D-LITE(from BIGBANG)は稀有なアーティスト? 新作の“J-POP愛”を紐解く

2017年04月22日 18:03  リアルサウンド

リアルサウンド

D-LITE(from BIGBANG)『D-Day』

【参考:2017年4月10日~16日のCDアルバム週間ランキング(2017年4月24日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2017-04-24/)


 ちょうど二カ月前に『MADE』で堂々の1位を獲得したBIGBANG。日本盤のアルバム『MADE』のリリースと前後して最年長のメンバーT.O.Pが軍に入隊したのですが、その余韻を塗り替えるように、D-LITE(from BIGBANG)のソロ作『D-Day』が1位を奪取。BIGBANGなら10万枚突破も当然でしょうが、ひとりでも4万枚近く売り上げるのだから立派なもの。しかもこれ、フルではなく7曲入りのミニアルバムだし、二週間前にはデジタル配信されている作品です。


(関連:“活動安定期”に再びチャートを賑わす条件は? BIGBANG新作などから検証


 BIGBANGはK-POPのトップを走り続けますが、ソロにおけるD-LITEは徹底したJ-POP志向。なにしろ最初のソロアルバム『D’scover』は日本のヒット曲のカバー集であり、秦 基博の「アイ」、斉藤和義「歌うたいのバラッド」、スキマスイッチ「全力少年」、いきものがかり「じょいふる」、さらにはm-floのVERBALをフィーチャリングした「今夜はブギーバックnice vocal feat.VERBAL(m-flo) 」などなど、幅広い層に届く楽曲が選ばれていました。

 ソロ2枚目となる本作『D-Day』は、ファーストで見せたJ-POP愛をさらに濃縮させた内容。前回カバーしたアーティストに曲を提供してもらい、当時プロデューサーのひとりであった亀田誠治にサウンドのアレンジを任せ、自身はトータルプロデュースの立場で制作に関わっていく。より積極的かつ能動的にJ-POP・アーティストたらんとしているわけです。絢香、水野良樹(いきものがかり)、秦 基博の3人が書き下ろした曲もJ-POPど真ん中。秦 基博本人が歌えばもう少し淋しげに響くであろうリードトラックは、D-LITEの歌声になることで、より甘く爽やかに耳をくすぐります。

 いまや世界に進出しているK-POPの産業的な成長は、あらゆる国の作曲家陣から集まったトラック/メロディ/歌詞をドライに分析し組み合わせていくシステムによって鍛えられた、というニュースを見たことがあります。そんなシーンの頂点に君臨しながら、作り手/歌い手の感情を重んじるJ-POPの世界を愛してくれるD-LITE。実に貴重なタイプではないでしょうか。

 また、先週1位からダウンしたのは4位のSuperfly『LOVE,PEACE & FIRE』。デビュー10周年を記念し、ファン投票によって選ばれた三枚組の豪華ベストで、繁華街を歩いていると「この国に、この声。」「あなたの人生を、祝福する声。」「圧倒的に、愛。」などのキャッチコピーが並んだ巨大広告にたくさん遭遇しますね。ものすごいプロモーション力だし、越智志帆の歌唱力は実際ものすごいパワーに溢れていますが、となると、発売から二週間で6万枚弱という売り上げが少し気になるところ。2013年に出した初のベスト盤『Superfly BEST』は初週で15.7万枚を売り上げているので、それから3年半でまたベスト、しかも3枚組というボリュームが裏目に出た印象も。「この国に、この声。」と胸を張って売り出すシンガーなのだから、他のやり方で10周年を祝っても良かったのではと思います。

 ただ、興味深いのは、このアルバムの初回限定盤に全編インストゥルメンタルのDisc-4が付いていること。「好きな曲」とはまた違う、「カラオケで歌いたい曲」という基準で選ばれた上位13曲が並んでいます(堂々の1位は「愛をこめて花束を」。納得!)。驚きました。これまでSuperflyの音源にカラオケ用のインストが収録されることはほとんどなかったというのに。


 もともと二人組ロックユニットとして始まったSuperflyは、「メインの歌+バックトラック」という考え方を嫌い、「歌だけでなく生バンドの演奏やグルーヴも楽曲の一部」と意識しながら制作を続けてきたのだと思います。そんな彼女が堂々と「はい、みんなカラオケでいっぱい歌ってください!」と宣言したことが今回のベストの大きな試みであるのなら、Superflyの未来は明るい。彼女はこれからも次々と新しい扉を開いていくことでしょう。(石井恵梨子)