お酒に酔いやすいかどうかは一般的に、アルコールの吸収・分解の速度に左右されると言われている。しかし、疲れているときや運動した後は酔いが回りやすいなど、飲酒前の状態によって酔いやすさが変わることもある。
神経生物学の研究をしているメリーランド大学のハーバーホルツ准教授は、事前の社交行動が酔い方にどう影響するかを明らかにするため、ザリガニを対象に実験を行った。その結果、「社交経歴は、ザリガニの急性アルコールに対する行動を変化させる」と判明したという。Journal of Experimental Biology電子版に論文が掲載されている。
事前の社交状況によって、酔い始めるまでかかる時間に約8分の差
実験は、ハーバーホルツ准教授と学生2人によって行われた。約1週間単体で飼育したザリガニと、数週間共同生活させたザリガニを用意し、それぞれを同じアルコール濃度の水槽に放ち、その様子を動画で記録・観察したという。
どちらの飼育環境で過ごしたザリガニも、水槽に入ってからの行動は同じだ。最初はしっかりとした足取りで歩くものの、だんだんと酔いが回り、テイル・フリップ(尻尾をバタバタとさせる動き。外部刺激などで興奮した際に見られる行動)を見せ始める。次第に千鳥足になり、最後には仰向けの状態から起き上がれなくなってしまう。
しかし、それぞれの行動までかかった時間が異なる。共同飼育のザリガニは、テイル・フリップまで約20分、仰向けまで約36分、単体飼育のザリガニはテイル・フリップまで約28分、仰向けまで約43分と、どちらの行動でも、共同飼育のザリガニのほうが早く見られた。
つまり、共同飼育を経験したザリガニのほうが、酔いが早く回ったということになる。
「いつかアルコール依存症の治療法や予防対策方法の確立に役立つはず」
ハーバーホルツ准教授はこの実験に関して、4月19日付のJournal of Experimental Biology電子版で
「人間においても、孤立や孤独はアルコールの消費量を増やし、お酒の影響を受けにくくする作用があるのかもしれません」
とコメントしている。ただし、今回の実験はあくまでもザリガニを対象としたもの。人間などの哺乳類でも同様の結果が見られるか否かまでは、今後の研究が必要になる。これについて同誌は
「准教授は、いつかこの研究がアルコール依存症のより良い治療法や予防対策方法の発展に役立つはずと楽観的だ」
と報じていた。