2017年04月21日 15:43 リアルサウンド
誰にだって“初めてのこと”は存在する。ファッションショーでランウェイを歩くトップモデル、ファッション雑誌の専属モデルにも、コーディネートやメイクの初心者だった頃があるはずだ。桐谷美玲主演で始まったドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)。容姿端麗な桐谷を起用してのこのドラマタイトルに、辛辣な意見も飛んできそう……ではあるが、この作品には大きなテーマが存在する。
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城之内純(桐谷美玲)、前田満子(水川あさみ)、佐藤聖良(ブルゾンちえみ)は、八王子製紙で製紙素材の分析をする研究員3人組。「美容とかファッションが昔から一番苦手で。誰にも見られないように、目立たないようにってずっと、ずっと思ってて」という、城之内のセリフが表す通りに、彼女たちは美容やファッションとは縁遠い場所にいた。ある日、八王子製紙が、丸の内にある大手化粧品会社・クレエラ社へと買収されることになる。そこで3人が突きつけられる掟が、“人は見た目が100パーセント”という現実だ。女子力を上げるべく、3人は“ビューティー研究”を試みる。「うさぎ顔メイク」「ストール」「帽子」、クリエラジャパン丸の内研究センター長の國木田修(鈴木浩介)の助けもあり、苦労の末に彼女たちは丸の内デビューを果たす。
このドラマが視聴者に機能しているのは、3人と共にファッションを学んでいくことができるという点だ。第1話に続き、“ビューティー研究”の対象になったのは、「パーティーファッション」「クラッチバッグ」「イヤリング」の3つ。城之内は参加する結婚式に、自社の統括マネージャー松浦栄子(室井滋)も出席することを知る。ウェディングドレス、喪服と明らかに間違った服装を選ぶ城之内。店員からノースリーブのカジュアルなドレスを勧められ、前田がまだ寒いのではと意見するも「快適さと美しさは必ずしも共存するものではないですよ。お洒落の基本は我慢ですから」と店員からのもっともな考えに、3人はぐうの音も出ない。研究対象をクラッチバッグにすると、彼女たちのバッグは荷物でパンパンに。道行く多機能カバンを背負ったサラリーマンに羨望の眼差しを向け、一歩間違えると集金バッグにも見えてしまうクラッチバッグの、事細かく決められた「こなれた感じ」での持ち方に困惑しながらも、3人は一歩ずつ学んでいく。必ず一笑いを織り交ぜながらも、視聴者側は自然と基礎から、彼女たちと同じ歩幅で学習していくことができる。お洒落に翻弄される城之内たちにクスリとしながらも、心のどこかでハッとしている視聴者も多いのではないだろうか。
さらに、このドラマはコメディ要素も侮れない。クラッチバッグを持ったままトイレに入った前田は、バッグを置く場所がないことに気づく。フックにはかけられない、トイレットペーパーの上には置けない、わきに挟むも便器に落としそうになる。挙句の果てにクラッチバッグを口に咥え、用を足した彼女は「クラッチバッグを……引退します」と、城之内たちの前でバッグを地面に置く。この時、BGMとして流れるのが山口百恵の「さよならの向う側」。山口百恵がマイクをステージに置き、芸能界を引退したのは有名な話だが、彼女が最後に歌ったのがこの曲である。さらに、ネット情報に惑わされた城之内は、揺れるポニーテール、赤い口紅、赤いショートパンツ、簡単には捕まらない動物(トラ)のTシャツ、香水を纏い、タンチョウ鶴の求愛ダンスを披露することに。なかなかの長尺で演じられる桐谷の求愛ダンスは、シュールでありながら彼女のキャリア的にもあまり見られない演技である。
美容師の榊圭一(成田凌)に髪をほめられ、胸を撃ち抜かれた城之内。次回からは、お洒落から恋愛のフェーズへと発展していくのだろう。誰にも見られないように、目立たないように、と生きてきた城之内は、自信がなくオドオドした性格だ。けれど、ファッションによって内面も変わることができる。ずっと陽の当らない場所を選び生きてきた城之内たちが、第1話のラストでは颯爽と丸の内を歩くことができたのだ。恋愛、ファッション……とこれから彼女たちが成長していく中で、どのように本質的にも変わっていくのかが『人は見た目が100パーセント』のテーマなのではないだろうか。(渡辺彰浩)