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姫乃たま × ぱいぱいでか美、両立アイドルが考える理想の“私”と“活動スタイル”

2017年04月20日 14:03  リアルサウンド

リアルサウンド

姫乃たま × ぱいぱいでか美

 姫乃たまが、音楽の表現活動に関わる様々なプロフェッショナルに話を聞く本サイトの連載『音楽のプロフェッショナルに聞く』。今回は番外編として、4月5日に両A面シングル『PPDKM / 桃色の人生!』をリリースしたばかりのぱいぱいでか美を招いた特別対談を企画。バラエティ番組への出演でもおなじみのぱいぱいでか美と、地下アイドルでの経験を活かした執筆で定評のある姫乃たま。音楽と並行してあらゆる活動を行う彼女たちが目指す理想の自分とは。公私ともに親交の深い2人に語り合ってもらった。(編集部)


(関連:アイドルとアーティストの境界はどこに? 地下アイドル・姫乃たまが考える


■将来的に芸能と音楽活動を半々くらいにやっていけるのが理想(ぱいぱいでか美)


姫乃たま(以下、姫乃):今回はアイドル業と何かを両立している人をテーマに呼ばれていて、でか美ちゃんはタレント業、私は文筆業っていうことになると思うんだけど、私は地下アイドルを自称しているし、でか美ちゃんに関してはそもそもアイドルを名乗ってないので、その辺りを最初に定義というか説明したほうがいいかなと。


ぱいぱいでか美(以下、でか美):自称はしてないけど、活動だけ見たらアイドルだって思われてもおかしくないし、それはそれで光栄なことなので、「アイドルじゃなくて、ダンス&ボーカルユニットです!」みたいなことはないです(笑)。「ライターじゃなくて作家です!」みたいな。


姫乃:にゃははは。私もアイドルと呼ばれると申し訳ないような気持ちがするのでわかるんだけれど、でか美ちゃんはやっぱり自分がアイドル好きであることもアイドルを名乗れない要因になっているんだよね。


でか美:もともと自分がハロプロ(ハロー!プロジェクト)のファンなので、アイドルってすごい神聖なもので、ファンはステージ上のパフォーマンスだけを評価する存在だって思ってて……うーん、すごい語弊はあると思うんだけど、極端な話ハロプロしかアイドルじゃないと思ってるところがあって。


姫乃:そうなると事実として、でか美ちゃんはハロプロのメンバーではないから。


でか美:そう。自分自身が想像してるアイドル像から離れ過ぎちゃってて、それで自称できないんだよね。最近はアイドルも多様化してるし、地下アイドルって言われることにもだいぶ慣れてきたけど、アイドルですよねって言われると……。


姫乃:にゃはは、それはそれでねえ。


でか美:うーーーん??! ってなるよね。だから自分ではWikipediaにも書いてあるタレントって肩書きが、何でも屋っぽくていいかなって思ってる。


姫乃:ふむふむ、ちなみに今日は結論として「理想のアイドル像」を教えてほしいってことだったんだけど、アイドルじゃなくて「理想のぱいぱいでか美像」にしよっか。


でか美:「理想のアイドル像」はハロプロに入れなかった時点で終わっているので……。


姫乃:あっ、すごい、いま目の輝きが失われた。


でか美:もうね、最近、私ってハロプロに入りたかったんだなってすごい思うようになった。ハロプロ好きになった頃には高1だったからすっかり諦めてて、音楽始めた時には19歳だったから本当にハロプロには入れない年齢になっちゃってて。


姫乃:あれっ、でもモーニング娘。って小学生くらいの時には流行っていたような。


でか美:全盛期も好きだったんだけど、中学の時はギャルであゆ(浜崎あゆみ)とかばっかり聴いてたから……はあ……。


姫乃:あわわわ。ここまで好きになるきっかけはなんだったの?


でか美:高校生の時に仲良かった男の子からカラオケで、「言いたいことがあるんだけど」って言われて、これは告白されるなって思ってたら、「俺、Berryz工房好きなんだよね……」ってカミングアウトされて。


姫乃:「言いたいことがあるんだよ!」


でか美:単にカラオケでBerryz工房歌いたかったからカミングアウトされたっていう。それで「Berryz工房行進曲」っていう、Berryz工房のなかでもそこそこヤバい曲を歌われて、その時はびっくりしたんだけど、特にオタクに偏見とかなかったから家帰って調べたその日に好きになった。それこそ最初に見たのがももち(嗣永桃子)の動画で、「こんなに可愛い子がいるのか???!」って。


姫乃:恋だ。


でか美:一目惚れっていうか、わああああってなって。ちょっと時間が経った頃には、私の方がすっかり好きになってて、名古屋に来る日を調べて現場デビューもして。


姫乃:にゃははは!


でか美:まあだから「理想のアイドル像」はないけど、私の中では将来的に芸能と音楽活動を半々くらいにやっていけるのが一番理想だなって思ってます。


姫乃:うんうん、アイドル業はライブとかCDリリースとか音楽活動が中心になるもんね。じゃあ、いまはライブしながらテレビにも出てるし理想的なのでは!


でか美:でももっと仕事量は増やさないとなって思ってる。ペット飼えるくらいの余裕がほしい。


姫乃:最高にわかりやすい回答。でも先日も両A面シングル『PPDKM / 桃色の人生!』をリリースして、ラップに挑戦したり、大好きなももちにラブソングを書いたり、音楽活動も充実してるよね。


でか美:改めて言われると緊張するね(笑)。「PPDKM」は、いま所属しているパーフェクトミュージックっていう事務所をラップで“レペゼン”する曲になりました。


姫乃:レペゼンっていう単語を覚えたところに、でか美ちゃんのマジメさを感じました。基本的にJ-POPが好きな人だと思うけど、ラップは誰かを参考にしたの?


でか美:レコーディングの前に作詞作曲をしてくれたE TICKET PRODUCTIONさんがレッスンしてくれたんだけど、そこでもすぐ「マジメでしょ!」って言われて、影響されちゃうと思うから他の人の曲聞かないでくださいって。


姫乃:そうそう、でか美ちゃんマジメなんだよね。作詞はE TICKET PRODUCTIONさんからのアンケートに答えて書いてもらって。あっ、ごめん、黒柳徹子式で話を進めてしまいました。


でか美:はい(笑)。細かく書き込みすぎたみたいで、書きやすかったですって言ってもらってよかった。


姫乃:マジメだ!


でか美:「桃色の人生!」は、ももちに捧げるラブソングで、初めて100%自分の気持ちだけで書いた曲なので、これとカップリングの「言いたいことはありません」は自分で作曲もしました。


姫乃:でか美ちゃんは曲も作れちゃうんだよね。


でか美:編曲はやらないけどねー……。


姫乃:でもある程度ほかの人の手が入ってるほうが、私はアイドルっぽいと思うな。それよりも100%自分の気持ちだけで歌詞を書くのは、大好きなももちのことだから振り切れたと思うけど、基本的にはすごく難しいよね。


でか美:難しい! でも「桃色の人生!」はちょっとでも他者の視点を入れると、自分とは違う観点で応援してる人もいるのに、ほかのファンに良くないって思って100%自分の話にしたんだよね。


姫乃:そういえば、でか美ちゃんが専門学校時代に作詞の授業をとってて、講師がリアルサウンドの神谷(弘一)編集長だって知ってすごいびっくりしたんだけど、神谷さんに教えてもらったことは今でも活かされてる?


でか美:うんうん、作詞は神谷さんにしか習ったことないしね。作詞の基本はできてるって言ってもらえて、どうやってオリジナリティを出すかってこととか、メロディーにはめた時にどうなるかってことを教えてもらった。歌詞と詩は違うんだよってことを教えてくれたのは神谷さんだった。


姫乃:わあ、それってすごい大事なことだけど、実践してから気がつくまでに時間がかかるから早いうちに習えたのは羨ましいなあ。『PPDKM / 桃色の人生!』は事務所に所属してから2枚目のリリースになるけど、どういう意味合いのシングルになったのかな。


でか美:周りの誰も思ってなかったと思うけど、私の中ではこのシングルで一発やらなきゃっていう気持ちはあった。活動が安定してから何年か経つし、もうすぐ26歳になることとか、何よりももちの引退が決まったりとか、いろんなことが重なった時期だったから、気合いを入れ直すタイミングというか、溜めてきた気合いを出すタイミングではあるかなと思った。


姫乃:音源はコンスタントにリリースしたいって言ってたけど、前回よりもセールスは伸ばしたいみたいな気持ちが常にあるってことなんだよね?


でか美:そうなんだけど、そのために今回の売り上げ目標は何枚ですとか、そういうのを打ち出せないタイプだから……。


姫乃:それこそせっかく活動が安定したのに、こっちもファンも疲れちゃうもんねえ。


でか美:そうだね。だからそういうことは言わないけど、内なるものは秘めてるというか。


姫乃:うーむ、でか美ちゃんがマジメで頑張り屋さんなのが伝わってくるなあ。


■自分の原動力が何なのかを知っているだけで素晴らしい(姫乃)


姫乃:でか美ちゃんはライブ活動をしながらマスメディアへの露出もしているわけだけど、テレビの仕事があったからライブ活動も続けられているっていう気はしない?


でか美:人という字みたいな(ジェスチャーをしながら)。


姫乃:アイドル業とタレント業が支え合って、的な。


でか美:そうだね。ファンもライブの時間も大好きなんだけど、たまによくわからないライブに出ると家に帰ってからどうしようもない気持ちになる時があって、その後に華やかな収録現場に行くと元気をもらえるし、逆にテレビの収録でうまく喋れなかった時は、ライブで応援してもらえると元気が出るから、どちらかが極端に減ったりするとやっていけないかなって思う。


姫乃:ハレとケの差が埋まってね。きっと両方の仕事が互いに影響しあってもいるよね。


でか美:テレビで見てくれた人が、ライブハウスに行くのは怖いけど、いろんなハードルを越えて会いに来てくれたりとか、そういう「『有吉反省会』見て来ました」って言ってくれるファンの人と私が喋ってるのを見ると、現場のオタクがすごい嬉しそうにしてくれたり。オタク……私はファンとオタクっていうのは違うと思ってるんですけど。


姫乃:うんうん、ここ数年でライブに来て熱心に応援してくれるファンの人を、愛情込めてオタクって呼ぶ文化ができたもんね。


でか美:オタクの人も私がテレビに出てるから、応援するモチベーションを保ててると思う。


姫乃:彼らはでか美ちゃんがテレビに出てなくても好きだと思うけど、応援してる子がテレビに出てたらきっと嬉しいよね。しかし私は本当に、バラエティ番組の仕事で勝てる気がしないんだけど、でか美ちゃんはすごいよねえ。


でか美:いやいや、勝ってないよ。でもテレビ好きでよく見てたし、あと最近は批判してくる人が一番の真っ正面からテレビを見ている視聴者だなって気がついて。いまはSNSで否定も肯定もできるし、それであんまり怖くなくなってきたっていうのはあるかな。でも「爪痕残すぞ!」っていうアイドルが多い中で、今日勝つ勇気みたいなのが出せなくて、それが自分の良いとこでもあり悪いとこでもあるんだけど、それが今に繋がっちゃってるなあっていうのは思う。


姫乃:いやでも、でか美ちゃんは頑張って活躍してるし、我々インディーズソロアイドルの星ですよ。ここまで来るのだって大変だったと思うし、そもそも芸名もセクハラ半分で付けられて。


でか美:そう、専門学校の時に一緒にバンドを組んでた仲良い先輩に付けられたんだけど、セクハラと気づかず。これより面白い名前ないじゃんと思ってずっと使ってます。


姫乃:ほんと、苦労も多かったと思うけどいい名前だよね。以前、そのバンドがすごい楽しくて、ずっとこのバンドをやっていくって思ってたから、解散したショックでソロになったって聞いたような気がするんだけど合ってるかな。


でか美:メンバーが就職したり、他のバンドに加入するのを見てて、もう絶対に人と音楽やらないって気持ちになって。


姫乃:ショックっていうか、怒ってたのね。


でか美:ひとりで何ができるかなって思った時に、弾き語りかなって思ったんだけど、周りから歌って踊ってる時が楽しそうだよって言われて、じゃあそうしようって。それで22歳でソロになって徐々にいまの形になった感じ。


姫乃:初期の「歌って踊れるバンドウーマン」っていうキャッチコピーは自分でつけたの?


でか美:2013年ってまだライブハウスに出るアイドルってBiSくらいしかいなかったけど、その時点でBiSはすごい売れてたから共演することもなくて、ライブハウスでバンドの中に放り込まれることが多かったから、一見アイドルっぽいけど、アイドルじゃないことがわかるように自分でサムいキャッチコピーをつけるしかないなと。


姫乃:私は2009年からその時期も粛々と地下のライブハウスで活動していたんだけど(笑)、たしかに最初の頃はバンドと共演することも多くて、アタックが強くないといけないって気持ちになったなあ。


でか美:あと名前が名前だから。いまはみんな慣れてくれて「ぱいぱいでか美でーす!」って登場してマジメに歌っても大丈夫だけど、当時は結構、なあんだみたいな雰囲気になっちゃうかなあって思ったから、尖ったキャッチコピーにしました。


姫乃:最初はライブハウスでテキーラガールとかもやってたよね。


でか美:やってたやってた。来た仕事はなんでもやってた。


姫乃:そこから活動が安定するまで、どういう大きい出来事があったんだろう。


でか美:バンドが解散してソロになった時、大森靖子さんが「ひとりになっちゃったんだね……」って感じで気にかけてくれて、ディスクユニオンの金野さんを紹介してくれたの。それで「名前が面白いからうちでリリースしよう」ってことになった。


姫乃:私もいまCDのリリースでお世話になっているけど、一事が万事その調子で、面白ジャンキーおじさんだよね。最高。


でか美:しかもそれとは別で大森さんが一緒にCD出そうって言ってくれて『PAINPU』を出したら、ナタリーとかに取り上げてもらえて、『有吉反省会』(日本テレビ系)に呼んでもらえるようになって、そこで金銭的にはかなり安定したかな。ライブもノルマを払ってたのが、チャージバックになって、ギャラになって、テレビに出たことでお金を払わないといけないって思ってもらえるようになったみたい。


姫乃:アイドル業とタレント業でそういう相互作用があるのはいいね。あと流通すると、いままでいかに自分が業界からなかったことにされてたか気がつくよね(笑)。いたよーって思う。2009年からずーーーっと地下にいましたよー! まあ、今もだけど。


でか美:そう。だから私も“芸歴”は、そこから始まったような気がするよ!


姫乃:ぱいぱいでか美の芸名が活動を安定させてくれたっていうのは、すごくいい話だよね。それに大森さんとの出会いがでか美ちゃんにとってすごく大きなきっかけになってるんだけど、最初はハロプロ好きで通じ合ったっていうのが、本当に尊い。ハロプロには入れなかったかもしれないけど、確実にハロプロがでか美ちゃんの人生になってるわけだから。私は未だに大森さんとは面識がなくて、ももちのことも詳しくないのですが、ハロプロが好きだからアイドルを名乗らなかったり、大森さんがやっている弾き語りはやらなかったり、尊敬する人とは別のアプローチをしたいんだなっていうでか美ちゃんのマジメな頑張りが伝わってくるよ。そのモチベーションってどうやって保たれてるのかな。


でか美:最初に好きになったアイドルがハロプロだったし、実は音楽やりたいって思ったきっかけが宇多田ヒカルさんで、テレビに出たら目の前にテレビスターの有吉(弘行)さんがいて。……多分、私がやりたいと思ってることって、全部売れないと叶えられないんだよね。だからだと思う。


姫乃:でも、自分が何になりたくて、何をしたくて、その原動力が何なのかを知っているだけで素晴らしいよね。


でか美:もう大人だからね……。


姫乃:そう、私達もう大人なんですよね……。さあ、最後になんか言い残したことありますか?


でか美:ももちと共演したい!!!!!


姫乃:オーケー、それ絶対書いておきますね。