F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。
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☆1 ニコ・ヒュルケンベルグ
3戦目ようやく初入賞。ストレート速度を確保しつつ、コーナリング・スタビリティを高めるセッティングを見つけたようだ。連続予選7位、レースペースにやや苦しむも9位。この仕事ぶりにアンバサダー役A・プロストも笑顔、一歩前進したワークス
☆1 パスカル・ウェーレイン
胸椎圧迫骨折が厄介なのは痛みが常にあるわけではないのに残り、時々強まることだという。それだけにトレーニングはできない。2戦欠場した理由はそれだ。バーレーンから復帰、チームメイトを凌駕する予選13位、入賞目前11位は大健闘。1月「ROC」での事故がなかったなら、彼とザウバーはすでにポイントを得られていたかもしれない。
☆2 エステバン・オコン
中間チームが新鋭に望むのはまずコンスタントなドライビング。昨年マノー9戦、今季フォース・インディア3戦ですべて完走し連続10位入賞。「いまボクは全戦ポイント獲得が目標」、現実的で謙虚な姿勢がチームに評価されている。これからヨーロッパ・ラウンドで速さをワンランクアップ、それが次の目標。
☆2 フェリペ・マッサ
初戦 2.34秒、第2戦 2.52秒、第3戦 2.34秒、最速ピットストップ賞を連覇するマッサ。以前、ウイリアムズ新人時代のバルテリ・ボッタスに模範プレーを示し、ピットクルーにも刺激を与えたという。サー・フランク・ウイリアムズ氏75歳誕生日に今季ベストタイ6位をプレゼント、チームの大黒柱だ。
☆2 ダニエル・リカルド
高速域でカーバランスが急変化、リヤが“腰砕け症状”におちいるRB13は昨年とかなり違う性格だ。プッシュするのは至難の業だがバーレーンで予選4位進出、決勝序盤でトップ集団に肉薄。与えられた現状のマシンから最大限の走りをつらぬく。
☆3 セルジオ・ペレス
自己ベスト記録さらに更新。33レース完走、13戦連続入賞、これは現在ナンバーワン。バーレーンでは不運な予選18位から1周目に5台抜き、そこから着実に上昇し6位マッサと8秒差。TV画面にあまりとらえられなくても記録がもの語る存在感。
☆3 バルテリ・ボッタス
自分が犯したミスは自分で償う。新人時代からメンタルの強さを秘めていた。中国GPでセーフティーカー走行中にスピン、不用意なミスが騒がれた6日後に初PP(81戦目)、先輩ミカ・ハッキネンは93戦目だった。フリー走行で気になったこと、Tウイングがまた脱落、どうして彼だけに。推測するとハミルトンと異なるラインを通過しているから、あるいはサスペンション設定が違うからか……。共通パーツなのにああなるのは共振現象など原因があるはず。
PPスタート前にタイヤ内圧管理でトラブルがあり、苦戦を強いられたバーレーン。チーム側のミスはピットストップ6秒にも表れ、あげくにチームオーダー発令に従い3位。この2週にさまざまな試練に直面した彼は、強いメンタルで乗り越えていくことだろう。
☆3 ルイス・ハミルトン
上海ではあれほど柔和なスマイルでいたのに、バーレーンのレース後はまるっきり表情が変わった。感情の起伏が表に出るタイプ、ベッテルに7点差を喫した2位は痛い。終盤、ボッタスに譲れというオーダーが出ると意外なところで烈しい抜き方をした。通常なら無難なストレートでかわせばいいのに12~13コーナーで行った。よほど心理的に熱くなっていたと見てとれる。現時点でメルセデスのアドバンテージは激減、予選アタックのPUモードだけは上回っていてもほかは厳しくなっている。
☆4 マックス・フェルスタッペン
雨の上海スタートで見せた技、濡れた路面を“2速”発進でスルスルと加速。ショートシフト気味でつなぎ、前後左右マシンの動きを観察し次々にパス。空間を見抜く瞬間判断、濡れ具合に合わせたアクセルワーク、相手が減速後にブレーキングETC。昔アイルトン・セナがウエットレースで見せてくれた技を思い出す。バーレーンでもスタート直後にリカルドをフェアにパス、あのままブレーキ・トラブルがなければ第3戦の結果はかなり変わっていただろう。
☆4 フェルナンド・アロンソ
抜くテクニックと抜かせないテクニックを同時に駆使、後方集団にチャンピオンがいるとこういうスリリングなレースを我々は堪能できる。しかし、彼自身はもう我慢の限界点、インディ500に参戦する決意を支持する。65年にロータスのジム・クラークはモナコGPを欠場、インディ500で勝った。63年2位、64年リタイア、3年目の挑戦だった。それを思い出すととても難しい参戦だが、彼はレーサーだからこそ決心した。
☆5 セバスチャン・ベッテル
ショート・ホイールベースの機敏な回頭性能がベッテルの好みにはまり、キミ・ライコネンはもうひとつ前後バランスがお気に入りでないようだ。ボッタスから後方乱流を浴びてもコース上の強風のなかでも、ベッテルは自信をもってコントロールしている。11年開幕3戦に優勝・優勝・2位、6年ぶりに上々のスタート。今年レース後にまったく疲労感を見せない彼、SF70H(愛称ジーナ)はとても従順なのだろう。