2017年04月19日 11:54 弁護士ドットコム
何度断っても来るしつこい宗教勧誘を、不法侵入で訴えることはできるのだろうかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、そんな相談が寄せられました。
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相談者によると、ここ数年にわたって、宗教勧誘目的で2人組の女性が家を訪れるのだそうです。彼女たちは、相談者が何度断っても繰り返しインターホンを鳴らし、勝手に門を開けて敷地に入り、玄関のドアをノックします。相談者は「月数回とは言え、ストレスになります!」と怒りをあらわにしています。
門には、ポストへの不要な投函禁止や、勧誘目的でインターホンを押すことを禁止するラベルも貼っていますが、効果は上がりません。証拠のために女性たちを動画で撮影して、警察に相談することも考えているそうです。
断っても宗教勧誘をやめない女性たちに対して、法的な対処をすることはできるのでしょうか。また、相談者は女性たちの動画を撮影することも考えているそうですが、本人に無断で撮影した動画は証拠として有効なのでしょうか。松岡義久弁護士に聞きました。
「相談者宅の敷地に、宗教勧誘目的で立入る行為が『住居侵入罪』に該当するかについては、次の2点が問題となります。
(1)自宅の敷地の立入りも同罪の対象となるのか
(2)宗教勧誘目的での立入りも「侵入」といえるのか
(1)について、検討します。土地が建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に囲障(いしょう。塀や柵のこと)を設置することにより、建物の付属地であることが明示されているときは、建物の囲にょう地として、保護の対象となります。
また(2)についてですが、『侵入』とは、管理権者の意思に反して立ち入ることをいいます。相談者のケースでは、門に勧誘目的でインターホンを押すことを禁止するラベルを貼り、勧誘を何度も断っています。断り方にもよりますが、立入りが相談者の意思に反しているとうかがえますから『侵入』に該当する可能性があります」
相談者は、屋外に監視カメラ等を設置し、証拠集めをしようとしています。
「相手の同意なく行った録音・録画の証拠能力(証拠として認めらえるか)が問題になることはあります。しかし、相談者のケースでは、相手方の自宅内などプライバシー保護の要請が強い場所での録画ではありませんし、状況からして特段、反社会的な手段を用いての撮影とはならないでしょうから、証拠能力は認められると思われます。
警察に被害届け出をすることも可能ですが、まずは、門に、『宗教勧誘目的での敷地内立ち入りを禁止する』旨を明示し、かつ、勧誘された時には、立ち入りを禁止していること、再度行った場合には、警察に被害届け出をすることを伝えれば、犯罪が成立する可能性が高まりますし、また、相手も今後勧誘をしなくなる可能性もあるのでないでしょうか」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
松岡 義久(まつおか・よしひさ)弁護士
横須賀市内(京急横須賀中央駅徒歩5分、裁判所徒歩2分)で事務所を共同経営するパートナー弁護士。京都大学法学部卒、警察庁(国家Ⅰ種)を退職後、2回目で司法試験合格。相続、交通事故、債務、離婚、中小企業、行政のトラブル、顧問など幅広い分野を専門に扱う。
事務所名:宮島綜合法律事務所
事務所URL:http://www.miyajimasougou.com/