2017年のWEC世界耐久選手権第1戦シルバーストンで勝利した8号車トヨタTS050ハイブリッドのセバスチャン・ブエミは、開幕戦での優勝争いが僅差だったことでポルシェを「脅威に感じる」と語った。
開幕戦に、トヨタはコース特性とマッチしたハイダウンフォース仕様のエアロキットを投入。対するポルシェは不利なローダウンフォース仕様を投入していたため、レース前はトヨタが圧倒的有利と予想された。
その予想通り、トヨタはフリー走行からコースレコードを更新する圧倒的なペースをみせ、予選でもフロントロウを独占した。
決勝レースでもトヨタ勢が序盤からワン・ツー体勢を構築したものの、7号車トヨタはマシントラブルに苦しめられたほか、レース中盤にクラッシュ。優勝争いから脱落してしまう。
また、このクラッシュにより導入されたセーフティカーの影響で、暫定トップの8号車トヨタが築いてきたギャップも消滅。ポルシェ勢と接戦を繰り広げることとなる。
そしてレース終盤、2番手につけていた2号車ポルシェは最終ピットでタイヤ無交換作戦を敢行。この結果、8号車トヨタは一時、総合首位の座を奪われてしまった。
最終的には2号車ポルシェよりフレッシュなタイヤを履いていたこともあり、8号車トヨタがレース残り12分でポジションを奪還。6秒173差で逃げ切り、今季初戦を勝利で飾った。
最終スティントで逆転劇を演じチームに勝利をもたらしたブエミは、ポルシェとの僅差だったことを挙げ、トヨタには改善を行う余地があると警鐘を鳴らした。
「僕たちはもう少し(ポルシェより)速いと予想していたから、少し脅威に感じた」とブエミ。
「対策を講じる必要がある。ピットストップでは、ポルシェのほうがはるかに速かったからね。ラップペースにアドバンテージがあるのは良いことだけど、僕たちは給油作業とタイヤ交換作業について、改善するべきだ」
「結局、マシンは速かったし、最終スティントでは(ポルシェより)フレッシュなタイヤを履いていたから、自分たちが有利だということは分かっていた。それに雨が降っている時は、よりダウンフォースがある方が有利になるんだ」
■ポルシェ、「決勝に重点を置いた」戦略が奏功
レース終盤にみせたオーバーテイクについて、ブエミは「あれは唯一のチャンスだった」と振り返っている。
「なぜならポルシェはストレートでは僕たちより速かったし、(2号車ポルシェをドライブしていた)ブレンドン(・ハートレー)は親切なことにスペースを空けてくれていたからね!」
「最後に優勝してから、かなり時間が経ってしまったから、こういっった形でシーズンをスタートできて最高だよ」
一方、ポルシェのチーム代表アンドレアス・ザイドルは、シルバーストンには不向きなローダウンフォース仕様で挑んだにもかかわらず、2台の919ハイブリッドが表彰台を獲得したことを「優勝したかのよう」に感じると述べている。
またハートレーは、最終スティントでブエミを抑え続けるのは不可能だったと認め、「わずか6秒差でフィニッシュできたことに満足している。なぜなら僕たちはこのレーストラックには不向きなエアロキットをつかっていたんだからね」と語った。
「トヨタが予選でみせたペースには少し驚いたけど、僕たちは決勝レースに重点を置いていた。そうすることが(優勝の)チャンスを掴む唯一の方法だと分かっていた」
「セーフティカーは間違いなく有利に働いた。最後にセバスチャン(・ブエミ)がフレッシュなタイヤでコースに戻ってきた時、僕たちはコース上でのポジションを優先することにしたんだ。(ユーズドタイヤで走行した)僕の第1スティントではいいフィーリングを得ていたからね」
「セバスチャンを長く抑え続けることはできなかったけど、いいバトルができた」