WEC世界耐久選手権は4月16日、イギリス・シルバーストンで2017年シーズン開幕戦が行われた。今シーズン、クリアウォーター・レーシングからLM-GTEアマクラスにフル参戦する澤圭太はデビュー戦でクラス優勝を飾った。
今季からWEC全戦に参戦することとなったクリアウォーター・レーシングと澤は、3月中旬に行なったフェラーリ488 GTEのシェイクダウンテストと、4月1~2日のWEC公式テスト“プロローグ”を経て、開幕戦シルバーストンを迎えた。
金曜から始まったレースウイークではオーナードライバーのウェン-サン・モクをはじめ、澤、マット・グリフィンの3名が午後と夕方に行われた2回のフリープラクティスで順調な走りをみせる。
土曜に行われた公式予選はGTEアマクラス4番手となったが、グリフィンがクラストップタイムを記録するなど、翌日の決勝レースに向け弾みをつけた。
6時間におよぶ決勝レースは現地時間、日曜13時にスタートが切られた。61号車フェラーリ488 GTEのスタートドライバーを務めた澤は、序盤の混戦をうまく抜け出し、3番手に順位を上げることに成功する。
61号車はクラス2~4番手を走行しながらモク、グリフィン、モク、とスティントを繋いでいきレース中盤、澤の2度目のスティントを迎える。
そんななか、モクのスティントで入ったセーフティカーランの間の燃費計算に誤りがあることが判明。澤は燃費走行を強いられることとなった。
しかし、チームはフルコースイエロー(FCY)が出る可能性もふまえ、作戦の変更を決断。全開走行に切り替えた澤は上位とのギャップを縮め、最終スティントを担当するグリフィンにバトンを繋いだ。
アンカーのグリフィンは2番手でコースに戻ると、クラストップを走る98号車アストンマーチン・バンテージを猛追し、テール・トゥ・ノーズのバトルの末、オーバーテイクに成功。終盤に61号車フェラーリがクラストップに浮上した。
しかし、期待していたFCYが出なかったため、61号車は最後に給油をしなければならず、ラスト5分でピットインすることに。
61号車は給油を済ませると2番手の直後の3番手でコースに復帰。98号車バンテージ、54号車フェラーリ488、61号車のトップ3台が5秒以内の差で連なるなか、レースはファイナルラップに突入した。
このラップで逆転優勝を狙う54号車が、15コーナーでトップの98号車のインに飛び込むと2台は接触。3番手を走る61号車は接触によってスピンを喫した2台の合間を抜けると、そのままトップチェッカー受け、シリーズデビュー戦でクラス優勝を飾った。
劇的な勝利に「一夜明けたけど、まだ信じられない」と澤。
「チームも僕もWECフルシーズンに向けて妥協なく準備をしてきましたが、まさかこんなにうまくいくなんて……という気分です」
「どういう戦いをしたら勝てるか、というイメージができたのでの、今回は表彰台でOK! と思っていた矢先のことでした」
「チェッカーの直前は映像を見られなくて、タイミングモニターの一番上に自分たちがいきなり上がったときは『マジか! 何が起きた!?』という感じでしたね」
「今回のレースは『何回か表彰台に登る』という当初の目標から『何度か勝って、ダメでも表彰台圏内。チャンピオンを目指す』に変えてもいいのでは? と思える内容でした」
WEC第2戦は5月4~6日、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われる。