2016年シーズンにニッサン陣営が投入した独自兵器がこれ。エンジンルーム冷却器である。
レーシングカーにはラジエターファンがないので、停止状態ではエンジンルーム内に熱気が籠もってさまざまな場所に熱害を及ぼす。ブレーキも同じことで、ブレーキディスクが赤熱した状態で走行を終えそのままにしておくとブレーキ系が熱で壊れてしまう。
そこで、通常、走行を終えたマシンのグリル前やブレーキダクトの前には扇風機のような外部ファンや掃除機型のブロワーを使って風を当てて冷却が行われる。
スーパーGTでニッサン陣営が昨年から投入しているのは、走行後の冷却をシステマチックに行うための冷却器。5個のファンとバッテリーがセットになっており、これをワンタッチでグリルにはめ込む形で置けば、一気にラジエター、ブレーキ、吸気系へ冷却気を送り込むことができる。
ラジエターや吸気系やブレーキ系は発熱の仕方や冷え方が異なるので、5個のファンは3系統に別れており、前面にある3個のボタンでそれぞれオンオフを切り替えられるようになっている。
だから何だ、という話でもあるが、時間の限られたレースの現場で冷却を効率よく行えば、ミスも減りその他に時間を使うことができるようにもなる。
地味ではあるが、「レースでの強さ」は、こうした積み重ねをどれだけ多く思いつきどれだけ多く用意できるかによって鍛え上げられていくものだ。