FIAは新型マシンの登場で速さが増している2017年のWRC世界ラリー選手権に、レギュレーションで平均速度を押し下げる対策は講じないと明かした。
2017年型のWRカーは、エンジン出力の拡大、空力開発の緩和などにより速度が上昇。その結果、第2戦スウェーデンでは平均時速が85マイル(約136キロ)に達するSSが出現し、安全確保のため、一部ステージがキャンセルされている。
この問題を受けて、FIAとWRCに参戦するチームは第3戦メキシコでミーティングを行い、時速80マイル(約130キロ)をステージ平均速度の上限とするべきという案が浮上していた。
しかし、FIAでラリーディレクターを務めるヤルモ・マホネンは、この件に関してレギュレーションを設けて制約をかけるつもりはないと語った。
「平均時速130キロを指標として使用する案について議論した」とマホネン。
「この指標を超えるステージが出てきた場合、状況を注視できるようにしたい。ただ、それだけのことだ」
「これはレギュレーションではない。SSを時速130キロ以下にしなければいけないというルールは存在しないよ」
■ドライバーから常識的対応望む声。「もっとも重要なのは観客の安全」
一方ドライバーたちは、より常識的な対処法を求めている。
シリーズ4連覇中のセバスチャン・オジエは「平均速度も重要だが、各ステージごとの状況を考慮に入れるべきだ」とコメントしている。
「高速ステージが危険なステージになってはいけないんだ。確かに歩いている時より、走っている時に転んだほうが大きな怪我をしてしまうけど、平均スピードはあくまで要素のひとつだ」
また、あるドライバーは平均速度に固執しすぎることで、本当の問題が見えにくくなる危険性があるとも述べている。
「平均速度が低ければ安全、というのであれば、(コーナーが連続するテクニカルラリーの)ツール・ド・コルスはもっとも安全なラリーのはずだ。しかし、残念ながらそうはなっていない」
「それに雨が降れば平均速度は自然と下がるから、競技はより安全になるはずだよ」
「もっとも重要なのは観客の安全を確保することだ。特に(昨年、観客の安全確保で問題視された)ポーランドなどではね。プロモーター側が注力するべきなのは、ここ(観客の安全確保)だよ」
また、シリーズ屈指の高速イベントとして知られるラリー・フィンランドは、テレビ中継のスケジュールを優先して2017年のルート案を構成。その結果、昨年よりも平均速度が上がると予想されている。
しかし、マホネンは主催者側に人工的にシケインを設けるといった安易な策は取らないよう求めているという。
「シケインを設置してもSSが安全になるわけではない。ただ、直線スピードが低下するだけだ」
「この3年間、我々が主催者側と共同で取り組んできたのは、これまでとわずかに異なるルートを設定することで、平均速度の上昇を抑制することなんだ」
「2016年のラリー・フィンランドは史上最速とも呼べるラリーだった。私はイベント終了から2日後に主催者側へ『(ラリーの高速化は)もう充分すぎる』とメールを送ったよ」
「私は彼らに平均速度を引き下げるルート案を提出するよう求めた。だから、今回彼らが発表したルート草案にはがっかりしている」
「さらに、(ステージに含まれる)フィンランド・ユバスキュラにはまだ雪が残っていて、実際にルートを視察することもできない。主催者たちは時折、狭い視野で物事を判断してしまい、周りからの賛同を得られなくなってしまうことがあるんだ」