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完全復活を遂げた愛されるドライバー“ヒンチ”。母国の英雄たちと肩を並べる勝利

2017年04月17日 17:23  AUTOSPORT web

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インディカー第2戦ロングビーチで2年ぶりの優勝を飾ったジェームズ・ヒンチクリフ
2017年シーズン第2戦ロングビーチで優勝したのはカナダ出身のジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)だった。

“ヒンチ”のニックネームでファンにもドライバーの間でも愛されている彼は、一昨年のインディ500でのプラクティス中に瀕死の大ケガをした。

 ウォールにヒットした衝撃でモノコックタブを突き抜けたサスペンションアームが彼の大腿骨と骨盤の繋がる辺りに刺さり、多量の出血をしたためだった。しかし、インディカーのセイフティクルーたちの的確な判断と迅速な処置、そして病院搬送といった一連の対応の良さによって一命をとりとめた。

 15年シーズンの半分以上を欠場したヒンチだったが、翌年は開幕戦から現役に復帰し、恐怖感を抱いても不思議のないインディ500でポールポジション獲得という快挙を成し遂げた。


 これで復活ストーリーの第1章が完成された。しかし、2016年シーズン中の優勝はならなかった。グランプリ・オブ・インディとトロントで3位。テキサスで2位と3回表彰台に上ったのは見事だったが……。

 2016年にはホンダのエアロキットが大幅に設計変更され、ユーザーチームは対応に追われながらの戦いとなっており、正直苦戦をしていた。それが、1シーズンを戦って実戦的なデータを集め、オフになってからも深く研究を重ねた結果、2017年シーズンにはライバルのシボレー勢を上回るパフォーマンスを発揮するまでになっており、2戦目にしてヒンチは優勝も飾った。

 それも、インディ500に続くビッグイベントのグランプリオブロングビーチだ。これでヒンチは完全復活を成し遂げた。


 早口でおしゃべりなヒンチは、ユーモアのセンスに溢れている。それももちろん彼が人気を集める理由の一つなのだが、やっぱりいちばんの魅力はレーサーとしての才能だ。ヒンチは冷静に状況を分析し、必要とあればファイターになれるドライバーなのだ。

 インディカーとチャンプカーが分裂状態を脱した2008年、まだフォーミュラ・アトランティックに出場していたヒンチは、架空の都市=ヒンチタウンの“市長”を名乗ってインターネットで自らのプロモーション活動を展開し、参戦資金を集めていた。そうした地道な努力でファンも獲得して来ている彼は、今もパドックで乗るスクーターにヒンチタウンのナンバープレートを付けている。


 資金的な不利もあってか、アトランティックでもその上のインディライツでもヒンチはチャンピオンにはなれなかった。それでも才能を認められ、インディカーへは名門ニューマン・ハース・レーシングからデビュー。トップ10フィニッシュ7回(ベストフィニッシュの4位が3回とルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

 翌12年からはアンドレッティ・オートスポートに起用され、2013年にセントピーターズバーグ、サンパウロ、アイオワで優勝した。しかし、2015年シーズンを迎えるにあたってチームが彼のマシン用のスポンサーを喪失。行き場を失いかけたが、シュミット・ピーターソン・モータースポーツにシートを確保し、ニューオリンズで優勝した。


 デビュー以来レギュラーシートを確保し続けて来た彼は、今回のロングビーチで通算5勝目をマークした。実は、31勝を挙げたポール・トレイシー(PT)を除いて、カナダ出身ドライバーはなぜだか5勝止まりとなるケースが多いのだ。

 ヒンチは言う。

「4勝を挙げた時にグレッグ・ムーアとジャック・ビルヌーブの優勝回数が5回だと聞いた。パトリック・カーペンティアも同じく5勝。彼らと並べたことはとても嬉しい(スコット・グッドイヤーも5勝)」

「グレッグは僕の子供時代のヒーロー。ジャックにも憧れていた。グレッグのチームメイトになったパットにも注目していた。カナダ出身ドライバーとして、僕の担う責任は大きい。PTの勝利数はとても多くて追いつくのは難しいかもしれないが、あと何勝かは挙げたいものだね」

 シュミット・ピーターソン・モータースポーツはジワジワとだが着実に能力を高めている。今年はチャンピオン争いへと絡んでいく可能性十分だ。