4月16日午後6時、バーレーンGP決勝は陽の落ち人工照明の下でスタートの時間を迎えた。この日は週末の中で最も涼しく、日中も気温は30度にも達せず、決勝開始時のコンディションも気温24度、路面温度30度。これによって金曜・土曜よりもタイヤのデグラデーションは小さくなることが予想され、スーパーソフトのタレが小さいようなら1ストップ作戦も視野に入ってくる。
予選でトラブルに見舞われたフェルナンド・アロンソとカルロス・サインツJr.は、スペアとして用意されていたコンポーネントに丸ごと交換し、ICE、TC、MGUH、MGU-Kを新たに投入している(サインツのMGU-Kのみ3基目、それ以外は今季2基目)。そして金曜に二度のMGU-Hトラブルに見舞われたストフェル・バンドーンは、スターティンググリッドについたもののトラブルが再発しピットガレージに押し戻されてスタートを取りやめることとなった。
それ以外にグリッド降格ペナルティなどはなく、予選順位通りのスタート順となった。マーカス・エリクソンだけがソフトタイヤ、それ以外の全車がスーパーソフトでスタートに臨んだ。
ポールポジションのバルテリ・ボッタスは無難な加速で首位を守り、発進加速が鈍かった2位ルイス・ハミルトンを3位セバスチャン・ベッテルがターン1手前で早々にパスして2位に浮上。
その後方はマックス・フェルスタッペン、ダニエル・リカルド、フェリペ・マッサと続き、キミ・ライコネンは7位まで後退してしまった。ダニール・クビアトはターン8、ターン13で弾き出されるようにワイドになり18位まで後退、13番グリッドスタートのパスカル・ヴェアラインも混乱の中で17位まで後退してしまった。
スタート直後は首位ボッタスを2位ベッテルが0.5秒差で追いかけ回す展開。しかし3位ハミルトンもこれに加わって3台によるトップ争いとなり、レッドブル勢も大きく離されることなく上位集団についていく。
少し離れてマッサとライコネンの6位争いで、ライコネンは8周目のメインストレートでDRSを使ってようやくマッサを攻略して6位に上がる。8位ニコ・ヒュルケンベルグ以下はこれについていくことはできない。
やがて首位ボッタスを先頭に5台のトレインとなり、フェルスタッペンは「僕らの方が速いのにスタックしている!」と訴えるほどボッタスはペースが伸び悩む。メルセデスAMGはリヤのグリップ低下に苦しむボッタスに対し「リヤの内圧が高すぎるんだ」と問題を指摘する。
これを見たベッテルが10周目にピットに飛び込み、スーパーソフトに交換してアンダーカットを狙う。翌11周目にフェルスタッペンもピットに飛び込むが、ピットアウトした次のターン4でブレーキトラブルに見舞われて真っ過ぐコースオフしリタイアを余儀なくされてしまった。
ほぼ同時にターン1でランス・ストロールとサインツJr.が接触し、ストロールのマシンがコース上に止まったためセーフティカー導入。これでメルセデスAMG勢、リカルド、マッサなどほぼ全車がピットに殺到する。
メルセデスAMG勢のピット作業が2台同時になったうえにともに6秒台と遅く、順位は首位ベッテル、2位ボッタス、3位リカルド、4位ハミルトン、5位マッサの順になる。以下はライコネン、ヒュルケンベルグ、そして1セット目のソフトタイヤのままステイアウトしたエリクソンが8位に浮上してきた。
リスタートと同時にベッテル対ボッタスの激しいバトルが繰り広げられるが、ターン4でイン側を守ったベッテルが首位をキープし、そこからはファステストラップを記録しながら一気に2位ボッタスとの差を広げていく。
その後方ではソフトタイヤを履いたリカルドのペースが上がらず、ハミルトン、マッサ、ライコネンが次々とパスしていく。
上位勢ではそれ以外にハミルトン、マッサがソフトタイヤを履いている。ハミルトンは13周目のピットインの際に、同時ピットインのロスを最小限に抑えるためにピット入口で必要以上のスローダウンをしたとして5秒加算ペナルティを科せられる。
ハミルトンは「首位ベッテルに逃げられたくない」と1秒前方を走る2位ボッタスのペースアップを懇願するが、チームは順位の入れ替えは行なわない。ようやく27周目にハミルトンが前に出るが、その間に首位ベッテルはじわじわとメルセデスAMG勢との差を広げて5秒台にまでリードを拡大してしまった。
ボッタスは30周目にピットインしてソフトタイヤに交換。ベッテルはタイヤがタレ始めた33周目にピットに飛び込んでソフトタイヤに換え、4位リカルドの前でコースに戻った。
ベッテルはすぐに3位ライコネンもかわし、1分34秒004のファステストラップを記録して首位ハミルトンとの差を15秒からさらに縮めていく。
ハミルトンは41周目まで引っ張ってピットイン。5秒ペナルティをここで消化し、8.9秒の静止時間でソフトタイヤに交換してボッタスの10秒後方3位でコースに戻った。
順位は首位ベッテル、2位ボッタス、3位ハミルトン、4位ライコネン、5位リカルドのトップ5。中団は6位マッサ、7位セルジオ・ペレス、8位ロマン・グロージャン、9位ヒュルケンベルグ、10位エステバン・オコンとこちらも接戦となっている。
ハミルトンはここからファステストラップを連発して前の2台を猛追する。首位ベッテルより1周あたり1秒以上速いペースで追うハミルトンは、47周目にボッタスに追い付きターン13でインに飛び込んで鮮やかにパスして2位に浮上してさらにベッテルとのギャップを縮めていく。
しかし、ベッテルもバックマーカーにぶつかりながらも巧みにペースをコントロールし、ハミルトンを寄せつけない。そのまま57周を走り切り、ベッテルが今季2勝目を挙げた。ハミルトンは6秒及ばず2位。ボッタスは最後にライコネンからの追い上げを受けたものの、凌ぎきって3位表彰台を獲得した。
以下は4位ライコネン、5位リカルド、6位マッサ、7位ペレス、8位グロージャン、9位ヒュルケンベルグ、10位オコンのままでフィニッシュ。11位には1ストップ作戦でクビアトを抑え切ったヴェアラインが入った。
フェルナンド・アロンソは最後までウェーレインと11位を争っていたが、最後は54周目に「エンジントラブルだ!」とスロー走行でピットに戻りリタイア。14位で完走扱いとなった。