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個性派俳優・藤原竜也、地味な男をどう演じる? 湊かなえ原作『リバース』の挑戦

2017年04月15日 18:22  リアルサウンド

リアルサウンド

 湊かなえ原作のミステリー小説を原作にしたドラマ『リバース』が、4月14日より放送を開始した。2008年に小説『告白』で作家デビューし、これまで発売した20冊の小説のうち15作品が映像化している湊かなえ。本作が第37回吉川英治文学新人賞候補にノミネートしたほかにも、湊かなえ作品は様々な文学賞を受賞している。デビュー10周年には47都道府県サイン会ツアーを開催するなど、彼女のファンは全国に大勢いる。そんなファンたちがドラマを観る上で一番に考えるのは、自身のイメージする作品とドラマがどれだけ乖離していないかということだろう。


参考:ドラマ『リバース』鍵を握るのはいびつな“愛”?


 本日『サワコの朝』(TBS系)に出演していた湊は、ドラマ『リバース』放送開始について、「藤原さんが、地味な自信のない人物をどんな風に演じられるのか」と、本作のポイントを話していた。藤原竜也は、主人公である深瀬和久を演じる。深瀬は事故死した友人、広沢由樹(小池徹平)の秘密を隠し続けていて、大学時代の仲間たちである浅見康介(玉森裕太)、村井隆明(三浦貴大)、谷原康生(市原隼人)の間には、様々な不可解なことが起こるというミステリー作品である。ほかにも深瀬の恋人である越智美穂子(戸田恵梨香)、10年前の事件を追い続けるジャーナリスト小笠原俊雄(武田鉄矢)と、一人ひとりが主演を務められるほどの豪華キャストが周りを固める。スタッフはこれまで湊のドラマ『夜行観覧車』(TBS系)『Nのために』(TBS系)を担当してきた脚本家、音楽、演出家、プロデューサーが揃う。これ以上のスタッフは考えられないだろう。


 湊が話す通りに主人公の深瀬は、地味でつまらない人生を送ってきた冴えない男。10年前に起きた事件から、目を背けて生きてきた。深瀬は越智と運命的な恋に落ち、幸せの絶頂に。そんな深瀬の自宅に「人殺し」という張り紙、そしてジャーナリストの小笠原が現れ、やがて恋人の越智も巻き込まれることになる。誰もが驚く想像力で物語を展開していく湊の作品では、人の心に潜む悪が描かれている。「僕の親友を殺したのは誰だ?」というドラマのキャッチコピーが示す通りに、今作での“悪”とは広沢を殺した犯人で、それと対峙するのが深瀬となる。「相手がなにで一番ダメージを受けるかとか考えるのってワクワクするじゃないですか。この人を追い詰めるためにはどんなことを言ったらいいのかなとか考えるのが好きなので」という湊だけに、深瀬にはその心を引き裂くほどの試練が与えられるのだろう。


 藤原と戸田の共演は映画『デスノート』以来、約10年ぶり。夜神月は藤原の代表される役の一つでもあるが、彼の役のイメージと言えば、熱のこもった常軌を逸した役が多い。藤原にとって、深瀬は今まで演じたことのない役である。藤原は冴えない深瀬を、作品に溶け込むかの如く演じている。原作では描かれていない深瀬と越智の出会いのストーリーは、彼の不器用さを忠実に描きながら同時に自然な思いやりの心も示している。映画館の席で後ろの親子のポップコーンを頭から被るも、深瀬は怒りもせず自分のポップコーンを差し出す。そのシーンは、彼の優しさを上手く表現しているように思う。


 2人の馴れ初めシーン然り、今回のドラマでは小説が終わった後のシーンが新たに描かれることを湊は明かしている。原作ファンの期待を裏切らずに、キャスト、スタッフがどのような『リバース』を描いていくのかが、このドラマの鍵と言えるだろう。(渡辺彰浩)