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欅坂46、なぜ「不協和音」が表題曲なのか? 5形態全7曲で表現されたグループの現在

2017年04月15日 16:32  リアルサウンド

リアルサウンド

欅坂46『不協和音』Type-A

【参考:2017年4月3日~9日のCDシングル週間ランキング(2017年4月17日付)】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2017-04-17/)


 2017年4月17日付の週間CDシングルランキングで、1位となったのは欅坂46の『不協和音』。初週で約63万枚を売り上げ、前作『二人セゾン』の初週約44万枚を大きく上回る結果となりました。そして、2016年のデビュー・シングル『サイレントマジョリティー』以来4作連続の首位獲得です。


(関連:欅坂46 平手友梨奈はセンターの重圧をどう乗り越える? 乃木坂46 生駒里奈の歩みと比較考察


 とはいえ、初めて「不協和音」を聴いたときには、欅坂46の新曲だとはにわかには信じがたいものがありました。イントロから全編で鳴り響くシンセサイザー然とした音に驚かされたのです。「二人セゾン」の洗練度の高さには圧倒されたものですが、「不協和音」ではアコースティック感を重視してきた欅坂46らしくないサウンドが届けられたわけです。


 しかし、MVを見ると一転して「最高!」となるのが欅坂46。「二人セゾン」も手掛けた新宮良平監督のもと、TAKAHIROの振り付けによるダイナミックなダンスを踊っている姿には一気に引き込まれました。


 そんなわけで、「不協和音」は視覚的な要素の有無で大きく印象が異なる楽曲です。音源だけを聴きながら誰が作ったのかと確認してみると、作編曲はバグベア。そう、「サイレントマジョリティー」を作曲したユニットなのです。ただ、「サイレントマジョリティー」の編曲は久下真音だったのに対して、「不協和音」ではバグベアが編曲もしている点が異なります。


 「不協和音」のAメロ、Bメロは、実はかなりダンス・ミュージックを意識しているサウンドです。ボイスの挿入の手法などもそれを確信させます。EDMを意識しつつ、そこへ踏み込むのは思いとどまったかのような、微妙な塩梅のサウンドなのです。そしてサビはJ-POP的。結果として、サウンドのドラマティックさが強い印象を残します。


 それに対して、カップリングの「欅&けやき坂組」による「W-KEYAKIZAKAの詩」は、従来の欅坂46らしさを感じさせます。吹奏楽器の音色が響くなか、サビではしっかりキックが入ってくるサウンド。<欅坂 けやき坂>と繰り返し歌っていることからも、グループにとって重要な楽曲であることがうかがえます。


 さらに通常盤のカップリングの「エキセントリック」は、突然のラップナンバー。四つ打ちのキックにピアノの響きが乗るエレガントな雰囲気のトラックです。


 「不協和音」「W-KEYAKIZAKAの詩」「エキセントリック」の3曲を比較して、表題曲を「W-KEYAKIZAKAの詩」にするぐらいの冒険をしても良かったのではないかとも考えました。しかし、現在の欅坂46としては、より緊張感があり、よりフィジカルさを押し出せる楽曲として「不協和音」を選択したのでしょう。そこには「今、失敗は許されない」という決断も感じました。


 他のカップリング曲も非常に粒ぞろいなので触れたいと思います。初回仕様限定盤 TYPE-Aのカップリングは、「てち&ねる」(平手友梨奈&長濱ねる)による「微笑みが悲しい」。ストリングスの音色と厚いコーラスに包まれたオールディーズ風の楽曲で、エレキギターの音色も1960年代風です。サビのメロディーの美しさは、今回の「不協和音」関連楽曲の中でも屈指のものです。


 「ゆいちゃんず」(今泉佑唯&小林由依)による「チューニング」は、初回仕様限定盤 TYPE-Bのカップリング。このユニットらしいノスタルジックなフォーク歌謡です。冒頭での歌い回しには、ボーカリストとしての成長ぶりを感じました。


 初回仕様限定盤 TYPE-Cのカップリングは、「青空とMARRY」(志田愛佳、菅井友香、守屋茜、渡辺梨加、渡邉理佐)による「割れたスマホ」。ブラスの音色は1970年代の歌謡曲を連想させますが、歌詞では「ディス」「スマートフォン」といった現代的な単語がキーワードになっています。歌詞とサウンドの時代性に意図的にギャップを作った楽曲でしょう。


 けやき坂46による「僕たちは付き合っている」は、初回仕様限定盤 TYPE-Dのカップリング。ピアノの響きの存在感の大きいアコースティック感覚の強い楽曲で、サビでの裏打ちも軽快です。そして、キラキラとした音色のキーボードのアクセント的な使い方は、「不協和音」と対照的だとも感じました。


 今回の『不協和音』でリリースされたのは、全5形態で7曲。クオリティが高い楽曲ばかりの中で、なぜサウンドのカラーが異なる「不協和音」が表題曲となったのか? その理由を考えながら聴いてみるのも一興でしょう。(宗像明将)