2017年04月15日 16:22 リアルサウンド
ドラマ『リバース』(TBS系/金曜よる10時)が4月14日、いよいよ初回放送を迎えた。
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“イヤミスの女王”として知られる湊かなえの同名小説を原作とする『リバース』は、藤原竜也、戸田恵梨香、市原隼人、武田鉄矢をはじめとした豪華キャストたちが演じるとあって、放送前から大きな注目を集めていた。プロデューサーや監督などの製作陣には『夜行観覧車』(2013年)、『Nのために』(2014年)で湊作品を良質なミステリードラマとして世に送り出してきたチームが集結。これが面白くならないわけがない。
すべては、地味でつまらない人生を送ってきた・深瀬和久(藤原竜也)が、たった一人の親友・広沢由樹(小池徹平)を10年前に失ったことから始まっている。現在は社会科教師の浅見康介(玉森裕太)、県議会議員秘書の村井隆明(三浦貴大)、大手商社マンの谷原康生(市原隼人)といった、ゼミ仲間と大学時代に行ったスノボ旅行中に起きた事故が広沢の死と関係していて、彼らはその時の“秘密”を共有する仲でもあるのだ。そして、久々に再会を果たすこととなった彼らの前に、広沢の死を思い起こさせる数々の出来事が起こる。深瀬は仲間や大切な人を守るため、事件の真相と向き合っていく決意をするのだが……。
湊かなえのミステリーと言えば、「真実だとしても知らないほうが幸せだったかもしれない」と感じてしまうような、人の心の奥底に眠る闇が露わにされていくところが最大の特徴だ。感情や意思のすれ違いで起こってしまった悲劇が描かれることが多く、複数の登場人物の視点によってさまざまな解釈が生まれる。何が正義で何が悪なのか……と、救いようのないもどかしさを感じることも少なくない。様々な人間関係が交錯する今回の『リバース』でもそういった要素がストーリーを大きく左右していきそうだ。
前述した藤原竜也演じる深瀬と“秘密”を共有する大学時代の仲間たち、深瀬の行きつけのコーヒー店店員・乾恭子(YOU)と圭介(バッファロー吾郎A)、そこで運命的な出会いを果たし、深瀬の恋人となる越智美穂子(戸田恵梨香)、広沢の死の真相を追うジャーナリスト・小笠原俊雄(武田鉄矢)、広沢の母・昌子(片平なぎさ)、広沢と谷原の過去に関係していそうな村井の妹・明日香(門脇麦)、浅見が務める学校の生徒や教員、村井の父であり県議会議員の村井明正(村井國夫)など、初回からあらゆる事情を孕んでいそうな人物たちの登場で賑わった。これまで『少女』や『告白』、『夜行観覧車』など女性を中心とした人間関係にフォーカスをあてたものが多く実写化されてきた湊かなえ作品だが、今作は男性を主人公として、友情や絆を軸に物語が描かれている。現在学生生活を送っている人はもちろん、かつて学生時代を過ごした多くの人々も共感できるストーリーではないだろうか。
そして、第1話のラスト、深瀬が10年前の出来事を“リバース”する印象的なシーンで流れたのがシェネルが歌う主題歌「Destiny」だった。結婚式の定番ソング「ベイビー・アイラブユー」(TEEの英語カバー)や「ビリーヴ」(映画『BRAVE HEARTS 海猿』2012年)、「Happiness」(ドラマ『ディア・シスター』2014年)などの楽曲であらゆる愛の物語を彩ってきたシェネル。作家デビュー10周年を迎える湊かなえ同様、今年でデビュー10周年を迎える彼女が、今作のようなヒューマンミステリー作品で主題歌を担当するのは極めて珍しい。しかし、この起用からも『リバース』の鍵となるのは愛であることがわかる。さらに、本日公開されたドラマの映像を使用した同曲のティザー映像を見ると、歌詞と物語の直接的なリンクを感じ取ることができるだろう。友情や愛情、家族愛、夫婦愛……それらが複雑に絡み合って、過去と現在を繋いでいく。湊かなえ作品の大きな“罪”の裏には、いつもいびつな“愛”が潜んでいるが、「Destiny」では<罪と罰 愛の定義さえ 人が決めるものよ>と歌われる。今作の結末に待ち構えているのは、果たしてどのような“運命”なのだろうか。期待と畏れを抱きながら、物語の行く末を見守っていきたい。(久蔵千恵)