2017年04月15日 09:53 弁護士ドットコム
国や企業で、働き方改革の議論が進む中、フリーランスへの関心をもつ人たちが増えている。場所や時間に縛られずに自由に働くことができるメリットがある一方で、労働法の枠外に置かれる不安も抱える。こうした中、1月には「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」が設立された。
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設立から3日間で、1500人のメルマガ登録があり、その数は4月初旬には、2000人くらいにまでふくらんだそうだ。フリーランス協会の共同代表理事の平田麻莉さんによれば、フリーランスが抱える課題の1つが、社会保障の手薄さであり、協会では4月中にも保険商品について発表する予定だという。協会設立の狙いや、フリーランスが抱える課題について、平田さんに話を聞いた。
ーーフリーランスへの関心が高まっていますね
協会として、無責任にフリーランスを推進しているわけではありません。向き、不向きは絶対にあります。増えているとはいえ、「会社員として働き続けることができなかったから仕方なく」という人もいる。自発的なフリーランスであれば、価格のミスマッチもないと思いますが、実力不足で独立すれば、単価が下がりがちです。
しかし、会社員の働き方改革が進めば、この問題は、解決できると思います。週3日勤務やリモートワークなど、多様な働き方が認められることで、辞めずに働き続ける方法が見つかるかもしれません。フリーランスは誰にとっても適した働き方というわけではなく、本当は雇用システムに守られていたほうがいい方もいるのではないかと思います。
ーーそもそも、どういう人を「フリーランス」として定義されているのでしょう
仕事という認識で、プロとして働いている人ですね。副業、パラレルでやっている人も含まれると思います。
クラウドソーシングサービスを運営する「ランサーズ」の調査によれば、フリーランスは日本で1122万人までふくらんでいます。現在は、様々なマッチングプラットフォームができて参入障壁も下がり、フリーランスデビューをしやすい時代です。広報、人事、経理などの専門職、ビジネス職も増え、職種も多様化しています。
ーー女性のフリーランスが増えてきている印象があります
フリーランス協会の登録数でいえば、男性が7割くらいです。実際にはフリーランスとして働いていても、配偶者の扶養に入っていたり、フリーランスという肩書きがピンときていないといった背景もあるのかもしれません。
ーー女性のフリーランスが気をつけるべき点はあるのでしょうか
子育てと両立したいからフリーになる、という人もいらっしゃいます。カラーセラピスト、チャイルドマインダーとか、色々な資格が流行っているのですが、お客さんとしてママ友をまわったら終わってしまい、稼ぎ続けることが難しくなる人もいます。
フリーランス協会では、フリーランスに関する実態、いい面、悪い面、課題があるということも、あえて包み欠かさずに発信して、ひとりひとりに選択してもらいたいと考えています。覚悟を決めてフリーランスになる人にはサポートする仕組みを作る。そして、会社員が性に合っている人には雇用システムの中にそっと押し戻してあげることも必要かと思っています。
ーー登録している方は、どのような職種が多いのでしょうか
一番多いのが、エンジニアで、全体の3割くらいをしめます。その後、デザイナー、ライターとなります。コンサルも意外と多いですね。人生100年時代なので、定年退職後や少し早めにリタイアした後に独立し、自分の好きなことをやろうとフリーランスになる方もいます。
ーーフリーランスからは、どんな課題があがっているのでしょうか
仕事獲得の不安、ネットワークの欠如、社会的信用不安、社会保障の手薄さ、キャリアアップの難しさ、間接スキルでの苦戦の6つですね。間接スキルでの苦戦とは、専門の仕事についてはできても、法務や経理に関しては疎いことで課題のことです。会社員と違って、カバーしてくれる人はいないので。
ーー社会保障については、具体的にどのような不安があるのでしょうか
雇用保険がない、労災保険がない、傷病手当がない、といった社会保障の薄さが問題です。例えば、産休、育休、介護休業制度はありません。そのため、産後すぐに復帰せざるを得ないという声も聞かれますが、働き方によって不利益があるのはおかしいのではないでしょうか。
ーー協会で、フリーランスに向けた保険を作る予定と報じられていました
現在、構想段階ではありますが、アイデアとして検討しているのは、次の4種類です。
・損害賠償保険(著作権侵害、情報漏洩、対物対人の物損)
・病気や怪我の際の所得保障
・妊娠、出産、介護休暇による所得保障
・発注主の不備による支払い遅延による収入保険
このうちのいくつかは既に保険会社と詳細を協議しており、4月下旬に発表予定です。
ーー他にも動きはあるのでしょうか
互助の場を作ることですね。職種、エリアごとのイベントを開催して出会いを作り、ゆるいユニットを作っていきたい。また、実際にどういう人が、どういう年収で、どういう働き方をしているかなどを集計し、フリーランスの実態を伝えていきたいと考えています。
また、報酬についても、適切価格を協会で提示したいという話も出ています。ウェブライターはとくにデフレを起こしていますが、ライターは裾野が広がりすぎています。認定制度のようなかたちで、このくらいの相場ですよ、と提示していきたいと考えています。
また現在は、メルマガ会員としての登録ですが、今夏くらいから、会費制の正会員募集を始めていく予定です。
(弁護士ドットコムニュース)