2017年04月14日 18:22 リアルサウンド
仮面ライダーシリーズが輩出してきた人気俳優は数知れないが、ハードボイルドな世界を意識した『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)で主演を務めた桐山漣もそのひとり。同作は菅田将暉とのW主演によって人気を博した。その桐山が、テレビ東京の深夜ドラマ『コードネームミラージュ』でふたたびハードボイルドな世界に帰ってきた。感情を出さないクールな主人公役ではあるが、その内に、桐山自身の持つ熱を感じさせる作品になる可能性がある。
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4月8日から放送を開始した挑戦的なプロジェクト『コードネームミラージュ』は2クール、全15話にわたって放たれる大型企画だ。『サクラ大戦シリーズ』、『魔神英雄伝ワタルシリーズ』の広井王子が原作を務める完全オリジナル作品で、過去の任務によって脳の一部を損傷し、感情と記憶を失った主人公のミラージュ/森山真一(桐山)が、警察内の特殊部隊K13のトップエージェントとして表だっては解決できない犯罪を秘密裏に処理していく。
人並み外れた身体能力を持つミラージュを演じるにあたり、ボディアクションやガンアクションを1から叩き込んでいったという桐山。殺しのプロとして徹底して無駄のない、近接格闘術によるファイトスタイルに挑戦している。
第1回目から最新VFXを駆使し、色調を落とした画面とこだわり抜かれた音楽をバックに、美しく任務を遂行してみせた桐山。過去を無くしたミラージュはほとんど言葉を発しないキャラクターであり、殺しの動きと瞳の感情に表現が集約される難しい役柄。しかし高級スーツとメガネ姿という女性ファンを惹きつける外見もプラスとなり、初回から主演としての存在感をいかんなく発揮した。物語はまだまだ謎だらけだが、ミラージュ自身の謎についても本作の魅力だと桐山自ら語っている。強烈なオーラを放つ敵役・武田真治との、この先に待つ直接対決も楽しみだ。
さて、『仮面ライダー』出身俳優と聞くと、最初から華々しい道を歩んできたと思いがちだが、桐山は役者になるために、長い下積みを重ねてきた人物である。アルバイトに明け暮れながら、演技レッスンを続け、いくつものオーディションに落ちながらも「見てろよ、大人たち!」と、絶対に夢を実現させてみせると心に誓ってきたという。役者デビューは2006年。『仮面ライダーW』はライダーオーディション5作品目にしてつかんだ。その後は、ライダーのイメージだけでなく、『吉祥寺の朝日奈くん』、『群青色の、とおり道』といった主演映画で自然体の演技も披露してきた。
いわゆる今風の優しげな顔立ちの内側に、強い精神力と反骨心を秘めてきた桐山。今回のセリフをほとんど発しない主人公という枷は、表現を身体に集約させることによって、逆に役者・桐山自身の放つ熱を映し出してくれるのではないだろうか。そしてそれは、30代以降の大人の役者としての幅を広げるきっかけにもなるだろう。やがて国家を揺るがす陰謀に向き合うことになるミラージュ。2クールたっぷり、ハードボイルドな世界観に身を置いた、クールに見えて青い炎のように熱い、桐山の魅力を存分に見せてもらおう。
(望月ふみ)