F1のモータースポーツ担当マネジングディレクターを務めるロス・ブラウンは、ファンのF1体験の向上を図るために、F1チームの秘密主義的な体質を変え、豊富なデータを一般に公開する計画を持っていることを明らかにした。
ロス・ブラウンは、各チームがデジタルプラットフォーム上で閲覧している膨大なデータが有効活用されていないため、ファンを魅了するチャンスを失っていると考えている。
ブラウンによると、F1オーナーのリバティ・メディアはテクノロジーパートナーのタタ・コミュニケーションズとともにアプリや拡張現実(AR)、仮想現実(VR)を用いてその状況を変えることに取り組んでいるが、実現の鍵は各チームがテレメトリーやシミュレーションデータの公開にオープンになることにあるという。
「リバティはより大きな視点で考えている。ある分野ではチーム同士で対抗意識を持つのをやめようではないか」とブラウンは述べた。
「お互いを打ち負かす必要があることは分かっているが、そうした壁は超えられるし、代わりに我々が求めているのはもっと大きなビジネスなんだ」
「それに全体で行えば、一部の者だけ不利益を被ったり、あるいは利益を得たりするようなことは起こらない」
「チーム無線の時も同じだったのを私は覚えている。各チームは無線での会話を放送されたがらなかったが、今ではチーム無線はレースのとても興味深い側面であり、それを問題視する者はいないだろう」
「実施するにあたって、何がチームの正しい前提条件となるかという点ではまだ我々はアイデアを明確にしていない」
「細々したことひとつひとつについて頼んで回ることはしたくない。我々はこのアイデアを明確にする必要があり、すでにその途上にいる」
「時間は少しかかるだろうが、秘密主義の壁は乗り越えられる」
ブラウンは2013年の終わりにメルセデスを離れてから現在の職務に就任するまで第一線から退いていたが、その間に見えてきたのは、F1には特にレース戦略の情報が欠けているということであったという。
「F1には素晴らしい情報の蓄積があり、我々はそれをファンに対して公開するべきだ。そうすればファンは自身が望むレベルで見てレースを楽しむことができる」とブラウンは付け加えた。
「私は3年の間、テレビ観戦をしていたが、その際、レースで何が起こっているのか深く掘り下げていくことができないのが残念だった」
「私はピットウォールの環境に慣れていた。そこでは情報のすべてがあり、チームの専門家から分析内容を聞かせてもらうこともできた。そうやってレース全体を把握していた」
「いつピットストップを行うかピットウォールでストラテジストが決定するための情報を、自分がすべて見ることができるところを想像してほしい」
タタ・コミュニケーションズはすでに「インターネット」放送のテストを実施しており、それによりF1は「やりたいことはほとんど何でもできるプラットフォームを手に入れた」とブラウンは述べた。
2018年の正式導入を目指して、今年はチームからのさらなるデータを組み込んだテストが実施されるものとみられる。また、F1はグランプリでファンにWi-Fiを提供する予定だ。
「間違いなく実施される」とブラウン。「現在取り組みが進んでいる」
「私が話したように、レースをフォローし、ストラテジーを理解し、ピットストップを決めるといったことを、観客席から自分のモバイル機器でできるとしたら、素晴らしいことになると思わないか?」