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フォーリミ主催『YON FES』が浮き彫りにした、ロックシーンの今

2017年04月14日 13:32  リアルサウンド

リアルサウンド

『YON FES』(写真=Viola Kam (V'z Twinkle Photography))

 04 Limited Sazabysが4月1・2日に『YON FES 2017』を開催。主に2日目の模様から、昨年の初開催から1年後に、彼らの地元・名古屋で引き続き開催された同イベントの魅力を分析する。


(関連:対バンを通じた“仲間意識”が、邦楽ロックシーンの新潮流を生む? フォーリミ主催『YON FES』で感じたこと


 昨年の同フェスは、04 Limited Sazabysと同世代のバンドや後輩バンドが集結し、04 Limited Sazabysを筆頭とした邦楽ロックシーンの勢いを象徴したものであった。しかし今年は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONや東京スカパラダイスオーケストラ、NAMBA69など、彼らにとって先輩にあたるバンドも出演アーティストに名を連ねた。また、Crossfaithやcoldrainといったラウドロックを鳴らすバンドなどがブッキングされ、昨年に比べ音楽のジャンル、そして世代の幅を大きく広げたものとなっていた。


 今回の同フェスで目立っていたのは、多くのバンドが自らのステージに04 Limited Sazabysを迎え入れていたこと。前回も、04 Limited Sazabysが他アーティストのステージに上がることがあったが、そのライブを盛り上げようと自ら登場するような場面が多かったように思う。


 2日目、キュウソネコカミのステージでは、「KMTR645 feat. ネコカミノカマタリ」の演奏中にメンバーが「フォーリミ! フォーリミ!」とコールを巻き起こし、曲の終盤に04 Limited Sazabysがステージに登場。両手で“Q”の字を作るダンスを会場にいる全員で踊って楽しんでいた。ヤマサキセイヤ(Vo/Gt)は「フォーリミ出てくれたね! みんなが呼んでくれたんだよありがとう!」と話し、「僕はサビが高すぎて出ないので、泳ぎます」と言って、04 Limited Sazabysの「swim」を披露。他にも04 Limited Sazabysの曲をカバーしたバンドは多く、Crossfaithは「monolith」を演奏し、GEN(Vo/Ba)がワンコーラスを歌い上げた。WANIMAも同曲を演奏し、GENとKENTA(Vo/Ba)がコラボしてフル演奏で披露した。


 また、GENは、東京スカパラダイスオーケストラのライブをステージ傍で見ていたところを呼び寄せられ「本当にかっこいい先輩バンドマンです」と伝えた。すると、谷中敦(Sax)から「一緒に1曲踊ってってよ。袖にいるアーティストもみんな出てきてよ」と誘い、最後に演奏した「All Good Ska is One」でステージ上にたくさんの出演者が踊りはしゃぐ様子があった。このフェスに訪れたファンと同じように、どのバンドも、04 Limited Sazabysへの愛が溢れたステージを見せていた。


 そして、今フェスで感じたのは、今の日本のロックシーンに、04 Limited Sazabysがどれほど影響を与えているのか、ということ。出演者のステージからは、彼らが後輩として、そして先輩として、バンド仲間の間でどういう存在であるのかが明らかになっていた。


 フレデリックは04 Limited Sazabysとの共演経験も多く、2日目に出演したバンドのなかでは、唯一の後輩バンド。ライブ中、三原康司(Ba)は「俺たちフレデリックにさ、いつでもいつでもさ、今日は良かった、今日は違んかったって正直に言ってくれるんやで。こんなに純粋な先輩おるか」と熱心に伝えていた。後輩たちから見て、04 Limited Sazabysは単に憧れの存在なのではなく、彼らを鼓舞してくれる存在なのだ。


 また、先輩であるNAMBA69の難波章浩(Vo/Ba)は「こんなにすげー環境、こんなにいい天気でこんなチャンスを与えてくれて感謝してます」と発言していた。同フェスに訪れたファンは若者が多く、04 Limited Sazabysから上の世代のバンドのライブを観たのは、初めての人も多かったかもしれない。筆者が見たNAMBA69も東京スカパラダイスオーケストラのステージも、自分たちのライブのスタイルをどこまでも貫き、その音楽に自然と惹き寄せられている人がたくさんいたように感じた。


 GENの「バンド夢ありますね! 俺たち特に特別なものは持ってないですけど、仲間に恵まれてて、みなさんのおかげで輝けてます」という言葉からは、この日のイベントが彼らを中心とした出会いと、信頼で成り立ったフェスであることを強く感じさせた。アンコールでGENは「僕が高校生の頃初めてベースを持って、初めて人前で演奏した曲をやらせてください」とHi-STANDARDのカバー「My First Kiss」を披露。出演者がステージに上がり、途中、難波章浩がマイクを持った。最後に披露した「swim」を演奏する前に「日本のロックシーンに光が指しますように。名古屋の04 Limited Sazabysでした」という言葉が、未だにとても強く響いている。彼らはインタビューで「僕らは去年名古屋を出て上京したんですけど、『YON FES』という居場所、帰る場所を作れたと思ってるんですね」(ナタリー・リンク貼って)と答えていた。バンドがどんなに大きくなり、日本各地や海外、どこでライブをしていても、彼らがスタート地点である“名古屋”を掲げていく姿勢が、バンドの強い軸になっているようだ。


 コラボステージや、出演バンドが04 Limited Sazabysへの想いを語る姿から、普段はステージ裏でしか見えないバンド間の交流や、それぞれが刺激を与えながら今の音楽シーンを動かしていることが明らかになっていた今年の『YON FES』。集合写真の真ん中に写る彼らの姿こそ、04 Limited Sazabysが今、ロックシーンの中心にいることを表している。(大和田茉椰)