フェルナンド・アロンソが今年のモナコGPを欠場して、同日に開催されるインディ500に参戦するという決断を下したことに対し、他のF1ドライバーたちは驚きを示し、F1シーズンの1戦に参戦しないということは自分には考えられないという声が相次いだ。一方で、彼の新しい挑戦に関心を示し、応援する声もある。
12日、マクラーレン・ホンダはアロンソが2017年インディ500に「マクラーレン・ホンダ・アンドレッティ」のエントリーで出場すること、モナコGPを欠場することを発表した。アロンソの代役としてモナコを戦うドライバーに関してはまだ明らかになっていない。
マクラーレン・ホンダとリザーブドライバー契約を結んでいるジェンソン・バトンが起用される可能性が高いとみられており、元同僚で同じイギリス出身のルイス・ハミルトンも、バトンの復帰を期待する発言を行っている。
一方でハミルトンは、アロンソの決断について、F1ドライバーが他のカテゴリーで活動することを支持しつつも、自分ならF1のレースを欠場することは考えられないと述べた。
「僕らはひとつのシリーズにとどまらず、もっと他でも活動することを許されるべきだ。だからそれができることは素晴らしいと思う」とハミルトン。
「でも僕ならF1のレースを欠場したいとは思わない。全戦参戦する必要があるからだ」
「でも、MotoGPはやりたいね。MotoGPのバイクに乗りたい。デイトナ500とかNASCARにも出たい」
2015年にル・マン24時間に参戦し、優勝を飾ったニコ・ヒュルケンベルグは、自分とアロンソとでは全く状況が異なると語った。
「僕の場合は全く違う。彼はある意味、F1から離れるわけだけど、僕はそうではなかった」とヒュルケンベルグ。
「もし(他のレースに出るためにF1を)1戦休まなければならないなら、僕なら絶対にやらない。それがモナコならなおさらだ」
「皆もそうだと思うけど、本当に驚いた」
アロンソはオーバルの経験がなく、ほとんど準備期間のないままインディ500に出場する。ヒュルケンベルグは、自分の場合はそれに比べれば比較的準備を整えた上でル・マンに臨んだと述べている。
「インディのことはよく知らないけど、彼はインディのマシンでオーバルで走ったことが一度もない。いきなり出場して簡単に勝てるものかな? 僕の場合は、少なくとも半年は準備期間があった」
「とてつもないチャレンジに思える。でもフェルナンドはチャレンジが好きなんだよね」
ハースで走るロマン・グロージャンは、自分のチームが参戦するNASCARに出場したいと以前から述べているが、それでもF1に集中したいと述べた。
「僕ならやらないな。今はここでチームのために最善を尽くしている。100パーセントの力を注いでいるんだ」とグロージャン。
「確かにNASCARのレースに出たい。でも(僕の場合は)ハース、あるいは(アロンソの場合は)ホンダというF1プロジェクトにかかわって、チームをトップレベルに押し上げようとしている時には、その方が大事なことだ」
「1戦欠場して『他のレースに出るよ』と言うなんて、驚いたね」
「F1のドライバーがインディアナポリスに出るのはモータースポーツにとって素晴らしいことだけど、まだ仕事が終わってもいないのにやるわけにはいかない。外部の人がどう思うかは分からないが、僕ならやらないということは言える。なぜなら100パーセント(F1に)力を注いでいるからだ」
アロンソの元チームメイト、フェリペ・マッサも自分には考えられないが、アロンソの活躍を楽しみにしていると語った。
「ニコのように、F1のない週末に開催されるル・マンに出るというなら、皆もそれほど驚かなかっただろう。でも、F1の代わりに別のカテゴリーに出場するというのは本当にびっくりした」
「でもすごくいいことだと思うよ。彼のレースを見て、応援するつもりだ。彼が他のカテゴリーでも素晴らしい仕事をするところが見られるといいな。楽しみだよ」
セルジオ・ペレスも「僕ならモナコを欠場したりしない。一年のなかでも大好きな週末だからね」と述べているが、他カテゴリーへの出場には関心があるという。
「他のレースもやりたい。インディカーに興味があるんだ。インディ500は一年のなかで一番のビッグイベントのひとつからね」
ハミルトンは、アロンソがインディ500でどこまでやれるのか興味深いとして、当日はインターネットでレースを見るつもりだと語った。
「(F1とインディカーではレースとしての)性格が全く違う。セットアップ、バンク、リフトの仕方、タイヤの使い方、そういったものを短期間で学習しなければならない。たくさんのことをだ」
「でもフェルナンドは世界で最も優れたドライバーのひとりだ。(インディでも)ベストドライバーになれるかもしれない。ただ、経験が足りない。乏しい経験のなかでどう対処するのか、興味深いね」
かつてマクラーレンの一員で、現在ハースで走るケビン・マグヌッセンは、アロンソの立場に理解を示した。
「彼の状況は分かるから、理解できる行動だよ。すごくいいことだと思う」とマグヌッセンが語ったとロイターは伝えている。
また、アロンソのチームメイト、ストフェル・バンドーンは、バーレーンの木曜記者会見で「他のレースへのオファーを受けたらやりたいですか」と聞かれ、「今年のハンガリーGPの代わりにスパ24時間に出ることに決めているんだ」とジョークを飛ばした後、次のように語った。
「インディ500は戦略が重要なレースだ。去年アレックス・ロッシが、燃料をセーブして勝った。何が起きてもおかしくないよ。フェルナンドはクレバーなドライバーだ。自分のしていることは分かっている。トロフィーを持ち帰れたらいいね。そしたら彼にミルクをプレゼントするよ!」(注:インディ500の勝者はミルクを飲む慣習がある)