「一人ぐらしなんて、人間の幸福の極致じゃないのか?」――田辺聖子の小説、「苺をつぶしながら」の一節だ。バツイチ35歳の乃里子が一人暮らしを謳歌するこの話、夫と子供の世話に明け暮れる筆者は、読んだ当時非常に羨ましかった覚えがある。
先日ガールズちゃんねるに「【独身・彼氏無し限定】もう今更他人と暮らせないなって人」というトピックが立った。トピ主は、彼氏いない歴15年で一人暮らしの30歳。元から家にこもるのも好きだし1人で行動できるタイプで、「もう今更他人と一緒には暮らせない…とひしひし感じています」といい、 同じような人を募っていた。(文:篠原みつき)
「もう実親とさえ暮らせる気しないです」「こんな自由で良いの?世界観が、変わった!」
この呼びかけには、「はいはーい。私もです」と、すぐに共感の声が相次いだ。
「はい!もう実親とさえ暮らせる気しないです」
「一人じゃないと寝られません!」
「仕事は不規則な勤務時間で、寝たい時に寝て、食べたいときに食べて、好きな時間にゴロゴロして過ごした時間が長すぎると。――もう、無理(笑)」
さらには、「となりに誰かがいるのが嫌。友達とも外で逢いたい。遊びにさえ来て欲しくない。他人に入ってほしくない」とまで言う人も。
また、離婚や同棲解消の経験者は1人になった時のスッキリ感が違う。
「ある時!1人なった時、寂しいよりも、こんなに楽なの?こんな自由で良いの?って感じで!!世界観が、変わった!」
「離婚して一人暮らしになって、『なんて楽なんだ』と実感。 ゴハン作るのが面倒なら作らなくてもいいし、毎日洗濯する必要も、アイロンかける必要もない。専業主婦で、旦那のために8年尽くして世話焼いて過ごしてきたのが本当に無駄だったと思った」
など、皆一様に同棲や結婚はもう嫌だと宣言している。よっぽど嫌な相手だったのだろう。
1人の寂しさよりも「自由」の価値が大きく勝る彼女たち。自分の生活リズムができていて、それを壊されるが嫌だ、誰かの面倒なんかみるのはごめんだという本音がどんどん書き込まれ、そりゃあもう納得するしかない。
孤独死とどう向き合うか?1人暮らしよりも「孤立」が問題
しかし一方で、「孤独死に備えて、何をすればよいでしょうか?老後が不安です…」などの声も上がる。これにはすかさず「孤独死ってそんなに怖い? 家族が居たって死ぬ時は一人の人が殆どでは」と、もっともな指摘があった。
2007年にベストセラーになった上野千鶴子氏の「おひとりさまの老後」(文春文庫)には、
「看取る者がないくらいとっくに覚悟はできている」
「腐った遺体が一番やっかいなので、なるべく早く発見してもらえるようにしておく」
という様なことが書いてある。余談だが、孤独死で腐ってから発見されるのは男性に多いそうだ。1人暮らしよりも「孤立」が問題だという。
いい老後への例もいくつか挙がっている。都内の古いアパートに猫と暮らす叔母の話では、
「同じアパートにはオバの友達数人が部屋を借りていて、誰かの家に集まってごはんを食べたり、数日姿を見かけないと部屋を訪ね合うらしい」
とある。遠い家族より近くの友達である。そのほか、美人のバリキャリ知人が40歳目前に7000万円のマンションを購入、体が不自由になったらそれを売って施設に入るというエピソードも。1人で生きることを前提にした人生設計はみごとである。
スレッドには、一切の大きなお世話を吹き飛ばす叫びもあった。
「もう一人が好きなんだよ、最高なんだよ。他人が思うほど寂しくないんだよ。それだけの話だよ」
筆者は、どちらかというと結婚して子どももいたほうがいいという考えなので、本当はこんな、非婚で楽しげな世界を紹介したくはないのだが…。彼女たちを見ていると、経済的に自立できれば女性は一人のほうが幸せかもな…という方に、どんどん気持ちが傾いてしまうのだった。