2016年シーズンを最後にWRC世界ラリー選手権のワークス活動から“電撃撤退”を決めたフォルクスワーゲンは、2018年に向け新規にフォルクスワーゲン・ポロをベースとしたR5規定マシンの開発に着手。「WRC2クラスに向けてのワークス参戦するつもりはない」と前置きはしたものの、ポロR5をカスタマーに向けてデリバリーする意向であることを明かした。
撤退決定の直前まで開発を続けていた新規定WRカー『ポロR WRC』の今季参戦はFIAにより否決される形となっていたフォルクスワーゲンだが、そのフォルクスワーゲン・モータースポーツが新たにR5規定のマシン開発を決定。WRC2、またはERCヨーロピアン・ラリー選手権に向け販売する意向だという。
フォルクスワーゲン傘下のシュコダはファビアR5を使い、ワークスチームとしてWRC2に参戦しているが、フォルクスワーゲン・モータースポーツ代表のスベン・スミーツによれば「我々のR5プログラムは純粋に商業的なプログラムに限定されるだろう」と強調した。
「シュコダとの違いはワークスチームによるフルシーズンのWRC2エントリーを行わないという点だ」とスミーツ。
「我々はポロR5を市場にデリバリーするつもりだ。もちろん、カスタマーに対して(マシンの)競争力をアピールすべく、いくつかのイベントでは有力ドライバーにステアリングを託すことにもなるだろう」
「鍵となる(欧州や中東のような)主要マーケットに向け、いくつかのイベントにエントリーするつもりだ。おそらく1~2戦程度のデモンストレーションを行うだろう」
このフォルクスワーゲン・モータースポーツ製の新型R5カーの開発作業は、すでに先月から開始されており、スミーツによれば今夏までには実走テストに移る計画だという。
「我々はすでにポロR5の設計作業を開始していて、8月か9月にはテストを開始したい。その後、距離を重ねた上で来年の6~7月頃には公認を得るスケジュールを立てている」
■テストドライバーにはマーカス・グロンホルム起用へ
WRC4年連続のマニュファクチャラーズタイトル獲得に貢献したポロR WRCの開発初期段階において、そのテストプログラムの大半を担ったのが、2度の世界王者経験者であるマーカス・グロンホルムだ。そのグロンホルムが、このR5マシンのテストにも“復帰”する予定となっており、すでにシュコダ・ファビアR5での走行を開始したという。
「我々はすでに簡単な打合せをすませている。この後、テスト期間が明らかになれば計画の全体像もより見えてくるだろう」とグロンホルム。
一方のスミーツも、ウイニングカーの開発請負人に全幅の信頼を寄せている。
「彼はポロR WRCの歴史において、そのストーリーの一部となっているが、新たなポロR5に関しても、同様の物語を紡いでくれるだろう」
またスミーツは、フォルクスワーゲンとシュコダの強力なアライアンスが、このR5規定ラリーカーでも有効に作用すると考えており、双方の市販車で採用する新たなプラットフォームの開発にも有益だろうと付け加えた。
「シュコダがすでにファビアR5で蓄積している知見に加え、我々のアイデアやノウハウを注入することでお互いのメリットが倍増するはずだ」
「このプロジェクトの進め方について、我々はすでにオープンな議論を展開しているところだよ」