大学教員といえば、高度な知的労働者というイメージが強い。その分給料も高いだろうと思いがちだが、それはどうやら幻想のようだ。
一橋大学講師の川口康平さんが4月12日、今年夏に香港科技大学に移籍することをツイッター上で発表し、日本と海外の大学での給与差が話題になっている。
香港の大学から2倍以上の年収でオファー「日本円で1500-1600万円です」
「一橋の給与は昨年,各種手当を全部ひっくるめて634万円でした」
川口さんの最終学歴はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、経済学部の博士課程である。同大学は経済学の研究で世界トップレベルの教育機関と言われている。そうした大学で研鑽を積んだ研究者が、一橋大学の講師職では年収600万程度という事実に、ネットユーザーから驚きの声が上がっている。
「ウチの会社のヒラ社員と変わらんじゃんか」
「634???安っ!」
2015年度の同大学講師の年間給与は、最低額が約595万円、最高額が約803万円、平均が約693万円と発表されている。634万円は、同大学の水準として特別安いわけではないようだ。
一方、香港科技大から提示された給与は「USD144K,日本円で1500-1600万円です.最高税率は15%らしいので,手取りの変化率は額面以上になります」と、年収は今の2倍以上になる。さらに、
「大学内にファカルティハウスがあって,年収の10%を支払えば,100平米ぐらいの3LDKに召使い部屋と駐車場が付いた部屋を借りられるそうです.しかも,キャンパス内に保育所が完備されており,子育てもし易いようです」
と、環境の充実ぶりがうかがえる。
「なんとかしないと日本の大学のレベルだだ下がりやで」
一橋大学は、QS版世界大学ランキング・経済学分野において、日本の大学ではトップレベルとされている。しかし、同程度の順位のダートマス大学(アメリカ)のAssistant professorの給与は2014年時点で約8万ドル、現在の日本円にしておよそ880万円に上る。それと比較すると日本の大学教員の給与は確かに低く見える。
ツイッターでは
「いつでもどこでも食ってけるチカラをつけとかないと。日本の大学の先生の給与は安すぎるよね」
「これじゃ人材が流出するばっかりなんだよな…そろそろなんとかしないと日本の大学のレベルだだ下がりやで…」
と、国内の大学教育・研究レベルの低下を危惧する声も多く聞かれている。3月に出された英科学誌「ネイチャー」では、日本の科学研究がこの10年で失速していると指摘されていた。
川口さんは自身のツイッターで
「ここで何度も言ってきたことですが,経済学というのはこのようにグローバルな労働市場に直面した分野なんですね.これまでにも『PhDがみんな海外に行く』『海外就職して帰ってこない』などの形で問題は生じていたのですが,このように近年では『国内の人材が海外に出ていく』例もでてきています」
と現状を訴えている。