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フェラーリでWECフル参戦の澤圭太、LMP1との混走は「スーパーフォーミュラと一緒にGT300で走る感じ」

2017年04月13日 13:32  AUTOSPORT web

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澤圭太 クリアウォーター・レーシング
2017年WEC世界耐久選手権のLM-GTEアマクラスに日本人唯一のレギュラードライバーとしてフル参戦する澤圭太が、4月16日に行われる開幕戦シルバーストン6時間を前に、参戦の経緯や公式テストでの手応え、意気込みなどを語った。

 澤は近年、GTアジアやAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズなどで活躍し、16年はAsLMSチャンピオンとして、自身初のル・マン24時間レース参戦を果たした。

 そんな澤は今季、昨年ともにル・マンに挑んだクリアウォーター・レーシングからル・マンを含むWEC全戦に参戦する。

「クリアウォーター(・レーシング)とは、10年近くアジアでレースをやってきて、そこで知り合いました。チームオーナー兼ドライバーのウェン(-サン・モク)のコーチをしながら、13年からチームメイトとして一緒にレースに出るようになったんです」と澤。

「僕もウェンもル・マンに行くのが夢で、ずっと『ふたりで行きたいね』と話していたことが昨年ようやく実現しました」

「今年については、夢が実現したのでそれで終わりかと思っていたのですが、チームがWECにフル参戦することになった。そこで、またチャンスをもらったという感じです」

 AsLMSのほか、セパン12時間、日本のスーパー耐久シリーズに参戦するなど耐久レースの経験豊富なクリアウォーターだが、初めての世界選手権参戦に際してチーム体制が変更されている。

「クリアウォーターはアジアのレース界では有名なチームです。元々シンガポールのチームですが今回、WECにフル参戦するにあたって、フェラーリ・ワークスのAFコルセとジョイントしています」

「クルマや設備は全部ワークスのものを借りていますが、チームとしてはクリアウォーターとして参戦するので、スタッフはシンガポール人とイタリア人スタッフが半々という構成ですね」
■予定通りのメニューをこなせた公式テスト

 AFコルセから供給されるマシンは16年型のフェラーリ488 GTE。澤は2回のテストを経て、488の仕上がりに自信をみせた。

「488というクルマ自体は、GTEとの共通点も多いFIA-GT3バージョンを16年の暮れからAsLMSで走らせています。GTEバージョンはモンツァでの公式テスト一週間前にイタリア・バレルンガで行なったシェイクダウンで初めて乗りました」

「クルマの仕上がりは、100パーセントのうち90~95パーセントくらい。チームメイトのマット(・グリフィン)がクルマをよく知っているし、チームもAFコルセや他のフェラーリユーザーとデータを共有しているので、クルマ作りの面ではまったく心配していません」

「僕自身、新しいクルマやコースに慣れるまでに時間が掛からない方なので、モンツァでは問題なくテストメニューを消化していくことができました」

 公式テストでは初日にロングランの確認を行い同日夕方、エースのグリフィンのフィードバックをもとにセッティングを変更。2日目の朝にモクと澤がコースに出てマシンを確認し、各人がいい感触を得たという。

 2日目午後のセッションでは、澤が1分50秒271のクラストップタイムをマークしている。

 また、他クラスに抜かれる混走レースならではの感覚については、2日間のテストで取り戻しているという。
 
「LMP1(に抜かれる感覚)は16年と変わらない印象です。特にモンツァはスピードレンジが高いので、後ろに白いライトが見えたらあっという間に追いつかれ、抜かれていきます。スーパーフォーミュラと一緒にGT300で走っているようなイメージですね」

「今年はLMP2も速くなっているので気をつけないといけないのですが、勘は戻ってきているので他クラスとのコミュニケーションについても問題ないと思います」
■「楽しまないともったいない」

 今シーズンの目標について、「モクはチャンピオンを獲るぞ! と言っていますけど、僕はそんなに甘くないと思う」と語る澤。しかし、一方で表彰台に上がるチャンスはつねにあると自信を覗かせてもいる。
 
「チームの強みはドライバーラインアップのバランスがとれていること。WECフル参戦1年目なのでチャンピオン争いは難しいかもしれないですけど、なるべくたくさん表彰台に上がって、1回くらいは勝ちたいですね」

「これまでやってきたアジアのレースと世界選手権、ヨーロッパのレースは、やっぱり何かが違うな、と感じます。僕自身がドライバーとしてやっていることは大して変わらないので、具体的に何が違うのかはよく分からないんですけど……」

「ただ、自分のクルマをトヨタやポルシェのマシンがあっという間に抜いていくのを見ると、すごいところを走ってるんだなとつくづく思いますね。大変なところに来ちゃったんだなって(笑)」

「WECで走るサーキットのなかで、経験があるのは富士スピードウェイとル・マンのサルト・サーキットだけ。残りはすべて初めてのコースですが、シルバーストンやスパ・フランコルシャン、ニュルブルクリンクなど、ヨーロッパの有名コースを走るのが今から楽しみです」

「レースは楽しまないともったいないし、世界選手権にフル参戦という経験ができるのは、レースキャリアのなかでも今回限りかもしれない」

「そのために、さまざまなものを無理してでも来ようと思って臨んでいます。その分、現場ではなるべく楽しむ。そして、いろんなものを残していきたいと思っています」

 澤とクリアウォーター・レーシングの初陣となるWEC開幕戦は4月14~16日、イギリス・シルバーストンで開催される。