多くのドライバーが、出席が義務付けられている国歌演奏セレモニーに遅刻、あるいは遅刻しそうになった今年の中国GP。実は優勝したメルセデスAMGも、一歩間違えば遅刻していても不思議ではない状況だった。
というのも、メルセデスAMGの2台がピットレーンを出たのはダニエル・リカルドとセルジオ・ペレスよりも遅く、10チーム中最後だったからだ。
路面コンディションが刻々と変わっていく状況で、メルセデスAMGの2台もペナルティを受けたリカルドとペレスと同様、インターミディエイトを履いた後にドライタイヤ(スーパーソフト)を履いてピットアウトし、最後にグリッドに着いた。つまり、リカルドとペレスよりも、ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスは遅くグリッドに着いていたのである。
では、なぜリカルドとペレスは遅刻し、メルセデスAMGの2台は遅刻しなかったのか。それは偶然撮っていた写真を確認してわかった。
現在のF1ではレコノサンスラップを終えたドライバーは、グリッドの後方でエンジンのスイッチを切り、自走ではなく、メカニックに押してもらって自分のグリッドに着くことがレギュレーションで定められている。これは混雑するグリッド上で事故が起きないようにするための安全策だ。
リカルドとペレスも、ほかの大勢のドライバーと同様、グリッドの後方でエンジンのスイッチを切り、コクピットに座ってメカニックに押してもらっているマシンのステアリングを左右に細かく切って、人ごみをかき分けながら自分のグリッドに着いた。
その後、一番最後にメルセデスAMGの2台がグリッド後方に到着。その写真を見て驚いた。コクピットにドライバーが座っていないのである。
これはドライバーを国歌演奏セレモニーに間に合わせるためにとったアイデアで、チームはコクピットにドライバーがいなくても進路を変えられるよう、マシンを台車に乗せてメカニックたちだけグリッドまで押していたのである。
さらにドライバーが脱いだヘルメットはフィジオが持って、マシンの後ろを早歩きで追っかけていた。その時刻が13時44分だから、すでに体一つで国歌演奏セレモニーへ向かったメルセデスAMGの2人のドライバーは、集合時間の13時46分までにスタートライン上に整列していたこととなる。
そのころ、ペレスはようやく到着したグリッド上でコクピットから降りるのにさらに時間を要していた。その時刻が13時45分だったのだから、遅刻するのは当然だった。