バーレーン勝者のタイトル獲得率75%!
得意コースのライコネン、マッサに注目
ふたりは同点、2チームは1点差、2強が互角のまま第3戦バーレーンGPへ。これまでルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルはイーブンの2勝とポールポジション2回、過去の戦績も互角。やってもらおう、今年最初の決戦──。
2014年からナイトレースになり、日没時間の午後6時スタート。日中は30℃を超える砂漠地域も気温は下がり、昨年は23℃、15年は26℃、14年は24℃だった。陽ざしがなくなれば、路面温度は気温プラス10℃くらいにまで徐々に下落する。意外に涼しい夜のバーレーン。
先週の上海はスタート時点で気温12℃、路面温度15℃、過去5年で最も寒いウエットコンディションだった。雨と霧とスモッグから、連戦の今週は一変して夜空に星が輝く下でのナイトレース。“舞台装置”が次々に転換していくワールドツアー序盤戦なのだ。
最近の傾向として高め温度領域でフェラーリはタイヤマネージメントを含めたパフォーマンスが安定し、ベッテルは晩夏の初戦オーストラリアGPでメルセデスを打破した。そして、低温条件の中国GPでも絶対王者を誇ってきた相手に挑んでいけた。
注目したのは終盤にハミルトンと何度もファステストラップを叩き合い、0.045秒差の2位自己ベストタイムをマークしたこと。グランドスラム完全優勝の相手に、彼とフェラーリは勝るとも劣らないパフォーマンスを示した。
開幕2戦でフェラーリSF70Hの真価が理解できた。長所はそのままさらに伸ばし、短所を補ってきたところが目新しい。こうした進化を可能にしたのはかつての大物デザイナーであり、ミハエル・シューマッハーとともに黄金期を築いたロリー・バーン氏が復職し、新たな開発陣に加わったからだろう。
シーズンオフの間、ジェームス・アリソン離脱が騒がれたが人材補強に動かなかった彼らのもとに、大物デザイナーの存在があった。
■今宮純が厳選するF1第3戦バーレーンGP 6つの見どころ
●キャッチポイント1:昨年ベッテルはスタートできず、15年は5位。それをカバーしたキミ・ライコネンは2年連続、過去5回2位入賞中、表彰台8回の好結果を重ねている。勝利とポールポジションはないものの、ここは得意コースのひとつ。開幕2戦ともにやや存在感が薄かったライコネンがここで目覚めるか、キーパーソンに上げておく。
●キャッチポイント2:ハミルトンとベッテルに並ぶ2勝のフェリペ・マッサ、100%完走中の彼も得意コース。新人ランス・ストロールの面倒を見ながら(フリー走行で先導役を)、ウイリアムズFW40のポテンシャルを引き出すドライビングに切れ味が戻っている。中間チームがひしめく今年、現在ランキング6位のウイリアムズは直近のフォース・インディア、トロロッソをここで出し抜きたい。マッサ頼みだ。
●キャッチポイント3:昨年欠場し、ストフェル・バンドーンにシートを譲ったフェルナンド・アロンソ、2年ぶりだ。上海で投入されたエアロ・アップデートに続き、さらにMCL32に新しいタマが入る。ここはマクラーレンにとって非常に重要な国、政府系ファンドが筆頭株主で隣国サウジのマンスール・オジェ氏は長年にわたる株主だから。ホンダにもチーム首脳にもプレッシャーがかかる場、アロンソ自身もコース外でいろいろ忙しい時を過ごすことになるだろう(今後に向けた動きが水面下で?)。
●キャッチポイント4:11年に中止されたが、今年で13回目、その12年の歴史で目立つのは勝利者=年間チャンピオンが9回(75%)、勝利チーム=年間チャンピオンはなんと11回(90%)。バーレーンGPを制するものは、高確率でシーズンを制してきている。これが当てはまるかどうか、シリーズ終盤までご記憶のほどを。
●キャッチポイント5:東西南北の方向に4本ストレートがあり、その合計距離は3km以上の57%を占める。だが、コーナーにもさまざまな特徴があり、ターン1はスタート時に集団が固まるホットポイント。下るターン5、6、7は高速S字でタイヤがオーバーヒート気味に。ターン9~10は減速アプローチが難しい曲がりこみながらのブレーキング、ロックアップしやすい。ターン12は吹きさらしで突風に要注意、ラインが乱れやすい。最終コーナーはトラクション性能重視、4本ストレートをつなぐ各コーナーは見どころがふんだん。
●キャッチポイント6:レース後に1日置いて、シーズンインテスト・パート1が18~19日に行われる。次は8月ハンガリーGP後なので、この初回テストでは次期投入予定のアップデート版パワーユニットの開発と、ヨーロッパラウンドにそなえた空力アイテムの確認など多岐にわたる。高温条件下で夏を意識したタイヤ特性把握もテーマになる。
月末に第4戦ロシアGPがある月間3レース過密日程、さらにバーレーンテストが2日間。チームスタッフには春からハードな4月、そういう意味でも今年最初の“決戦月”だ──。