トップへ

浅田真央、フィギュアスケート現役引退へ “愛らしさ”から“美しさ”への変化を使用曲で振り返る

2017年04月12日 00:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『浅田真央 スケーティング・ミュージック 2015ー16』

 フィギュアスケート選手の浅田真央が4月10日、自身のブログで引退を表明した。本稿では、これまでに浅田の演技を彩ってきた名曲の数々を振り返る。


参考:羽生結弦は“和”、浅田真央はジャズ! 各選手のフィギュア最新使用曲の傾向とは?


 まずは、浅田真央の名前を世界に轟かせた大会『2005/2006 ISUグランプリファイナル』で使用したピョートル・チャイコフスキーの「くるみ割り人形」。本プログラムでは、浅田真央の代名詞にもなったトリプルアクセルや難易度の高いコンビネーションジャンプを披露、さらに15歳らしいかわいらしさと豊かな表現力でステップシーケンスを演じきり、観客や審査員を魅了した。同大会では、15歳という若さで世界女王のイリーナ・スルツカヤを破り、世界に衝撃を与えた。


 2008年の世界フィギュアスケート選手権では、日本人選手で5人目の世界女王となった浅田。浅田のライバルであるキム・ヨナと激戦を繰り広げた『2008/2009 ISUグランプリファイナル』では、ショートプログラムにクロード・ドビュッシーの「月の光」、フリープログラムにアラム・ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」がそれぞれ使用された。2007年頃から“金メダルメーカー”と称されるフィギュアコーチのタチアナ・タラソワを師事し、バレエなどに取り組んでいたという浅田は、柔軟性を活かした演技と芸術性をプログラムに取り入れたパフォーマンスを披露。キム・ヨナを破り見事優勝を果たした。


 その後もバンクーバーオリンピックで銀メダル、2008、2010年の世界フィギュアスケート選手権で金メダルを獲得した浅田だったが、ソチ冬季オリンピックのシーズンを限りに引退する意向を表明。ファンの間でも名試合として語られることの多いソチオリンピックで使用した楽曲が、フレデリック・ショパンの「ノクターン 第2番変ホ長調 作品9の2」と、セルゲイ・ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」だ。ショートプログラムで調子を崩した浅田は16位からのスタート。しかし翌日のフリープログラムでは、女子史上初となる全6種類、計8度の3回転ジャンプを成功させ自己ベストを更新、終演後に感無量の涙を流した浅田の姿は多くのファンに感動を与えた。


 印象的なのは、10代の頃の浅田はスピード感のあるアップテンポな楽曲や、展開がロマンティックな曲を中心に選曲していたのに対し、年齢を重ねるにつれて壮大なオーケストラやしっとりとしたバレエの楽曲を選ぶ傾向になっていること。2015-2016シーズンには、「素敵なあなた」といったジャズナンバーや、「蝶々夫人」のようオペラの楽曲も採用している。そのような使用曲ジャンルの多様性とともに、愛らしさから美しさへと浅田の表現スタイルも深みが増していった。


 そして最後の大会となった『第85回全日本フィギュアスケート選手権大会』では、マヌエル・デ・ファリャが作曲したバレエ音楽『恋は魔術師』より「Danza Ritual del fuego」と「En la cueva - La noche Pantomime El aparecido」を選曲。どちらも早い進行で緊張感のある雰囲気が特徴的な楽曲だ。同大会は、ジャンプの不調やミスが続き、結果12位という成績で幕を閉じる。しかし、2016年-2017年は左膝や腰の痛みといった不安要素を抱えていた浅田だが、同大会のプログラムにはトリプルアクセルや難しいコンビネーションジャンプを組み込むなど、最後まで自身のスケートのスタイルを貫き通した。
(泉夏音)