2017年04月11日 21:33 弁護士ドットコム
年間720時間などを柱とする残業時間の上限規制をめぐり、息子を過労死で亡くした西垣迪世(みちよ)さんが4月11日、「もう一度お考え直しいただきたい」と涙をにじませながら訴えた。
【関連記事:泣き寝入りする「過労死遺族」、周囲からは「何で辞めなかったの」「大金おめでとう」】
発言は、超党派の議員でつくる「過労死等防止について考える議員連盟」の総会でのもの。この会には、経団連、連合、厚労省も出席。連合などが「罰則がついたことは、労働基準法70年の中で大きな改革」と成果を強調する一方、西垣さんら全国過労死を考える家族の会からは「過労死を合法化する内容だ」と批判が飛んだ。単月100時間、複数月平均80時間という内容が、過労死ラインとほぼ変わらないからだ。
西垣さんの息子・和哉さん(当時27歳)は大手企業で働くシステムエンジニアで、将来を嘱望される存在だったという。しかし、月100時間を超える残業が続き、うつ病を発症。その後、過労死した。西垣さんは、会社の記録では休憩とされていた時間にも休まず働いていた和哉さんを例に、「任意の1カ月や実労働時間でカウントすれば、残業は優に(過労死ラインの)100時間を超える可能性がある」と規制の甘さを批判した。
過労死等防止対策推進全国センターの森岡孝二代表は、「磁石の吸引力みたいなもので、100時間に限りなく近くなっていくのではないか」と、残業が増える可能性を指摘。みずほ情報総研の調査(2016年)によると、特別条項つきの36協定は、「60時間~80時間」が40.4%で最多。次いで、「60時間以下」が32.5%、「80時間~100時間」が14.9%。100時間超は10%程度しかない。
一方、連合の村上陽子総合労働局長は、経団連と合意した最長月100時間(2~6カ月平均80時間)未満の根拠について、「運用面で、管理監督者(管理職)や裁量労働制にしわ寄せがいくことはあってはならない。そういった実態なども勘案して出てきた数字」と理解を求めた。
議連会長の馳浩議員は閉会の挨拶で、「不満を持っている方もたくさんいる。ただ、物事を進めていく上では、評価すべき」と発言。議連としては、過労死等防止対策推進法にのっとり、調査研究などを進め、上限規制の実効性を高めたり、見直しの材料を提供したりする必要があるとまとめた。
【4月14日訂正】
西垣和哉さんが「過労自殺」で亡くなったとしていましたが、「過労死」と訂正しました。事故か自殺かが不明のためです。
(弁護士ドットコムニュース)