日本経済団体連合会の榊原定征会長が4月10日の記者会見で「(人手不足が)今後さらに深刻になる。いまの外国人労働者の規模では足りなくなる」と語った。同日、日本経済新聞が報じた。
人手不足への対応として「海外の労働力の活用を長期的に検討していく必要がある」と論じ、対策の一例として「日系人に日本で働いてもらう」ことを挙げた。この報道を受けて、ツイッターには批判の声が溢れることとなった。
「日本の労働環境が世界的にもう魅力的じゃない」
国立社会保障・人口問題研究所が10日に発表した「日本の将来推計人口」によると、働き手となる15~64歳の生産年齢人口は、2015年時点では1億2709万人だった。それが2065年には8808万人まで減少する見込みだ。
生産年齢人口の減少に伴い、有効求人倍率は上昇し続けている。厚生労働省の統計によると、有効求人倍率は2009年から右肩上がりで、2016年には1.36倍となった。1991年以来の高水準だ。
日本人の働き手が減る一方、外国人労働者の数は増加の一途を辿ってきた。2012年以降、毎年過去最高を更新し続け、2016年には108万3769人に達した。
そうした中、榊原会長は日系人労働者を提案。日系人であれば、「定住者」という身分で日本に滞在できるため、在留中の活動に制限を受けることがない。そのため、他の外国人に比べれば日本に来てもらいやすい、という側面はある。
しかしこれには、「ほんとやめて」といった批判の声がツイッターに多数寄せられた。
「日本の劣悪労働環境に、実態を知らない人間を海外から連れてきて働かせるとか、人権問題で真面目に問題化するから。ほんとやめて」
日本の劣悪な労働環境を放置したまま、外国人労働者を受け入れるのは良くないということだろう。そもそも「日本の労働環境が世界的にもう魅力的じゃない」という指摘も。外国人労働者の数も頭打ちになりかねない。
リーマンショック時には政府の促しによって2万人以上が帰国
「日系人を対象に、3年間日本に再入国できないことを条件に旅費を支給する帰国支援事業で追い返しを推進しておいて、なんとまあご都合主義なのだろう」という批判もあった。これは2009年に実施された日系人離職者への帰国支援事業のことを指している。
リーマンショックで失職した日系人が増えたため、「定住者」としては再度入国できないことを条件に、1人あたり30万円を給付して帰国を促していた。その結果、2009年4月1日~2010年3月31日までに21,675人が帰国。不況時には、追い返し、人手不足になったら働きにきてもらうというのは「ご都合主義」以外の何物でもない。
また
「ロボットやAIへの投資を増やします、じゃないところが本当にすごい」
と技術革新で生産性を上げる方が重要だという指摘もあった。他にも、「ことさら『日系人』と言い出すことの差別性」という声もある。日系人なら日本に馴染みやすいという発想なのかもしれないが、「人種差別」なのではないかという疑問も残る。