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飯豊まりえ×平祐奈が語る『暗黒女子』の裏側 飯豊「清水富美加ちゃんはスペシャルな存在だった」

2017年04月11日 16:42  リアルサウンド

リアルサウンド

平祐奈、飯豊まりえ

 現在公開中の映画『暗黒女子』は、秋吉理香子の同名小説を、『心が叫びたがってるんだ。』の岡田麿里脚本で、『MARS~ただ、君を愛してる~』の耶雲哉治監督が実写化したミステリー映画。謎の死を遂げた全校生徒の憧れの的“白石いつみ”が会長を務めていた文学サークルで、「いつみの死」についての朗読会が開かれる模様を描いた作品で、清水富美加と飯豊まりえがW主演を務めるほか、清野菜名、玉城ティナ、小島梨里杏、平祐奈ら今注目の若手女優が多数出演している。


参考:飯豊まりえ&平祐奈フォトギャラリー


 リアルサウンド映画部では、聖母マリア女子高等学院の理事長の娘“白石いつみ”役の飯豊まりえと、文学サークルの部員・二谷美礼役の平祐奈にインタビュー。清水富美加はじめ同世代の女優たちとの撮影秘話や、禁断のラブシーンに挑んだ心境、“暗黒女子”を演じる上での意外な役作りについてなど、じっくりと語ってもらった。


■飯豊「富美加ちゃんがいたから、私は“白石いつみ”という役ができた」
ーー飯豊さんと清水さんは今回、ふたりで主演を務めています。共演の印象は?


飯豊まりえ(以下、飯豊):以前、連続テレビ小説『まれ』(NHK)で共演させていただいた時に、同世代にこんなにも、キャリアも実力もあって、かつ面白くて個性的な女優さんがいるのかと驚き、個人的に彼女のファンになりました。そこからW主演という形で『暗黒女子』をやることが決まり、富美加ちゃんとふたりでご飯を食べに行ったんです。その時に、富美加ちゃんが「マジで、一緒にできるの? 楽しみ!」って喜んでくれたことがすごくうれしかったですね。実際に撮影が始まると、富美加ちゃんは、次から次へとアイデアが出てくるし、お芝居もとても上手で、すごく刺激をもらいました。富美加ちゃんがいたから、私は“白石いつみ”という役ができたんだなって。


ーー今回、飯豊さんは清水さんと唯一無二の“親友”という役柄ですよね。


飯豊:私たちは、ほかの4人との“違い”を示す必要がありました。どこか浮世離れした口調で、常に冷静な立ち振る舞い、ふたりでいる時だけ裏の顔を見せる。そんな裏表をしっかり区別するために、富美加ちゃんは滝川クリステルさんを参考にして、落ち着いて余裕がある雰囲気を全身から発していました。私は、そんな滝川クリステルさんを真似している富美加ちゃんを意識して、いつみを演じていました。ふたりでお芝居を相談して合わせるというよりも、陰と陽、太陽と月のような関係性だったので、お互いに個々でお芝居を固めてきて、それを各々出し合う感じです。W主演だからこそ、富美加ちゃんには迷惑をかけられないと思っていたので、彼女の前では弱音を吐けなかったです。たいちゃん(平祐奈)たちには、弱音を吐いてしまったのですが。


ーー平さんから見て、主演ふたりの印象は?


平祐奈(以下、平):ふたりとも、みんなが憧れるいつみ先輩、小百合先輩という役柄同様に、まぶしい存在でした。富美加ちゃんに関しては、女の子だけどいい意味で“おっさん”という、ギャップがすごかったです。本番が始まったら、姿勢や喋り方が“小百合先輩”そのものになっていて、カットがかかるとすぐにまたおっさん化していましたね。そんな姿を見て、器用だなと感服すると同時に、女優としての才能がずば抜けている印象を受けました。富美加ちゃんは、撮影が終わると、「終わったーー! 飲めるーー! 何飲もうかな?」ってずっとお酒の話をしていて。そういうところもおっさんでしたね(笑)。


飯豊:確かに、富美加ちゃんはおっさんだった! 私たちと一緒にいる時間よりも、音声部さんの部屋にこもって、音声さんたちと話している時間の方が長かったよね。富美加ちゃん自身も「女の子たちの中にいるより、おじさんたちと話してる方が楽しいんだ」と言っていました。だから、おじさんたちとの方が気が合うんだろうなって。そういった部分でも、富美加ちゃんは役柄同様にある意味スペシャルな存在で、ほかの子たちとは被らない個性を持っていましたね。


ーー映画の中では、飯豊さん、平さんたち6人は、それぞれ“裏の顔”を持っている“暗黒”なコミュニティに所属していましたが、実際の撮影現場ではどのような関係性、雰囲気でしたか?


平:みんな仲が良くて、“暗黒”とは真逆でしたね。“真っ白”でした(笑)。カメラが回っていない時は、わちゃわちゃと戯れて、女子校に通っている感覚でした。


ーー女子ならではのエピソードはありますか?


飯豊:楽屋がいい匂い!


平:いい匂いだった! (玉城)ティナちゃんがモデルさんということもあって、美容にとても気を使っているんですよ。青汁をみんなに分け与えれくれたり、いい香りのボディクリームでマッサージをしたりしていたので、私たちも影響されて、ティナちゃんと一緒にコロコロ(小顔ローラー)をしたり、水素水を飲んだりしていましたね。


飯豊:急に意識高い系女子になったよね! ザ・女子校って感じです。水素水の効果なのか、みんな体内の循環が良くなって、お手洗いの頻度が増えて大変でした(笑)


■平「援助交際も“介護”だと思っていたんですよ」
ーー現場は“暗黒”ではなく“花園”って感じですね。逆に、日常生活の中で“暗黒女子”と遭遇したことは?


平:出会う人みんながいい人すぎて、こんな暗黒な世界が本当にあるのか、存在しないんじゃないか、と……。


飯豊:たいちゃんがいい人だから、暗黒な人が寄ってこないように神様がしてるんだよ! でもきっと、“暗黒女子”は世の中にいっぱいいるんですね。私が「あの子結構キツくてさ~」って言っても、たいちゃんはいつも「え? そうなの?」って、全く気づいてないんですよ。


平:確かに知らないこと多いかも……。人と話すのは好きなんですけど、そこまで深く関われないといいますか、相手の奥深くの部分までは到達できないんですよね。


飯豊:たいちゃんにはみんな、“陰”の部分を見せられないんだよ! たいちゃんは“陽”しかないので、そういう子は“暗黒女子”をも照らしてしまうから一番強いんです。


ーー今回、飯豊さんは千葉雄大さんとの禁断のラブシーン、平さんは援助交際のシーンに挑戦していますが、どのような心境で臨みましたか? 同じ女性として、勇気と覚悟がいるシーンだと感じました。


飯豊:もう、未知の世界でした。先生はもちろん、自分よりもだいぶ年齢が上の方を好きになったことがないので、“先生を好きになる”という気持ちがわからなくて、戸惑いました。うまく気持ちが乗らなかったけど、お芝居として割り切りましたね。あのシーンをやってよかったことは、どういう風にしたら綺麗に見えるのかに重点を置いて、“見え方”を追求していき、明確にしたことです。たくさん練習を重ねて試行錯誤してから撮影に挑みました。


平:練習とか気まずそうだよね。


飯豊:気まずいよ……。練習では、実際にキスする訳ではないのですが、ここでメガネを取ってなどといった流れを確認していました。ダンスの振り付けのように、あらかじめ決めておいてから本番の方が気が楽だったので。監督が私たちに、海外ブランドのCMを何回も見せて「こういう風にやってください」って言うんですよ。え? ハリウッドばりのキスシーンしてますけど! って驚愕しましたね。もともとラブシーンの部分はかなり長回しの予定だったので、いざ本番となるとやはり緊張しました。「千葉くん、あとはよろしくね」と、監督が立ち去っていった時は心細かったです。千葉(雄大)さんとは今回初めてお会いしたのですが、会うたびにキスシーンだったので、気まずくなってしまいあまり話せなかったです。その分、ほかの現場でお会いした時には、特殊な空気感があったように思います。変な絆が生まれていて、ふたりでアドリブするシーンでは、何も言わずに息がぴったりでしたね。


平:私は、“援助交際”という言葉と意味をこの作品を通して初めて知りました。台本を読んでいて、おじいちゃんの車椅子を押すシーンなどがあったので、援助交際も介護だと思っていたんですよ。なので、(二谷)美礼ちゃんという役は暗黒な部分がないな、と。台本には、ベルトを外してチャックを開けると書いてあったんですが、それもオムツを替えてあげるためだと思っていました。現場で監督とプロデューサーが、事ある毎に「色気を大事に、メガネを取るのでさえセクシーに」とおっしゃっていたのですが、色気を出す必要性がわからなくて。監督は何を言っているんだろう、とずっと疑問に思っていましたね。本番直前にも監督が、「ねぇ、祐奈ちゃん。何するかわかってるよね? あえて言わないけど」と念を押してきたのですが、その言葉の意味すら理解していなかったです。監督もハッキリとは口にせず、曖昧に濁していたので。


飯豊:たいちゃんのことを知ってる人は、絶対に見たくない内容ですよ。平祐奈の新たな一面が見られます。私も、初めは美礼ちゃんが一番暗黒じゃないなと思っていたのですが、蓋を開けてみるとやはり真っ黒でしたね。


ーー“援助交際”を理解した時の心境は?


平:怖いな、と。私が疑問に思っていたら、お姉ちゃん(平愛梨)が援助交際の意味を説明してくれて、やっと理解しましたね。お母さんにも話したら「あなたは役者を通して、色々なことを経験していくのね」って。


■飯豊「精神的にすごくきつかったです。まさに“暗黒期”でした」
ーー今回、飯豊さん、平さんともに自分自身とはかけ離れた役柄で苦戦したとのことですが、普段の役作りとの違いはありましたか?


飯豊:私は、基本的には台本にあまり書き込まないんです。疑問に思う部分があったら、線を引いて“?”や、“これいるかな?”などの一言を添える程度なんですが、今回は真っ黒になるくらい書き込みました。普段はまず台本を一通り覚えてから現場に入り、その場で生まれたものを大事にしていたのですが、今回はあらかじめ考えてから現場入りしないとダメでしたね。たとえば、予告編にも使われている「い・や・だ!」といういつみのセリフ。あのたった3文字をいかに憎たらしく言えるかっていうのが鍵だったので、事前に色々と考えていました。直前までのセリフを柔らかめに発して、ここで一気に豹変すると言った感じに強弱を意識しましたね。あの3文字を強調するために、1シーン全体を計算する。そんなやり方をこの作品では常にしていました。あらかじめ一つひとつのシーンをしっかりと噛み砕き、自分の中に落とし込んでから撮影に挑まないと、監督から「OK」が出ないんですよ。そんな難しい役柄だったので、私にとっては新たな挑戦でした。


ーーでは、役作りにあたり何か参考にされた作品は?


飯豊:『Wの悲劇』です。普通のお芝居ではなく、舞台のようなお芝居をしてくれと監督から言われていたので。最後に文学サークルの後輩4人に向かって叫ぶシーンがあるのですが、そのシーンが最も舞台らしさが出ています。いつみちゃんがどっぷり自分の世界に入り込んでしまっていて、「さようなら~」のシーンではもう完全に気が狂ってますよね。


平:私は普段の自分を出せるシーンも多かったので、そういう意味ではやりやすかったです。美礼ちゃんは、最初は内気でおとなしい子なのですが、文学サロンに徐々に慣れていくと明るくなり、みんなの妹キャラというポジションでした。私も6人兄弟の末っ子で、性格は明るい方です。監督も「美礼が文学サロンに慣れていくシーンに入ったら、普段のキャラを出してていいよ。あなた妹キャラ得意でしょ?」っておっしゃっていたので、自然体で演じることができました。でも、最初の方のシーン、たとえば校門に入るシーンは、苦戦しましたね。まだ、美礼ちゃんが自分に自信がなく、おどおどしていた頃なので。自信のなさを表現するには、どうしても猫背でなくてはならなかったんです。私は、バレエを習っていたので、胸を張ってしまうと言いますか、無意識のうちに姿勢を正しているんですよ。だから、監督から「それだと自信あるよ! 美礼もっと自信なさげでいいから、もっと力抜いて。飯豊まりえっぽくしてくれる?」というアドバイスをいただきました(笑)。


飯豊:え、初めて聞いた(笑)。確かに私、猫背で自信ないんで。


平:ずっと言えなかった! 今だから言えることです(笑)。撮影中のまりえちゃんが、本当にもう精神的にきつそうで……。不安そうにしていたので。


飯豊:精神的にすごくきつかったです。まさに“暗黒期”でした。特殊な役なので、撮影に入る前はすごく楽しみにしていたんですが、いざやってみると想像していたものとは全く違って……。何回リハを重ねても、監督が満足そうな顔を見せることはなくて、これはヤバいかもと思って自分でも映像を確認したら、やはり白石いつみという人物とはほど遠かったんです。そんなできない自分に落ち込んでしまい、さらに自信がなくなっていきましたね。どちらかというと褒められて伸びるタイプなんですよ、私(笑)。ですが、今回はダメ出しが多かったのと、みんなの足を引っ張ってはいけないという思いで、日に日に追い込まれていきました。愛のムチと言いますか、監督から愛のある厳しいお言葉をたくさん頂いて育っていきました。


(取材・文=戸塚安友奈 写真=泉夏音)