2017年2月半ば、ドイツのモトパークから今季のFIAヨーロピアンF3選手権(ヨーロピアンF3)参戦を発表した高校生ドライバー佐藤万璃音(さとうまりの)。“F1登竜門”という位置づけを残しつつ、“プロ”と“アマ”のふるい分けが厳しく為されるヨーロピアンF3へ挑む少年を今季も追いかける。
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■希望を叶えた佐藤万璃音。ハンガロリンク公式テストは満足に走れず
「まず、僕のような声優さん好き、アニメ好き、ラノベ(ライトノベル)好き、ゲーム好きのレーシングドライバーを、昨年に引き続き今年も採り上げていただけると聞いてビックリしています(汗)。自動車メーカーの育成ドライバーでもない僕に興味を持っていただき、大変光栄に思います」と万璃音。
「実のところ、カートからフォーミュラへ転向するにあたり、ヨーロピアンF3参戦は最低限の目標でした。2015年にレッドブルリンクでプライベート・テストの機会を与えられた際に、できるだけ早い時期にヨーロピアンF3へステップアップしたいと目標を明確にしました。希望はついに叶えられました」
「ヨーロピアンF3参戦を見据えて昨年12月には、スペインやポルトガルで複数のチームからプライベートテストに参加しました。最終的にモトパークとの交渉がまとまり、ヨーロピアンF3参戦の発表を経て、今年3月上旬にはスペインやポルトガルでふたたびプライベートテストに参加しました」
「同じ3月下旬には、ハンガリー・ハンガロリンクとオーストリア・レッドブルリンクでオフィシャルテストに参加しました。しかし、ハンガロリンクでは走行開始間もなくオイル漏れのトラブルが発生。当初、チームはギアボックスに不具合が生じたと判断して交換作業に時間を費やしたため、1日目はほとんどレーシングスピードで走れませんでしたね」
「1日目のセッション終盤、ようやくギヤボックスの交換作業が終了して走り出したものの、ふたたびびオイル漏れで走行を断念。チームによる原因究明の結果、ギヤボックスからではなくエンジン配管からのオイル漏れだと発覚しました」
「初めて走るサーキットでのテストは苦い経験に終わりましたが、2日目のセッションで少なくともぶっちぎりのビリ争いには至らなかったので、ホッとしました(汗)」
■「2018年へ全精力を注ぐための1年に」
「ハンガロリンクに続くレッドブルリンクのオフィシャルテストは、走行経験があるサーキットでしたし、ほぼトラブルフリーで走り込めました。予選を想定したタイムアタックでは8番手になり、決勝を想定したロングランでも上々のラップタイムを刻めました。しっかりやっていけるという手応えを得ました」
「ヨーロピアンF3参戦が決まったあとの1~2カ月は、とにかく忙しかったですね。プライベートテスト、オフィシャルテスト、その合間にはモトパークのファクトリーでエンジニアとのミーティングとシミュレーターテスト。シミュレータテストは苦手で、あの仮想空間に酔って“オェッ”と吐き気を催します(汗)」
「また、シルバーストンの開幕戦を前に一時帰国しました。ヨーロピアンF3へ向けた準備として、僕を支援してくださっている皆さまへのご挨拶はもちろん、高校生ですから学業にも勤しみました。さらには僕のレース活動の原動力である趣味も……」
「ただ、今年は昨年以上にレース活動で忙しく、アニメを観る時間もラノベを読む時間も、さらには声優さんのコンサートへ行く機会も激減しそうで涙目です」
「今季のヨーロピアンF3は、ドライバー19人のうちF3の新人は僕を含めて5人だけと、昨季に比べてルーキードライバーにとっては厳しい状況です。総合ランキングではトップ10以内、新人の中ではトップ争いに加われれば上々かなと」
「今季は拙速に結果を求めるより、2018年シーズンのヨーロピアンF3へ全精力を注ぐための1年にしたいと考えています」
イギリス・シルバーストンで4月13~16日に実施されるヨーロピアンF3開幕戦。WEC世界耐久選手権やELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズといったビッグレースと併催される1戦で、万璃音が初めてのサーキットをいかに攻略するのかが注目される。