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スーパーGT岡山でサクラ咲くLC500の圧倒的パフォーマンス。レクサス車両開発の背景

2017年04月10日 15:12  AUTOSPORT web

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今シーズンの開幕戦で見事優勝を果たしたKeePer TOM'S LC500。トップ6を独占したレクサスの勢いは収まりそうにない。
参戦する6台が1~6位独占という、圧倒的なパフォーマンスでスーパーGT第1戦岡山を制したGT500のレクサスLC500。ホンダ、ニッサンと合わせて3メーカーが同時に新車両を投入した中で、LC500はなぜここまで順調に開発を進めることができたのか。その理由をレクサス陣営のチーム関係者に聞いた。

「LC500はクルマのどこがいいかというより、とにかく欠点がない」と話すのは、スーパーGT開幕戦で2位を獲得したWAKO'S 4CR LC500の山田健二エンジニア。

「空力の規制でダウンフォースが減った今のレギュレーションだと、高速コーナーではメカニカルグリップが足りなくて動きがピーキーになる傾向があるけど、LC500は扱いやすくて、どこのサーキットでもセットアップのバランスが取りやすい。クルマとして悪いところがないというのが一番のポイントだと思います」と続ける。

 昨年からサーキットでテストを重ねたLC500はTRDとレクサス・チームのエンジニアと共に開発を進めてきたが、前車種のRC F、その前のSC430との開発とは明らかに違う点があった。それまでファクトリーでの開発、そしてサーキットでの現場検証の双方をTRDが担っていたが、今回のLC500はTRDは開発に専念し、チームのトラック・エンジニアが現場検証を行う完全分業で開発を進めてきたのだ。

 そのレクサス陣営の現場のまとめ役を、トムスの東條力エンジニアが担当。このオフ、他の5チームのトラック・エンジニアとともにLC500のサーキットで走行評価を行い、セットアップを詰めてきた。

その東條エンジニアは開幕戦の結果に「6台で独占できてすごくうれしい。レクサスのどこかが勝ってくれればうれしいと思っていたし、できれば上位を独占したいと思っていたし、その中でトムスが勝ってくれればいいかなと思っていた」と、自分のチームのリザルト以上に上位独占を喜ぶ。

 LC500開発のトラック・エンジニアとして、新車両の開発が上手く進められた一番の理由はどこにあったか。

「開発の段階からトラブルが出なかったことかな。コース上で止まっている時間がまったくなかったので、多くの距離を走ることができたことが一番じゃないですかね」と東條エンジニア。

「やっぱり、クルマは走らないと分からないですからね。だいたいテストで新しいパーツを付けて、良いか悪いか評価するときにはパーツを外したり付け替えたり時間が掛かるけど、それが少なかった。悪いままでもどこが悪いか探したいから、そのサーキットで良くなかったものも別のサーキットで使ってみるという形で進めて、そこで逆に良かったものも他のサーキットへ持って行って、その発展型を別のサーキットに持って行っていくという作業を上手く進めることができたんです」と続ける。

■TRDとチーム、ドライバーの徹底した話し合い

 TRD側もトラックでの評価メニューなどを東條エンジニアに一任。必要な開発パーツも、現場の声を聞きながら進める好循環ができていたという。

「僕の方からも『こういうパーツを作ってくれないか』『こうしてくれないか』という要望を出して、そのすべてにTRDが開発で応えてくれた。まだまだやりたいことはあるけど、当初の予定よりもプラスアルファくらいのメニューはこなせました」と、東條エンジニアは順調だった開発の背景を話した。

 テストの時間は決して多くはない。開幕までの日程、使用できるサーキットの走行時間を逆算して、限られた時間内でセットアップを進めるのは、まさにトラック・エンジニアの腕の見せどころだ。

 WAKO'S山田健二エンジニアも、「TRDの開発陣が、まずはチーム側の意見を徹底的に聞きましょうと。ヒアリングをしましょうと。その中でTRDは何ができるのかと。役割分担をして、そのまとまりは非常に強かった。TRDのシャシー設計、エンジン設計、そしてチーム側の6人のエンジニア、そしてメカニックがとにかくたくさん話し合って、一体となって開発してきた。そこでベテランの立川(祐路)選手がサーキットで評価して、ウチの大嶋和也も含めて各チームのドライバーの意見も集約できた」と、開発の経緯を話す。

 LC500はクルマやパーツの開発者であるTRD、そしてチームのエンジニア、開発車のステアリングを握った立川祐路、石浦宏明のドライバー側の意見と、三者の役割をきっちり分けて効率的に開発が進められてきたことが伺える。

 スーパーGTはレクサス、ニッサン、ホンダと3メーカーのビッグネームがあり、どうしても新車開発はメーカー主導になりがちだ。現場のチームが求めていることと開発者の思惑にズレがあったり、メーカー側の一方的な指示があり、そして同じ陣営内のチーム間に壁があることは、これまでどの陣営からも聞こえてきていた。しかし、今年のレクサス陣営からは気持ちが悪いほど、そういった不満の声が聞こえてこない。

 もちろん、これからシーズンが進み、チャンピオンシップへの意識が高まってくればまた、チーム間の関係、陣営内の空気も変わってくるが、とにかく今はレクサス陣営に隙が見つけられない。

「セットアップはだいたいやり倒しているからね」と、東條エンジニアが笑う。

 桜満開の岡山で花開いた、トップ6独占というレクサスLC500のパフォーマンス。今年のレクサスの桜は、夏まで咲き続きそうな勢いだ。