スーパーGT第1戦の岡山の決勝で、パレードラップ開始直後から次々とコース上でマシンを止めてしまったホンダNSX-GT。そのトラブルについてチーム関係者、そしてホンダGTを率いる佐伯昌浩プロジェクトリーダーに聞いた。
前日の予選Q2ではMOTUL MUGEN NSX-GTがアトウッドコーナーの出口、バックストレートに入るところでマシンを止めてしまったが、この時はエンジンの電装系トラブルだった。そして、決勝日のトラブルもやはり、この電装系の問題だった。
翌日の決勝日、パレードラップが始まったところでKEIHIN NSX-GTがグリッドから動けない。スタートドライバーを務めた小暮卓史によると、「20分間のウォームアップ走行では問題なかったのですが、グリッドに向かうときにトラブルを感じた」と言う。
グリッドではNSXの5台全車がリヤハッチを開けて作業を行っていたが、これはこの電装系のチェックを行っていたため。しかし、このパーツ(詳細は不明)は簡単に交換できるものではなく、グリッド上での交換は不可能なことから、そのままスタートをせざるを得ない状況となってしまったようだ。
「アクセルを踏んでも反応しない状況でした」と小暮もストップしてしまった時の状況を話す。他の関係者の取材からも、スロットに関わる電装系にトラブルがあったと推測される。
レース後、ホンダGTの佐伯プロジェクトリーダーに聞いた。
「原因は電装部品です。結果的には前日の16号車(MOTUL NSX)と同じです。予想外な部品が壊れてしまいました。決勝で壊れた4台もまったく同じです。これまで壊れたことはなく、過去3年間ずっと使用してきた部品です。走行距離も300kmちょっとくらいで同じタイミングで壊れてしまいました」
前日のMOTUL NSXで起きたトラブルの原因が分からずじまいだったのも、決勝での被害を大きくさせてしまった。
「昨日の予選の時点で、もう1台トラブルが出たり何らかの兆候がつかめていたら全車交換することができたのですが、結局、16号車の原因がわからなかった」
「この部品は6000~7000km、1年以上使っても壊れないものでしたし、スーパーフォーミュラでも使用して実績がありました。もちろん、ベンチテストで今のスペックのエンジンに装着して信頼性の試験をクリアしています。新品をこの開幕戦に向けて投入したのですが、ウインターテストでも使っていて問題のなかった部品が、今回のレース用エンジンに組んで持ってきたところで同じタイミングで壊れてしまった」と、焦燥しきった表情で話す佐伯プロジェクトリーダ-。
「まずはSAKURAの研究所で徹底的に原因を調査します。可能性は低いですが、ロットの問題があるかもしれません。その場合、これまで使ってきた部品はたくさんありますので、使用距離の少ない中古品に戻すこともできます」
幸いにも、1週間後にはオートポリスでスーパーGTのテストが行われる。そこでも信頼性の確認はできるため、次の富士戦には問題ない見通しだが、その一方、この電装部品とエンジンの組み合わせはスーパーフォーミュラでも使用しており、2週間後の開幕戦鈴鹿で使用しなくてはならない。
パーツを交換してレースに復帰したKEIHIN NSXのタイムを見ても、レクサスLC500との差は「まだまだある。セットアップを煮詰めていかないといけない」と、現状のパフォーマンス差を認める佐伯プロジェクトリーダー。
パフォーマンス差に加え、この岡山では信頼性という面でも新たな課題が出てきてしまったホンダNSX-GT。解決の糸口が見えないニッサンGT-Rとともに、重苦しい開幕戦になってしまった。